債務整理 弁護士コラム
『任意整理をしたいけれど、弁護士に依頼するのはハードルが高く感じる』『弁護士費用をかけたくないので、自分で任意整理できないか』………借金問題を抱えた方の中には、このようにお考えの方もいらっしゃることでしょう。
任意整理は、自己破産や個人再生よりも簡易な手続きで借金を減額させることが可能な手続きです。そのため、自分で任意整理することも可能と言えます。しかし、自分で手続きをする場合には、さまざまなデメリットもあることを事前に知っておかなければ、任意整理に失敗してしまうおそれがあります。
そこで今回は、自分で任意整理をしたいとお考えの方に向けて、任意整理の手続きの流れや注意点を詳しく解説します。
任意整理の手続きは、自己破産や個人再生と比べると煩雑ではありません。自分で任意整理するときは、次の手順に沿って手続きを進めていくことになります。
任意整理をするには、最初に債権者から取引履歴を入手する必要があります。
取引履歴とは、
など、債権者との取引内容がすべて記録された書面のことです。
取引履歴を入手するには、借入先の貸金業者に電話をかけて申し出るか、「取引履歴開示請求書」という書面を作成して送付します。
貸金業者は、取引履歴の開示請求に応じなければならないと法律で定められているので、快く応じてもらえることがほとんどでしょう。
開示請求をすると取引履歴が自宅に送られてきますが、届くまでの期間は貸金業者によって異なります。1~2週間で送付してくる業者もありますが、1~2か月ほどかかる業者も少なくありません。
取引履歴が届いたら、すべての取引について利息引き直し計算を行います。
利息引き直し計算とは、貸金業者との取引について、約定金利ではなく法定金利(最大20%)を適用して計算し直すことを言います。
この計算によって利息を支払い過ぎていることが判明した場合は、超過した利息を元金に充当することができます。平成19年(2007年)以前から借金をしている場合は、超過利息や過払い金が発生している可能性が高いので、必ず利息引き直し計算をしましょう。
平成20年(2008年)以降は、ほとんどの貸金業者が法定金利内での取引を行うようになりましたが、貸金業法と出資法が改正された平成22年(2010年)6月までは超過利息や過払い金が発生している可能性があること、業者が開示した取引履歴に誤りがないとも限らないので、念のため利息引き直し計算をおすすめします。
利息引き直し計算の結果、過払い金が発生している場合には、その貸金業者に対して返還請求を行います。
請求方法は、「過払い金返還請求書」を作成して送付するのが一般的ですが、電話連絡でも構いません。どちらの場合も、利息引き直し計算書を貸金業者へ送付する必要があります。
返還請求をした後は、発生している過払い金のうち何割を返してもらうかを貸金業者と交渉します。交渉で取り戻せる過払い金の割合は、高い業者でも7~8割で、低い業者では2~3割、ほとんど返還しないという業者も存在します。
交渉の上、納得できる返還額で合意できれば、和解が成立します。和解書を取り交わした上で、過払い金の振り込みを待ちます。
貸金業者の提示額に納得できない場合や、満額の返還を求める場合は、裁判(過払い金返還請求訴訟)を提起する必要があります。
利息引き直し計算の結果、元金が残っている場合は、今後の返済について債権者と交渉します。
返済額は交渉次第となりますが、将来の利息については利率を減らしてもらえることが多いでしょう。ただし、自分で交渉した場合、利率をゼロにしてもらえないことが多く、元金をカットしてもらえることほぼありません。
また、経過利息と遅延損害金を付加されることがほとんどです。
経過利息とは、直近の返済から次のいずれか早い方までに発生する利息のことです。
遅延損害金とは、延滞が発生してから和解が成立するまでにかかる違約金のようなものと考えれば良いでしょう。
最終的な和解条件は、元金に経過利息と遅延損害金を加えた金額および、元金に対する数パーセントの将来利息を3年~5年かけて返済する内容となるのが一般的です。
債権者と今後の返済条件について合意できた場合は和解が成立し、和解書を取り交わすことになります。債権者が和解書を作成し、その書面に署名・押印を求められることが通常です。
署名・押印すれば、和解書に記載されたとおりの条件で金銭の支払い義務が生じるので、内容に間違いがないかどうかを慎重に確認することが大切です。
懈怠約款とは、返済が滞った場合に債務者に課せられる条項のことです。
具体的には、『返済を2回分以上怠った場合は、期限の利益を喪失し、直ちに残額を一括して支払う』といった内容が記載されます。
なお、「期限の利益」とは、約束した支払期限までは債務を返済しなくてよいという、債務者にとっての利益のことです。上記の例では、返済2回分以上の金額を滞納すると分割払いの取り決めの効力が消滅し、残債務を一括で支払わなければならないという意味になります。
債権者によっては、返済を1回でも怠った場合には一括払いを請求するという懈怠約款を求められるケースもあるので、十分に注意が必要です。
和解書を取り交わした後は、合意した内容に従って返済を開始します。
返済の開始時期は交渉次第ですが、自分で任意整理をした場合には和解が成立した当月からの返済を求められるケースが多いでしょう。翌月から、あるいは2~3か月先から返済を開始したい場合は、和解前にしっかりと交渉して合意する必要があります。
合意後は、取り決められた支払期日に遅れないように返済していきましょう。
任意整理を自分でする場合には、デメリットもあることを知っておかなければなりません。
借金の返済を延滞していると、基本的に取り立てが止まることはありません。債権者と和解交渉をしている最中にまで、すぐの支払いを求められるわけではありませんが、いつから返済開始できるのかは追及されるでしょう。
複数の債権者に対して延滞している場合には、他社からの取り立てに耐えながら、それぞれの債権者と和解交渉をしていかなければなりません。この状態では、精神的な負担も大きくなります。
任意整理の手続きは、自己破産や個人再生の手続きほど煩雑ではないものの、債権者1社ごとに前述した工程をすべて行わなければなりません。任意整理の対象とする債権者の数が多ければ多いほど、負担は重くなります。
また、債権者のほとんどは平日の日中に交渉の連絡をしてきます。仕事などから手を離せない場合は、なかなか手続きが進まないということにもなりかねません。
貸金業者の担当者は、金銭の債権・債務に関する専門的な知識を豊富に持ち、任意整理の交渉にも慣れています。そのため、一般的には債務者が対等に交渉するのは難しいと言えます。
仮に、債務者がある程度の専門知識を持っているとしても、借りたお金を返せていないという立場上、対等に交渉するのは心理的に難しいという問題もあります。
過払い金が発生しているケースでも、債権者がそのことを教えてくれることはありません。債務者自身が、過払い金の存在と金額を明らかにして請求する必要があります。
債務者に専門的な知識がなければ、過払い金返還請求が可能であることに気づかないまま、本来は返済する必要のない債務を返済する和解に応じてしまう可能性が高くなります。
貸金業者は、自分で任意整理をする債務者に対しては、不利な和解案を提示してくることが多い傾向にあります。たとえば、実際には将来利息の全面的カットが可能なのに「5%の将来利息を付けないと決裁が出ない」と言われたり、60回払いまで返済期間の延長が可能なのに「36回払いまで出ないと稟議(りんぎ)を上げられない」などと言われたりするおそれがあるのです。
専門的な知識がなければ、不利な条件であることに気が付かないまま、和解に応じてしまう場合があります。
『自分で任意整理をやってみたけれど、納得できる条件で和解が進まない』
『債権者が任意整理の交渉に協力的ではないように感じる』
このように、自分で任意整理をするのが難しいと思ったときは、次にあげるような対処方法を検討してみましょう。
まずは、特定調停という制度を利用することが考えられます。
特定調停とは、簡易裁判所の民事調停の手続きを利用して、任意整理と同じような話し合いをする手続きです。調停委員という中立公平な立場の人を間に入れて、債権者と債務者が返済について話し合います。
特定調停では、債権者は取引履歴を裁判所へ提出し、調停委員が利息引き直し計算を行います。その上で、債務者にとって返済可能な条件で調停(合意)が成立するように、調停委員が話し合いの仲裁を試みます。場合によっては、調停委員が債権者に対して説得を試みてくれるので、債務者が一人で交渉するよりも合意に至る可能性が高まります。
ただし、調停委員は必ずしも債務整理に関する専門的な知識を持っているわけではないので、適切な条件で和解できるとは限りません。また、特定調停はあくまでも話し合いの手続きなので、債権者が調停に応じる義務はありません。さらに、過払い金が発生していても調停委員が取り戻してくれることはなく、自分で過払い金返還請求を別途行う必要があることにも注意が必要です。
2つめの対処法は、任意整理を諦めて、自己破産または個人再生の申し立てを検討することです。
任意整理は裁判所を利用しない手続きなので、交渉にどこまで応じてもらえるかは債権者の意向次第となります。それに対して、自己破産と個人再生は、どちらも法律に基づき裁判所の決定を得て進める手続きなので、一定の要件を満たす場合には強制的に手続きが進められるというメリットがあります。
そのため、『債権者が任意整理に応じてくれない』、『不利な和解条件を提示され、交渉しても限界がある』といった場合でも、自己破産または個人再生なら解決できる可能性があります。
ただし、自己破産も個人再生も手続きが複雑なので、自分でするには難易度が高いという問題があります。
自分で任意整理の手続きを進めるのが難しい場合には、弁護士に相談するのがもっとも現実的な対処法と言えます。
債務整理案件の経験が豊富な弁護士に相談すれば、まず、任意整理で解決可能かどうかについてアドバイスが受けられます。
任意整理による解決が見込める事案の場合は、次のような点について具体的なアドバイスを得られるでしょう。
では、任意整理を弁護士に依頼することで、アドバイスを受けられる以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。
借金の返済を延滞して取り立てを受けていても、弁護士に任意整理を依頼すれば最短でその翌日に、遅くとも数日以内には取り立てが一時的にストップします。その後、和解が成立するまでのおおむね3か月~6か月程度の間は借金を返済する必要がないので、その間に落ち着いて返済の再開に備えることができます。
取り立てが一時的にストップする理由は、依頼を受けた弁護士が債権者宛てに受任通知書を送付するからです。貸金業者は、弁護士からの受任通知書を受け取った後は債務者へ直接返済を要求することが法律で禁止されているため、直接取り立てをすることができなくなります。
弁護士は依頼者の代理人として、手続きの代行も可能です。受任通知書の送付等と同時に取引履歴の開示請求を行うほか、利息引き直し計算も任せることができます。
債権者との交渉や和解の手続きも弁護士に依頼できるので、依頼者は債権者と直接やりとりする必要がなくなります。
弁護士の力を借りることで、任意整理の手続きにかかる時間や労力を削減できるとともに、精神的な負担を大幅に軽減することができるでしょう。
多くの債権者は、債務者が自分で任意整理をするケースよりも、弁護士に依頼したケースの方が和解条件で大きく譲歩する傾向にあります。
債権者としては、弁護士と交渉して和解するか、または裁判をしなければ債権を回収することができません。多くの債権者は、時間・労力・費用をかけて裁判をするよりも、弁護士と交渉して和解する方を選択します。
その結果、自分で任意整理をする場合よりも有利な条件での和解が期待できるのです。
任意整理を自分で行うことは、可能です。しかし、事実上、債権者よりも弱い立場にあることなどから、十分な交渉ができず任意整理に失敗するケースも少なくないのが実情です。
ただ、いったん失敗した場合でも、弁護士に依頼して再度交渉してもらい、和解を目指すことは可能です。任意整理を検討している方も、自分で任意整理をしたものの失敗してしまった方も、まずは無料相談などを利用して、弁護士のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理案件の経験が豊富な弁護士が借金問題のお悩みを伺っています。債務整理に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけるので、お悩みを抱えている方はお気軽にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
任意整理は、債権者と将来利息の免除や返済期間の延長などについて交渉することにより、毎月の返済額を減らすことが可能な手続きです。
しかし、任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されるため、ETCカードも使えなくなるのではないかと心配する方もいらっしゃることでしょう。特に、仕事や生活などでETCの利用が必要な方にとっては、切実な問題です。
この記事では、任意整理をするとETCカードが使えなくなるのか、一般的なETCカードが使えなくなるとしても、他にETCカードを利用する方法はないのかについて解説していきます。
借金の返済が厳しくなってきたら「任意整理」という方法で、返済の負担を軽減できる可能性があります。
しかし、任意整理を検討している方の中には、弁護士に依頼した際の費用がどのくらいかかるかわからずに、依頼を躊躇しているという方もいるかもしれません。そのような方は、任意整理の費用相場をしっかりと理解しておくことで、安心して弁護士への依頼に踏み切ることができるでしょう。
今回は、任意整理の費用相場と費用の支払いが不安な場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
任意整理は、借金などの債務の負担を軽減できる手続きです。借金返済が困難になってしまった方は、任意整理を検討するとよいでしょう。
なんとなくの印象で「任意整理はやばい」と言われることもあるようですが、決してそんなことはありません。正しい知識と情報をもとに、任意整理を行うべきかどうかを判断しましょう。
本記事では、任意整理のメリットとデメリットを踏まえて、任意整理は本当に「やばい」のかどうか、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。