債務整理 弁護士コラム
経済不況に見舞われている日本では、若年層から中高年まで、幅広い方々が借金問題を抱える事例が増えています。
自己破産を検討するような状況は、借金の額もかなりの金額になっていることが多く、心身ともに疲れ切っている場合も少なくないでしょう。
そのため、弁護士に自己破産の依頼をしようとしても「わたしのケースでは自己破産できない」のではないか、「自己破産しても失敗するのではないか」という不安を感じてしまうこともあるかもしれません。
たしかに、一定の場合には、
●自己破産ができない場合や
●自己破産を申し立てても失敗してしまうようなケース
などがないわけではありません。
一方、実は自己破産に影響しなかったというケースも少なくありません。
本コラムでは、
●自己破産ができない具体的な4つのケース
●それぞれの場合の解決・対処方法
などについて、借金の問題に詳しいベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まずは、自己破産できない具体的なケースをみていきましょう。
以下では、
について解説します。
自己破産で借金を解決するためには、一定の費用を負担しなければなりません。
まず、裁判所に納める費用としては、次のようなものがあります(金額や項目は、裁判所によって異なる場合があります)。
自己破産の費用のなかでも最も負担の重い項目である「予納金」について、詳しく解説いたします。
①予納金とは
自己破産を申し立てる際には、破産手続の開始に先立って、必要な費用を予納することが原則となります。
そもそも、予納金という言葉は、「あらかじめ納める費用」ということを意味していますので、上述した「郵便切手代」や「官報掲載費用」も、予納金の一種であるとはいえます。
しかし、自己破産手続における「予納金」とは、一般的に、「破産手続ごとに選任される破産管財人の報酬として引き当てられる費用」のことを指すのです。
②予納金の金額と、予納金を工面できない場合の処置
予納金の金額は、裁判所ごとそれぞれの地域の事情などをふまえて決定することになっています。したがって、申立手数料のように全国一律というわけではありませんが、一般的には個人(消費者)の自己破産である場合には50万円が目安額とされています。
この予納金は、自己破産の申し立て後に裁判所が指定する期日までに納付しなければならず(一部の裁判所をのぞいては一括払いが基本です)、予納金の納付がないときには、自己破産の申し立ては認められません。
なお、低収入などが原因で自己破産などの債務整理の費用が支払えないときには、法テラス(民事法律扶助)の立て替え払いを利用できる場合があります。しかし、予納金については生活保護受給者以外の場合には立て替え払いの対象となっていないことに注意する必要があるのです。
したがって、予納金が工面できないというときには、毎月の収入から積み立てをしてからでなければ、自己破産をすることができないのです。
③予納金を減額する2つの方法
上述したように、予納金(破産管財人報酬)の負担は、自己破産をしようとする当事者にとっては大きな足かせになってしまうことも珍しくありません。
しかし、次の場合には、自己破産手続における予納金の負担が減免されるのです。
自己破産の手続においては、次の2つの条件を満たす場合には、破産手続が開始されても破産管財人が選任されずに、開始と同時に手続を終了する措置がとられます。この措置を、「同時廃止」と呼びます。
したがって、自己破産を同時廃止として処理してもらえる場合であれば、破産管財人費用の負担も発生しないのです。
また、破産管財人の選任が避けられない(同時廃止にできない)場合であっても、弁護士に手続を依頼した場合には、予納金が減額される可能性があります。弁護士が代理人として就いているケースであれば、破産管財人の業務が軽減されるため、その報酬分の費用を減額することができるのです。
「自己破産の時点で抱えている借金が少なすぎる」という場合にも、自己破産の申し立ては認められません。
後ほどにも解説いたしますが、自己破産は、「借金をどうしても返すことができない」という状況でのみ利用することができる手続であるためです。
ただし、借金が少ないという状況は、そもそも望ましいことであるといえます。
借金が少額(自己破産が認められない程度)にとどまっているのであれば、自己破産以外の方法によって、デメリットを小さくしながら解決できる可能性が高くなるためです。
具体的には、以下のような方法があります。
自己破産できない具体例の3つめは、「1円も返済していない借金がある」場合です。事情によっては、債権者からお金を借りたまま全く返済していない状態で自己破産をすることは、破産手続の不当利用にあたると判断される可能性があります。
また、「お金を返すつもりもないのに借金をした」ということで、詐欺罪に問われる可能性もあるのです。
自己破産は、借金の返済を免除してもらうために申し立てるものです。
しかし、実は自己破産しただけでは、当然に借金の返済が免除されるというわけではありません。すべての自己破産で無条件に借金の免除を認めてしまえば、債権者との関係で明らかに不公平な結果になってしまう場合もあるからです。
そのため、借金返済について免除を受ける場合には、自己破産の手続が終了した後に、それとは別に裁判所から免責の許可を得る必要があります。
しかし、借金の免責は、債権者の権利を失わせる決定でもありますので、次のような事情がある場合には、裁判所が免責を認めてくれない可能性があります(これらの事情のことを免責不許可事由と呼んでいます)。
免責不許可事由については、破産法252条1項で具体的に規定されています。
そのうちの主な例は、以下のとおりです。
次に、上の場合とは逆に「自己破産できる条件」について確認しておきましょう。
裁判所に自己破産(および借金の免除)を認めてもらうためには、次の2つの条件を満たしている必要があります。
破産法は、破産が認められるための条件として、「債務者が支払不能にあること」を要求しています(破産法15条1項)。
①支払不能とはどのような状態か
「支払不能」とは、わかりやすくいえば、「一般的な常識に照らして、借金完済がもはや不可能といえる客観的な状態」のことを意味します。
しかし、たとえば「収入が完全に絶たれてしまった人」と「年収1000万円の人」とでは、支払不能といえる状況にも大きな違いがあるでしょう。そのため、具体的にいくらくらい借金があれば自己破産が認められるかということは、それぞれのケースで当然異なってくるのです。
②支払停止による推定
「支払不能」は抽象的な要件です。そのため、債務者本人だけでなく債権者などの利害関係者にとっても、わかりづらい要件となってしまいます。
そのため、破産法では、「支払停止」と呼ばれる行為に該当する具体的な事情がある場合には、債務者が支払不能の状態にあると評価する、ということにされています(破産法15条2項)。
実務上、支払停止に該当するとされている具体的な行為の例としては、次のようなものが挙げられます。
上で解説した支払不能の状態にあることは「自己破産を始めるための条件」といえますが、自己破産手続は開始されたというだけでは、その目的を達成することができません。自己破産は、借金返済を免除してもらうところまでいかないと、申し立てる意味がないからです。
そのためには上で紹介した免責不許可事由に該当しないことが必要となります。これらを一言でまとめれば、「自己破産手続(裁判所や破産管財の業務)や債権者に対して誠実な対応する」ということも、自己破産するための条件のひとつとなるのです。
特に、最近では、「免責審尋(債権者集会)への出席状況」など、債務者の態度・対応を重視する裁判官が増えています。
弁護士であれば、裁判官に「誠実な対応」とみられる対応を把握して、具体的な指示を出すことができます。
自己破産を検討している人が「自己破産できない」と不安に感じるケースの大半は、自分のケースが免責不許可事由に該当するかどうか、ということだと思われます。
自己破産に至るケースでは、多かれ少なかれ道義的に問題のある借金(浪費や返すあてのない借し入れ)が含まれている場合が少なくありません。
しかし、ギャンブルで多額の借金を作ってしまった場合のように、免責不許可事由に該当する可能性がある場合でも「自己破産できない」とあきらめてしまう必要はないのです。
破産法では、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量判断によって免責を認めることを認められています。これを裁量免責と呼んでいます(破産法252条2項)。
したがって、浪費による借金などがあり、免責不許可事由に該当する可能性があるケースであっても、裁量免責を得られれば、借金の返済を完全に免除してもらうことができるというわけです。
実際にも、免責不許可に該当するおそれのあるケースであっても、破産手続において誠実にきちんと対応をすれば、裁量免責を受けられる可能性はかなり高いといえます。
ただし、免責不許可事由に該当するおそれがある場合には、多くの裁判所では債務者にめぼしい財産がない場合であっても破産管財人を選任して、裁量免責を与えるために必要な調査を行うことになります。したがって、同時廃止として処理することはできません。予納金(破産管財人報酬)を用意することが必要となる点に、注意してください。
万が一、裁量免責を得られる可能性が低い場合であっても、「借金を解決することができない…」とあきらめてしまう必要はありません。
自己破産で借金が解決できない場合であっても、免責不許可事由を考慮する必要のない他の債務整理の手続で借金を解決できる可能性があるためです。
自己破産が難しいというケースでは、個人再生手続での解決を図る場合が多いでしょう。個人再生が認められれば、今後の利息だけでなく、借金の元金についても大幅な免除を受けられる可能性があるためです。
たとえば、500万円の借金を個人再生する場合であれば、最大で400万円の免除を受けられる可能性があります。
そのため、「自己破産するしかない」と思い込んでしまうような借金であっても、十分解決可能であることが少なくないのです。
冒頭でも述べたように、多額の借金を抱えて返済に追われる生活が続くと、さまざまなことに不安を感じやすくなってしまうといえます。特に、自己破産については、初めての経験という人が大半であるだけでなく、よいイメージをもっていない人も多いことから、悪い方に考えてしまいがちなものでしょう。
その意味では、「わたしは自己破産できないかもしれない」と考えてしまうことは、ごく当たり前の不安であるといえます。
しかし、実際に「自己破産ができない」というケースは、そうそうありません。大半の場合には、なんらかの方法で、自己破産をすることは可能なのです。
また、同じように「自己破産でしか解決できない」と考えているような借金であっても、よりデメリットの小さい債務整理の手続で解決できる可能性があるのです。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理の経験豊富な弁護士が、それぞれの依頼人さまが抱える不安のひとつひとつについて丁寧に対応いたします。
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借金問題は、誰にでも降りかかる可能性のあるトラブルのひとつです。夫婦が同時に多額の借金を抱えてしまうことも、珍しくありません。
夫婦とはいえ、金銭的な話をしていなかったことで、配偶者の借金に全く気付いていなかったというケースもしばしば見受けられます。
夫婦で多額の借金があると発覚してから、自己破産などの債務整理を検討している方もいるでしょう。借金は生活に関わってくる問題であるため、早期に正しく対応することが特に重要です。
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最近では、共働き夫婦の増加により、お互いの財布事情に関知しない夫婦も珍しくありません。
そのため、妻に借金があることに気づいたときには、借金の額が手に負えないくらい膨らんでいて「自己破産以外に解決方法がない」と追い詰められてしまうケースもあります。
しかし同時に、自己破産をすると配偶者である自分や子どもに何かしらの悪影響が出るのではないか、と不安に感じる方もいるでしょう。
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借金返済に完全に行き詰まったときであっても、「どうしても自己破産したくない」と考える方は実は少なくありません。一般の人にとっては、それだけ自己破産に悪いイメージがあるのだと考えられます。
また債務整理というと、自己破産を思い浮かべる人も多いため、債務整理それ自体に抵抗感を覚える人も珍しくありません。
しかし、債務整理の方法は自己破産だけではなく、財産を処分せずに今後の分割払いの負担を軽くしてもらうことで借金を解決するものもあります。
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