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任意整理後の一括返済は可能? メリット・デメリットと注意点

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更新日:2021年10月21日 公開日:2021年10月21日

任意整理後の一括返済は可能? メリット・デメリットと注意点

任意整理をした後は、3年~5年の期間で分割返済していくのが一般的です。しかし、返済期間中に臨時ボーナスや遺産相続などでまとまったお金が手に入ることや、何らかの事情で支出が減って経済的に余裕ができることもあります。そのような場合、任意整理した借金を一括返済したいと考える人もいることでしょう。

任意整理をした後に残りの借金を一括返済することは可能であり、いくつかのメリットもあります。しかし、一方ではデメリットもあるので、実際に一括返済するかどうかは慎重に判断する必要があります。

そこで今回は、任意整理後に一括返済をするメリット・デメリットと、一括返済をするときの注意点などについて詳しく解説します。

1、任意整理後の一括返済は可能か?

任意整理をしたときに債権者との間で交わした「和解書」には、返済総額の他に、返済期間や支払金額が細かく記載されているはずです。その内容で債権者と和解した以上は、残った借金を一括返済することはできないと考えている人もいるようです。

しかし、任意整理後の一括返済は可能です。まずは、法律上の理由について解説します。

  1. (1)債務者が望めば一括返済は可能

    和解書に記載されている毎月の返済期限は、「そのときまでに支払わなければならない」という意味があると同時に、「そのときまでは支払わなくてよい」という意味でもあります。このような取り決めのことを、期限の利益といいます。

    法律上、期限は債務者(お金を借りた人)の利益のために定めたものと推定され、債務者は期限の利益を放棄することができます((民法第136条1項・2項)。期限の利益を放棄するというのは、債務者が返済期限よりも前に返済することを意味します。

    つまり、債務者が望めば、一括返済することも認められるのです。

  2. (2)交渉など特段の手続きは不要

    前述した通り、任意整理後に一括返済をすることは債務者に認められた権利ですので、事前に債権者と交渉するなどの手続きは不要です。お金が準備できた時点で、残った借金を一括で債権者の口座へ振り込んでも、法律上は何の支障もありません。

    ただし、突然一括返済を行うと、債権者からさまざまなことを尋ねられる可能性が高くなります。債権者の事務処理も混乱するおそれがあるため、事前に債権者に連絡して一括返済したいことを伝え、了解を得ておくようにしましょう。

    また、毎月の返済手続きの代行を弁護士などに依頼している場合は、弁護士事務所が債権者との連絡窓口となっています。そのため、債務者本人が無断で一括返済を行うと債権者も弁護士も混乱してしまうので、一括返済したい旨を事前に申し出て、代行してもらうべきといえます。

2、任意整理後の借金を一括返済するメリット

任意整理後に、借金を一括返済するメリットとしては、次の3つが挙げられます。

  1. (1)精神的に楽になる

    任意整理によって返済の負担を軽くしても、完済するまでは、借金を返済しなければならないというプレッシャーがかかり続けます。一括返済をすることで、一気に借金がなくなりますので、精神的に大きな解放感が得られます。

    また、一括返済をした後は、今まで返済に充てていたお金を生活費やレジャー、貯蓄などに回すことができるので、日々の生活にも余裕がうまれるでしょう。

  2. (2)返済額を減らせる可能性がある

    一括返済をする際に、債権者との交渉次第では返済額を減らせる可能性もあります。

    なぜなら一括返済をすることで、債権者は確実に貸付金を回収できるというメリットがあるからです。
    ただし、通常は任意整理においてすでに利息をカットして元金のみの返済で和解しているので、一括払いをしても元金の一部カットに応じてもらえる可能性は高くありません。

  3. (3)ブラックリストから早く解放される可能性がある

    任意整理をすると、いわゆるブラックリストに登録されるため、新たな借り入れやクレジットカードの利用が難しくなります。

    「ブラックリストに登録」とは、信用情報機関に事故情報が登録された状態のことをいいます。事故情報が登録されている人は、返済能力がないと判断されるため、貸金業者やクレジットカード会社が信用取引に応じなくなります。

    任意整理をした場合、信用情報機関に事故情報が5年間保有され、その後に削除されます。削除された後は、再び借り入れやクレジットカードを利用できるようになります。

    いつを起算日として事故情報が保有されるかは、債権者によって異なります。
    任意整理の和解が成立した後は新たな事故情報を登録しない債権者もいますが、任意整理後の返済期間も金融事故として取り扱い、毎月、事故情報を登録し続ける債権者もあります。後者の場合は、完済してから5年が経過するまで事故情報が削除されないことになります。

    一括返済をすると、その時点で完済となるので、分割返済を続ける場合よりもブラックリストから解放される時期を早められる可能性があります。

3、任意整理後の借金を一括返済するデメリット

一方で、任意整理後の一括返済にはデメリットもあります。高額の返済金を一括で支払ってから後悔するケースもありますので、実際に一括返済をする前にデメリットを十分に確認しておきましょう。

  1. (1)基本的に返済総額は変わらない

    繰り返しになりますが、任意整理をした場合はすでに利息がカットされているのが一般的です。利息がかかっている状態であれば、一括返済をすることによって利息の分だけ返済総額を減らせます。しかし、任意整理後の場合は一括返済をしても、分割返済をしても、トータルで返済する総額は同じです。

    交渉によって元金の一部カットに応じてもらえない限り、金銭的には一括返済をするメリットはないということになります。

  2. (2)一時的にやりくりが苦しくなる可能性がある

    まとまった金額を一括返済に充てると、手元のお金が一気に減少してしまいます。そのため、一時的にやりくりが苦しくなる可能性があります。一括返済をするとしても、急な出費や病気、リストラなどによって収入が減少した場合でも当面は困らない程度のお金は残しておいた方がよいでしょう。

  3. (3)一括返済後に巻き戻しはできない

    いったん一括返済をしてしまうと、何らかの事情で後悔しても債権者から返済金を返してもらうことはできません。期限前に返済するかどうかは債務者が自由に決められますが、一括返済をすると「弁済」という法的な効果が発生するため、債務者の一存で弁済を取り消すことはできないのです

    一括返済後の生活費などに不安がある場合は、一括返済ではなく一部の繰り上げ返済を検討してみるのもよいでしょう。たとえば、任意整理後の借金が100万円残っていて、余裕資金が100万円ある場合は、50万円だけを繰り上げ返済することも検討できます。
    無理のない範囲で繰り上げ返済を行い、さらに余裕ができたときに、残額を一括返済するのが得策といえます。

4、一部の債権者分だけを一括返済するときの注意点

複数の債権者に対して返済している場合、一部の債権者だけに一括返済をしても基本的には差し支えありません。どの債権者に一括返済をするかは、債務者が自由に決めることができます。

一社に対してだけでも一括返済をすれば、その分だけ毎月の返済額が減ります。したがって、債権者数が多い場合には一社ずつ一括返済をしていくのも有効な返済方法といえます。

しかし、返済が途中で難しくなり、他の債務整理に切り替える場合には、一部の債権者だけに一括返済したことが問題となることがあります。

自己破産に切り替えた場合、一部の債権者だけに優先的に返済する「偏頗(へんぱ)弁済」は破産法に定められている免責不許可事由に該当します(同法第252条1項3号)。そのため、借金の免除を受けられない可能性があります。

個人再生に切り替える場合も、偏頗弁済をした金額は保有資産に持ち戻して評価する必要があるので、返済額が増えてしまいます。まとまった金額を一括返済していた場合は、個人再生をしても毎月の返済額があまり減らないという可能性もあります。

したがって、一部の債権者分だけ一括返済することを検討する場合は、任意整理の返済がほぼ確実にできるという見通しができてからにするべきといえます。

5、任意整理後に一括返済するときは弁護士へ相談を

任意整理後の一括返済には、デメリットやリスクがあるので、一括返済を検討している場合は弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、現在の借金の残高や生活状況などさまざまな事情を考慮したうえで、本当に一括返済をしても問題ないかどうかについてアドバイスをもらえるでしょう。また、一括返済をすることを決めた場合、弁護士に債権者との交渉を依頼すれば、スムーズに処理がすすむことが期待できます。

6、まとめ

任意整理後の一括返済では、ほとんどの場合は返済総額が減りません。また、メリットがある一方でデメリットもあるため、後悔しないよう慎重に判断する必要があります。

自分で判断することが難しい場合は、弁護士の無料相談を利用してみるとよいでしょう。ベリーベスト法律事務所では、債務整理に関するご相談は何度でも無料です。債務整理の経験豊富な弁護士が詳しい事情を伺い、的確にアドバイスいたします。ぜひ一度、当事務所までご連絡ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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