債務整理 弁護士コラム
民事裁判などの法的な手続きは、借金が滞納された場合の最終的な回収手段です。この民事裁判で債権者が勝訴した場合には、さらに「給料などの差し押さえ」といった強制執行が行われる可能性が生じます。
しかし、実際に債権者から借金滞納による裁判がなされたケースでは、債務者側が裁判所からの呼び出し(訴状)を無視してしまうケースも多いようです。このような対応は、早期に強制執行されてしまうことにつながるだけでなく、債権者との和解のチャンスを失うなどのデメリットも生じさせてしまいます。
そこで今回は、借金滞納で裁判されてしまった場合の流れや、裁判を無視するデメリット、裁判された場合の対処方法などについてまとめてみました。
借金の返済が苦しくなり、債権者から裁判を起こるかもしれないと不安に感じている人や、すでに訴状が手元に届いて「どうしてよいかわからない」という状況になっている人はぜひ参考にしてください。
借金滞納を原因に債権者から裁判を起こされるということは、滞納がかなりの長期間になっていることが一般的です。以下で解説するように、金融機関による取立てには手順があり、数ヶ月程度の滞納で「いきなり裁判してくる」ということはほとんどないといえるからです。
何かしらの事情で支払期日に返済ができなかったときには、債権者から「返済の督促」、「返済のないことの確認」のために、電話・メール・郵便(督促ハガキなど)によって連絡がきます。
この段階で滞納・返済遅れを解消することができれば、取引の上で大きな不利益を受けることもありませんし、信用情報への登録も最低限度で済ますことができます。
また、事前に債権者に「返済が遅れるが○月×日までには確実に返済できる」といった趣旨の連絡を行えば、督促ハガキが送られてくることを回避できる場合もあります。
借金返済の滞納が1か月を超えてしまった場合には、電話などの初期の取立てが厳しくなり、2か月の滞納になると債権者から「期限の利益喪失予告通知」といったタイトルの郵便物が送付される場合があります。さらに滞納が続いた場合には、ローンやカードの契約条項に基づいて債務者は期限の利益を失うことになり、次のようなデメリットが生じます。
債権者から借金残額の一括返済を求められても、ほとんどのケースでは返済に応じることは難しいといえるでしょう。1か月分の返済すら滞納してしまっている人が、残っている借金全額をまとめて返済することは、さらに難しいことであるからです。
一括請求後もさらに滞納が続いてしまった場合には、取立ての最終手段として民事裁判や督促手続(支払督促)といった法的手続きがとられることになります。
借金の滞納が原因で、銀行や消費者金融・クレジットカード会社といった金融機関から裁判を起こされた場合には、基本的には債務者が勝訴できる可能性は低いといえます。
次のような事情が認められる場合には、債権者が借金滞納を理由に裁判してきた場合であっても、勝訴できる(相手方の請求を棄却してもらえる)余地が残されています。
①借金に消滅時効が完成している場合
実際に借りたことは間違いのない借金を返してない場合でも、消滅時効が完成している場合には、裁判において「消滅時効が完成しているから返済しない」と主張すれば、裁判に勝訴することができます。
特に、サービサー(債権回収会社)から裁判された場合などには、すでに消滅時効が完成しているケースも珍しくありません。
②期限の利益を失っていない場合
実際に返済を滞納している借金であっても、「期限の利益を失ったとはいえない場合」には、債権者から裁判された場合でも勝訴できる可能性が残されています。「支払期限が到来していない借金」は、裁判で支払いを求めることができないからです。
とはいえ、金融機関からの借金を長期間滞納してしまったという場合には、契約条項に基づいて期限の利益を喪失している場合がほとんどなので、それを裁判で争うことは難しい場合が多いといえます。
しかしながら、個人間の借金をめぐるトラブルの場合には、期限の利益を喪失しているかどうかが争点になる可能性もないとはいえません。
③債権者がヤミ金業者である可能性がある場合
債権者がヤミ金業者である場合のように、金銭の貸し付けが違法行為に該当する場合には、債務者には一切の返済義務が生じない可能性があります。
とはいえ、ヤミ金業者であることを明らかにしている業者が積極的に裁判をしてくることはないでしょう。訴訟をすれば、ヤミ金業者の摘発リスクが高くなるといえるからです。
しかし、最近は、個人間融資を装ったヤミ金行為も増えています。ネット掲示板などを介して知り合った(それまで面識のなかった)個人から、法外な金利の借金をしてしまった場合には、ヤミ金行為として認定される余地も残されていることから、勝訴できる余地は残されているといえます。
借金滞納の裁判は、判決まで至った場合には、通常は原告勝訴で終わります。実際に借りているお金を期限までに返済できていないことが明らかであれば、上のような事情がある場合を除いては、債務者が勝訴する可能性はゼロといえるからです。
たとえば、「手元にお金がないので返済したくてもできない」といった事情(実務では「手元不如意(てもとふにょい)の抗弁」とよんでいます)は、裁判においては一切考慮されないからです。
「原告勝訴(請求認容)」の判決が確定した場合には、債務者(被告)には、判決で認められた金額について「すぐに返済する法律上の義務」が確定することになります。
さらに、被告が認容額の支払いを行わない場合には、債権者は「強制執行」を申し立てることができるようになります。そもそも、債権者は強制執行申立てに必要となる債務名義を取得する目的で裁判を行っているわけですから、この段階で債権者が給料の差し押さえなどの強制執行をためらう理由はほとんどないといえます。
借金滞納が原因で債権者から裁判を起こされてしまった人には、裁判を無視してしまう人が少なくありません。たしかに、「手元にお金がない」という言い訳以外に主張することがない場合が多いので、裁判に応じても勝ち目がない場合が多いのですが、「裁判を無視してしまう」ことは、次の理由からおすすめできません。
裁判を無視してしまうべきではない一番の理由は、裁判を無視すると「債権者から強制執行される時期が早くなる」ということにあります。
訴えられた債務者(被告)が、裁判を完全に無視した(裁判所に答弁書も出さずに第1回目の口頭弁論期日に欠席した)場合には、裁判所は、証拠調べなどを行わずに原告の言い分通りに判決を言い渡すことになるからです(民事訴訟法159条3項)。
証拠調べなども要せずに判決を言い渡すことになれば、その分だけ債権者から早期に強制執行されるリスクも高くなるというわけです。
なお、債権者が督促手続(支払督促)を利用してきた場合には、さらに慎重に対応する必要があります。債務者に支払督促が送達されてから2週間以内に異議を述べないときには、債権者の申立て内容通りに強制執行することが可能となってしまうからです。支払督促に異議を述べると、その事件は通常の民事裁判に移行し、即時の強制執行を回避することができます。
裁判に応じれば、一括払いできない場合でも、債権者と「分割払いを内容とする和解」ができる余地が残されています。
借金の支払いを求める裁判のように、金銭の支払いを求める裁判の場合には、債務者側に「分割払いに応じる意思」があれば、ほとんどのケースで裁判所は、債権者にも和解をするようにすすめてくれます。裁判を無視してしまえば、そのチャンスすら完全に失ってしまうことになりますので、債務者にとっては大きな損失といえます。
借金滞納を理由に金融機関などの債権者から裁判されてしまった場合には、無視することなく、正しく対応することが大切です。
債権者が起こした裁判に応じるときには、裁判所に「答弁書」を提出します。特に、1回目の口頭弁論期日は、答弁書さえ出しておけば期日に欠席をしても大きな不利益は生じないことになっています。1回目の口頭弁論期日は、被告(債務者)の全く関与できないところで期日などが決められるため、期日に出席できないこともやむを得ないと考えられているからです。
①答弁書の書き方
答弁書は、原告が裁判所に提出した訴状に対応する形で記載するのが実務上の慣行となっています。最近は、裁判所から訴状が送達される際に、「答弁書のひな形」も同封されることが多いので、その指示にしたがって作成すれば基本的には問題ありません。
答弁書を作成する際に、もっとも注意しなければならないのは、「原告の請求(の趣旨)を認めてはいけない」ということです。被告が請求の趣旨(借金滞納の裁判の場合には、『被告は原告に対して金○○円を支払えとの判決を求める』と書かれているのが一般的です)を争っていない場合には、答弁書を出さすに口頭弁論期日を欠席した場合と同様に、裁判所は証拠調べをすることなく直ちに判決を言い渡すことになってしまうからです。
具体的な、次のように書くのが一般的といえます。
次に、訴状の請求原因についての答弁としては、「認める」、「争う」、「不知」の3つの回答の仕方があります。このうち不知というのは「わからない」ということです。
自分で答弁書を作成する場合には、同封されたひな形の書式にしたがって、結論だけを示しておいて、詳しくは「追って答弁します」と書いておけば、とりあえずは十分でしょう。
なお、債務者側が和解を希望する(分割払いなら応じられる)場合には、答弁書にもその旨を記載しておいた方がよいといえます。
②移送の申立て
債権者から裁判された場合には、裁判に応じたくても「裁判所が遠すぎる」というケースも珍しくありません。金融機関からの借金を滞納したことが原因で裁判される場合には、借金の際の契約条項にしたがって、「債権者にとって都合のよい裁判所」で裁判を起こされる場合が多いものです。たとえば、「岩手県の債務者を相手に東京簡易裁判所で裁判が行われる」ということも珍しくありません。
そのような場合には、裁判所に対し「移送の申立て」をすることで、事件を担当する裁判所を変更してもらえる場合があります。特に、相手方が全国に支店のある金融機関である場合には、公平の見地から移送を認めてもらえるかもしれません。
なお、移送の申立てがあった場合には、口頭弁論期日の実施に先立って、移送の可否を判断することになりますので、この間を分割返済の計画(和解案)の検討や、事件を依頼できる弁護士をみつけるための時間にあてることも可能となります。
債権者から裁判された場合には、分割払いをしたくても請求額が多すぎて支払いきれないということも少なくないでしょう。
このような場合には、弁護士に債務整理(自己破産・個人再生)を依頼して裁判所に自己破産などの申立てをすることで、訴訟の進行を中止させることができます。破産手続・個人再生は、「全ての債権者のため」に手続きが実施される必要があるため、開始されたときには個別の債権者による権利実行(債権の回収)はストップされることになっているからです。
したがって、裁判を訴えられた場合だけでなく、債権者から財産を差し押さえられたという場合であっても、自己破産・個人再生を申し立てることで対応することができます(ただし、住宅ローンの担保に提供したマイホームの差し押さえの場合のような、「担保権実行」は自己破産・個人再生にも優先されます)。
また、自己破産や個人再生をしない場合でも、弁護士に依頼すれば裁判所での分割和解交渉を任せることができ、支払い可能な条件で和解を成立させられることもあります。
借金滞納が原因で債権者から裁判や督促手続(支払督促)をされてしまった場合には、「争っても無駄」と諦めてしまい、訴状などを放置してしまうケースも少なくないようです。
しかし、裁判されてしまった場合でも、きちんと裁判に応じれば、債務者にとって少しでも有利な解決を導くきっかけになる場合があります。
弁護士に相談すれば、それぞれの借金の状況に応じて最適な解決方法をアドバイスしてもらうことができます。最近では、無料での相談や、土日夜間の相談にも対応している事務所が増えていますので、「突然訴状が届いて困った」という場合には、まずは相談してみるとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所では借金に関するご相談は何度でも無料です。また、実際に債務整理を依頼された場合の費用は以下のページよりご覧いただけます。ぜひ一度当事務所へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。