債務整理 弁護士コラム
いわゆるフリーターやアルバイトは、正規労働と比べて収入や待遇も不安定といえます。そのため、生活費や臨時出費などを借金で工面しなければならなくなってしまうことも多いだけでなく、借金返済に行き詰まってしまうこともあるでしょう。
借金の返済が困難になった場合には、債務整理で解決することが有効な選択肢といえますが、「フリーターやアルバイトでは債務整理することも難しい」と思っている方も多いかもしれません。
そこで今回は、フリーターの方が債務整理する場合の手続きの流れや注意点などについて解説していきます。
フリーターやアルバイト、さらには契約社員・派遣社員といった非正規雇用で働いている人の場合には、「正規雇用ではない」ということを理由に、「債務整理をできない」と思い込んでいる人もいるかもしれません。
しかし、結論から先にいえば、フリーターやアルバイトといった雇用形態が理由で債務整理ができないということはありません。債務整理の手続きは、それぞれの収入状況などにあわせて手続きを選択することができるからです。
以下では、フリーターやアルバイトなどの方が、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理をする場合の注意点などについて解説していきます。
任意整理は、債権者と直接話し合いをすることで、今後の借金返済の負担を軽くしてもらう最も簡易な債務整理の方法です。裁判所を介さずに手続きが行われることから、費用も比較的安く、対象にする借金も選択でき、さらには他人に知られるリスクがほとんどない点で大きなメリットがある手続きといえます。
一般的な任意整理は以下のような流れで行われます。
① 弁護士への相談
② 弁護士に任意整理を依頼
③ 弁護士が債権者に任意整理を受任したことを通知(受任通知の送付)
④ 債権者から送られてきた資料などを基に残額を計算
⑤ 債権者と今後の返済条件について交渉
⑥ 債権者と合意(和解)の成立(任意整理成功)
⑦ 和解内容にしたがって分割返済を実施
任意整理では、債権者との間で、次のような内容の和解をするのが一般的です。
したがって、いわゆるカードローンやクレジットカードのキャッシング・リボ払いといった高利の借金などを抱えている場合には、任意整理による解決が有効なケースが多いといえます。
また、任意整理は他の債務整理と比べて費用も安いため、小口の借金返済が行き詰まったケースでも依頼しやすい手続きといえます。
フリーターやアルバイトの方は、正規雇用に比べて収入・雇用などはどうしても不安定になってしまいます。しかし、フリーターやアルバイトであることだけを理由に、任意整理を断られるということはありません。任意整理は、債権者と債務者との自由な話し合いで行われるので、特に利用条件などが定められているわけではないからです。
しかし、任意整理で借金を解決するためには、「元金の残額」については分割で完済しなければならないことから、次の場合には、借金を任意整理で解決することは難しいといえます。
したがって、アルバイト・フリーターの方が任意整理で借金を解決したいという場合には、できるだけ早い時期(借金が膨らみすぎないうち)に弁護士に相談・依頼することが大切といえます。
なお、何かしらの事情で現在無職の状態にある人であっても、アルバイト・フリーターとして働くことで収入を得られる見込みがあるという場合には、借金を任意整理で解決できる可能性は残されています。
個人再生手続きは、裁判所の決定によって借金元金の一部免除を受けられる手続きです。元金の免除を受けられることから、任意整理では解決できないような多額の借金を抱えてしまった場合でも対応することができます。また、自己破産とは異なり財産の処分が不要であることも大きな特徴です。
個人再生の流れは以下のように行われます。
① 弁護士への相談
② 弁護士に個人再生を依頼
③ 弁護士が債権者に個人再生を受任したことを通知(受任通知の送付)
④ 債権者から送られてきた資料などを基に残額を計算し、債務者保有の財産を調査する
⑤ 申し立てなどに必要な書類の作成
⑥ 裁判所への申し立て
⑦ 再生計画案(残元金の分割返済計画)を裁判所に提出
⑧ 債権者による決議
⑨ 裁判所による再生計画認可決定(不認可決定)
⑩ 再生計画の遂行(分割返済)の開始
⑪ 再生計画の完遂(残額の返済免除)
個人再生では、裁判所の認可を受けた再生計画にしたがって、所定額を債権者に返済することで残額の返済を免除してもらえます。再生計画によって返済しなければならない金額は、負債総額と債務者保有財産との関係で決められることになります。また、借金は5分の1から最大10分の1まで減額される可能性があります。
したがって、アルバイトやフリーターの方が任意整理では解決できないほどの多額の借金を抱えてしまった場合でも、元金が免除される金額によっては、個人再生で解決できる可能性があります。
しかし、フリーターやアルバイトの方が個人再生を利用する場合には、特に次の点に注意する必要があります。
繰り返しになりますが、個人再生では借金の一部を毎月の収入から分割で返済することが借金免除の大前提となります。そのため、裁判所が再生計画を認可する段階で、「再生計画をきちんと完遂できる」と判断できるだけの継続的な収入を得られる見込みがなければなりません。
フリーターやアルバイトであることが個人再生できない理由になるというわけではありませんが、現在のアルバイトが有期の契約でその後に収入を得る見込みが立っていないという場合や、毎月の収入額が少なすぎて再生計画に定められた返済額を3年(~5年)で完済できない事情がある場合には、再生計画を認可してもらえない可能性があります。さらに、フリーターやアルバイトは正規雇用に比べて雇用も不安定なので、分割返済期間の途中に職を失ったことが原因で個人再生に失敗するリスクも抱えています。
また、100万円以下の借金については再生計画による借金減額がなく、手続き費用も他の債務整理よりも高額となる場合が多いため個人再生をする実益がない場合も多いことに注意する必要があるでしょう。
自己破産は最終的な債務整理の方法ともいえる手続きです。自己破産した場合には、債務者が保有する財産を売却処分し債権者への配当にあてることになります。また、破産手続き後に残った借金については、裁判所に免責を認めてもらうことで返済が完全に免除されます。
自己破産は、大きく分けて、管財事件(財産処分を伴う原則的な進め方)と同時廃止事件(財産処分を行わない例外的な進め方)の二通りがあり、それぞれの場合の原則的な進め方は下記のとおりになります。
管財事件の場合 | 同時廃止事件の場合 |
---|---|
①弁護士への相談 ②弁護士に自己破産を依頼 ③弁護士が債権者に自己破産を受任したことを通知(受任通知の送付) ④負債と財産の調査 ⑤申し立てなどに必要な書類の作成 ⑥裁判所への申し立て ⑦破産手続きの開始 ⑧破産管財人による財産処分 ⑨債権者への配当 ⑩破産手続きの終了 ⑪免責審尋 ⑫免責許可決定(不許可決定) |
①弁護士への相談 ②弁護士に自己破産を依頼 ③弁護士が債権者に自己破産を受任したことを通知(受任通知の送付) ④負債と財産の調査 ⑤申し立てなどに必要な書類の作成 ⑥裁判所への申し立て ⑦破産手続きの開始 ⑧同時廃止決定 ⑨免責審尋 ⑩免責許可決定(不許可決定) |
ここまで解説してきた3つの債務整理の方法のうち、自己破産はフリーターやアルバイトの方に最も適した手続きである場合が多いといえます。その理由は下記のとおりです。
① 免責を受ければ借金が完全に免除される
自己破産で借金を解決する最大のメリットは、任意整理や個人再生とは異なり、手続きが終わった後の返済が一切不要であるということです。裁判所から免責を認められれば、自己破産後に(配当できずに)残ってしまった借金の返済を完全に免除してもらえるからです。また、免責を得られるケースでは、3年程度の分割返済が必要となる任意整理・個人再生よりも早期に借金を解決できるという点も大きなメリットといえます。
② 自己破産では収入額が問題とならない
自己破産は、「手続きが開始された時点」での負債の全てと債務者の財産とを裁判所の下で清算するための手続きです。そのため、手続き開始以後の収入は、破産手続きとは無関係となり、債務者が自由に処分できるため、任意整理や個人再生のように「収入が少ない」という理由で手続きできないということはありません。実際、無収入となった人の借金を解決する場合には自己破産が選択されるのが一般的です。
③ 財産を一切処分せずに借金を免除してもらえる可能性がある
自己破産手続きでは、債務者の財産を売却処分し債権者への返済(配当)にあてるのが原則です。しかし、自己破産をした債務者の今後の生活も保障しなければならないことから、あらゆる財産が処分の対象となるわけではなく、生活に必要な家具・家電や、99万円までの現金などは自己破産をしても手元に残すことが認められています。
特にフリーターやアルバイトの方の場合には、持ち家などの高額な資産が全くないというケースも多いため、その場合には同時廃止事件として、財産処分が一切行われないまま簡易迅速に自己破産手続きを終えられる可能性もあります。
④ 警備員のアルバイトをしている人の自己破産
自己破産をした場合には、一定の職業に悪影響が生じる場合があります。自己破産をした場合には、一部の国家資格などが免責確定(復権する)までの間は登録停止(剥奪・喪失ではありません)となったり、就業が禁止される仕事があったりするからです。特に、警備員のアルバイトで生計を立てている人の場合には、自己破産することによって警備業務に就くことができなくなる(デスクワークなどは可能)ことに注意する必要があります。
フリーターやアルバイトの人の場合には、「自分が正規雇用ではない」、「毎月の収入が少ない」ということを理由に、「債務整理もできない」と諦めてしまっている人も珍しくありません。そのため、借金返済に行き詰まってしまっても対応が遅くなってしまい、状況をさらに悪化させてしまったというケースもしばしば見受けられます。
借金問題は早期に対応することで、解決のためのコストや債務整理によるデメリットを軽減できる場合が少なくありません。弁護士に債務整理を依頼すれば、債権者からの取立ても完全にストップできるので、借金に不安を感じることのない静かな生活をいち早く取り戻せる可能性があります。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
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これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。