債務整理 弁護士コラム

任意整理と個人再生はどう違う? どちらを選ぶかの判断基準とは

2021年10月25日
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任意整理と個人再生はどう違う? どちらを選ぶかの判断基準とは

任意整理と個人再生はどちらも債務整理の一種で、借金を減額したうえで返済を継続するという点において共通しています。そのため、両者の違いがよく分からずに、どちらを選べばよいのか迷っている人もいるのではないでしょうか。

この点、借金総額がさほど多額ではなく、ある程度の安定収入がある場合には、任意整理と個人再生のどちらを選んでも借金問題の解決が可能なこともあります。しかし、両者には借金を減額できる割合や手続きの方法などにおいて重要な違いがあります。したがって、債務整理に失敗しないためには、両者の違いを理解したうえで、状況に応じて適切な方を選択することが大切です。

そこで今回は、任意整理と個人再生の違いを具体的に解説し、どちらを選べばよいかの判断基準について、弁護士が説明します。

1、任意整理と個人再生の違い

任意整理と個人再生において、最大の違いは、手続きの方法にあります。

任意整理は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉を行い、今後の返済額や返済方法を新たに取り決め、返済していく債務整理の方法です。

裁判所が介入しないため、債権者と合意ができれば柔軟に返済条件を変更することができます。その一方で、あくまでも「任意」の手続きであって強制力がないため、合意に至らなければ借金を減額できないというデメリットもあります。

個人再生は、裁判所での手続きをすることによって借金を大幅に減額し、減額後の借金を3年~5年で分割返済していく債務整理の方法です。

裁判所の決定によって手続きが進められるため、債権者の意向にかかわらず強制的に借金を減額することができます。その一方で、借金の減額割合も手続きの内容も「民事再生法」に基づいて行わなければならないため、柔軟な取り扱いはできないというデメリットもあります。

結局、任意整理は債権者と債務者との間で任意に行う手続きであるのに対して、個人再生は法律に基づいて裁判所で行う強制的な手続きであり、両者は法的性質が異なっています。

2、任意整理と個人再生の具体的な比較

任意整理と個人再生は法的性質が異なるものとなるため、さまざまな点に違いがあります。そこで、両者の違いをより具体的にみていきましょう。主な違いは、以下の6つです。

  1. (1)条件

    まず、手続きの条件については、任意整理よりも個人再生の方が細かく定められています

    任意整理の条件は、次の2点です。

    • 安定した収入があること
    • 返済を継続する意思があること


    個人再生の場合は、上記の2点に加えて、次の2つの条件も満たす必要があります。

    • 破産の原因となる事実の生ずるおそれがあること
    • 借金総額が5000万円以下であること(住宅ローンを除く)


    「破産の原因となる事実の生ずるおそれがあること」とは、返済不能に近い状態にあることをいいます。簡単にいえば、「このままでは到底返済できないほど多額の借金を抱えた状態」ということです。

  2. (2)借金の減額割合

    2つめの違いは、借金の減額割合です。一般的に、任意整理よりも個人再生の方が大幅に借金を減額することが可能となります。

    任意整理の場合は、将来利息(今後発生する利息)がカットされるのみです。元金については交渉次第ですが、基本的にはカットに応じてもらえず、全額返済しなければなりません。

    それに対して、個人再生の場合は利息だけでなく元金もカットされます。元金の減額割合は借金総額に応じて定められており、多くの場合は1/5に減額されます。最大で1/10にまで減額されることがあります。

    たとえば、総額500万円の借金がある場合、任意整理では今後の利息はかからなくなるものの、あくまでも500万円を返済しなければなりません。しかし、個人再生の場合は1/5の100万円の返済で済む可能性があるのです。

  3. (3)ブラックリストに登録される期間

    任意整理も個人再生も債務整理の一種なので、手続きを行うといわゆる「ブラックリスト」に登録されます

    ブラックリストとは個人信用情報機関に事故情報が登録された状態のことで、登録されると一定の期間は新たな借入れやローン、クレジットカードの利用が難しくなります。その期間について、任意整理と個人再生とで差があります。

    任意整理の場合は、債権者との和解が成立したときまたはその後に完済してから5年です。いつから5年かは債権者次第ですが、これから手続きを行う場合は遅い方の「完済してから5年」を目安に考えておいた方が無難です。

    個人再生の場合は、再生計画案の認可決定が確定したとき、つまり裁判所での手続きが終了してから10年はブラックリストに登録された状態が続きます。

    このように、任意整理と個人再生ではブラックリストに登録される期間に5年の差がありますが、任意整理の返済期間(通常は3年~5年)を考慮すると、両者であまり差がないケースもあります。

  4. (4)官報に掲載されるかどうか

    任意整理は裁判所が介入しないため、手続きを行っても官報に掲載されることはありません

    しかし、個人再生の場合は裁判所による決定が行われるため、官報に氏名や住所が掲載されます


    官報とは、政府が発行する日刊紙のことです。一般の人が官報を見る機会はほとんどないので、個人再生の場合も周囲の人に借金のことを知られる心配はほとんどありません。

    ただし、金融機関や不動産業者など一部の職種の人は日常的に官報を閲覧するため、そのような職種に就いている人が個人再生を行うと仕事に支障をきたすおそれはあり得ます。

  5. (5)保証人への影響

    任意整理では基本的に保証人への影響なく手続きを進めることができますが、個人再生では保証人がいる場合は保証人が債権者から返済の請求を受けることになります。

    任意整理は裁判所を介さない手続きのため、どの債権者を手続きの対象とするかは債務者が自由に選ぶことができます。保証人が付いている借金の債権者を除外して手続きを行えば、保証人が返済の請求を受けることはありません。

    しかし、個人再生は裁判所の決定によって強制的に借金を減額する手続きであることから、すべての債権者を平等に扱わなければならないという決まりがあります(債権者平等の原則)。そのため、保証人付きの借金のみを手続きから除外することはできず、保証人が請求を受けることになるのです。

  6. (6)必要となる費用

    手続きを行うためにかかる費用は、一般的に任意整理よりも個人再生の方が高額となります

    任意整理の場合は、手続きそのものにはほとんど費用がかかりません。弁護士に手続きを依頼した場合、着手金として債権者1社あたり3~5万円程度かかるのが一般的です。

    もっとも、任意整理の弁護士費用は債権者数に応じて計算されますし、弁護士によってはさらに解決報酬や減額報酬がかかる場合もあります。そのため、債権者数が多い場合には個人再生よりも費用がかかるケースもあることに注意が必要です。

    個人再生の場合は、まず申し立ての際に裁判所に納める費用や必要書類を取得する費用として合計で数万円がかかります。

    申し立て後も、裁判所によっては分割予納金として15万円~25万円ほどかかります。分割予納金とは、裁判所が選任する「個人再生委員」の報酬となる費用のことです。今後の返済の履行テストも兼ねて分割で納めることになります。金額は、裁判所によって異なります。

    個人再生を弁護士に依頼する場合の費用としては、30万円~50万円程度かかるのが一般的です。住宅ローン特則付の個人再生の場合には、5~10万円程度加算されることが多くなっています。

3、任意整理か個人再生かを選ぶポイント

任意整理と個人再生の違いを踏まえて、次にどちらを選べばよいかのポイントをみていきましょう。ここでは、任意整理が向いているケースと個人再生が向いているケースについてそれぞれ解説します。

  1. (1)任意整理が向いているケース

    個人再生よりも任意整理が向いているのは、以下のようなケースです。

    ① 借金総額が比較的少ない場合
    任意整理では基本的に将来利息しかカットできませんので、借金総額が比較的少ないケースに向いています。収入にもよりますが、借金総額が200万円~300万円程度を越えると、任意整理で解決するのは難しい場合が多くなります。

    ② 手続きに手間や時間をかけたくない場合
    任意整理は債務整理の中でも手続きが簡易的なので、必要書類も少なく、裁判所などに出向く必要もありません。したがって、忙しくて手続きに手間や時間をかけたくない場合には任意整理が向いています。

    ③ 家族や職場に知られずに手続きをしたい場合
    任意整理は、個人再生よりも家族や職場に知られるリスクが低くなっています。

    個人再生の場合は、裁判所に申し立てるために配偶者の給与明細や、現時点での退職金見込額証明書などを提出する必要があります。これらの書類を取得する際に、家族や職場に借金のことを知られてしまうおそれがあります。

    それに対して、任意整理の場合は特に資料は必要ない場合がほとんどですので、家族や職場に知られることなく手続きを進めやすいといえます。

    ④ 保証人に迷惑をかけたくない場合
    保証人が付いている借金がある場合は、先ほどもご説明した通り、その債権を除外して任意整理を行うことで、保証人に迷惑をかけずに借金を解決することが可能です。

    ⑤ ローンで購入した商品を失いたくない場合
    ローンで商品を購入した場合は、完済するまでは所有権がローン会社にありますので、個人再生を申し立てるとその商品を債権者に引き揚げられる可能性があります。しかし、任意整理であれば、ローン会社を除外して手続きを行うことによって商品を手元に残すことができます。

  2. (2)個人再生が向いているケース

    一方で、任意整理よりも個人再生が向いているのは以下のようなケースです。

    ① 借金総額が多い場合
    借金総額が多額に膨らんでしまい、利息をカットしても返済が難しい場合は、個人再生の方が向いています。

    ② 住宅ローンの返済が難しい場合
    住宅ローンを組んでいる場合、通常はマイホームに抵当権が設定されているため、債権者は任意整理の交渉には応じません。しかし、個人再生では住宅ローン特則(正式名称は「住宅資金特別条項」)を用いることによって、住宅ローンもリスケジュールすることが可能になります。

    他の一般的な借金を整理することで住宅ローンの返済が可能になる場合であれば、任意整理でも解決できます。しかし、一般的な借金の利息をカットしてもなお住宅ローンの返済が難しい場合には、個人再生が向いています。

    ③ 給料などの差押えを受けている場合
    すでに給料などの差押えを受けている場合は、個人再生によって差押えを止めることが可能です。個人再生を裁判所に申し立てて「再生手続開始決定」が出ると、差押え手続きは中止されるからです。その後は、給料を全額受け取れるようになります。

    任意整理の場合は、差押えを止める手段がないため、差押えを行った債権者に対する借金を完済するまで差押えが続いてしまうのです。

4、任意整理や個人再生ができないケース

ケースによっては、任意整理や個人再生では借金を解決できないこともあります。以下のケースでは、自己破産を検討すべきといえます。

  1. (1)借金総額が5000万円を超えている

    5000万円を超える借金を抱えている場合、一般の会社員や公務員では任意整理で完済することはまず不可能です。

    個人再生でも、借金総額が5000万円を超える場合は申立て条件を満たさないため、申し立てできません。この場合、個人再生ではなく通常の「民事再生」をすることも理論上は可能です。しかし、通常の民事再生は手続きが極めて複雑で費用も数百万円が必要となることが多いので、個人が行うのは現実的ではないでしょう。

  2. (2)継続的な安定収入が見込めない

    任意整理も個人再生も、継続的に返済していくことが必要です。そのため、生活費の他に返済金を継続的に確保できるだけの安定収入が見込めない場合は、どちらも手続きすることはできません。

5、借金問題の解決は弁護士への早めの相談がポイント

今回は任意整理と個人再生の違いやどちらを選ぶかのポイントを解説しましたが、それでも個別のケースでどちらを選べばよいのか迷うケースもあるでしょう。

そのようなときは、弁護士に相談するのが得策です。債務整理の経験が豊富な弁護士に相談すれば、状況に応じてどちらが適しているのかを判断してもらえます

また、弁護士に相談するのは早めの方が借金問題の解決がより容易になります。借金総額が膨らむ前に弁護士に相談すれば、任意整理によって手間をかけず、かつ低コストで解決できる可能性が高いからです。個人再生の場合も、借金総額が多ければ多いほど、返済額も大きくなってしまいます。

借金問題の解決は、早めに弁護士に相談することがポイントといえます。

6、まとめ

任意整理と個人再生は似ている点もありますが、本質的に異なる手続きです。そのため、状況に応じて適切な方を選択することが大切です。

選択を誤ると、「任意整理で解決できたのに、個人再生を申し立てたために保証人に迷惑がかかってしまった」、「任意整理をしたものの返済が続かず、改めて個人再生しなければならなくなった」などと後悔してしまうおそれがあります。

借金の返済が難しくなったら、早めに弁護士の力を借りて解決を図ることをおすすめします。ベリーベスト法律事務所では借金問題のご相談は何度でも無料でご利用いただけます。債務整理の経験が豊富な弁護士が詳しい事情を伺い、最適な解決方法を提案いたします。おひとりで悩まず、まずは当事務所までご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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