債務整理 弁護士コラム
新型コロナウイルスの影響は、終息する見通しが立っていないように思われます(2020年12月現在)。社会におけるさまざまな経済活動が停滞してしまったことにより、多くの悪影響が出ており、企業の倒産などが今後増えると予測する向きも少なくありません。
これと同様に、個人の借金についても、新型コロナウイルスの影響を原因とした収入減などを理由に、返済が行き詰まってしまう人が増えるのではないかと思われます。
そこで今回は、新型コロナウイルスの影響によって借金の返済が難しくなった場合の対処方法について解説します。
コロナ禍を原因とする減収・失職は、借金の債務者に落ち度のある原因ではなく、どうしようもない事情と考えることができます。したがって、「コロナが原因で借金が返せない」というようなときには、債権者に今後の返済について相談してみるのが最も基本的な対応といえます。
「返済を待ってほしい」とお願いをしても金融機関は相手にしてくれないのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、コロナ禍が原因で返済が難しくなった借金について返済計画を見直すことは、国からの要請事項でもあるので、金融機関としても無視するわけにはいかないのです。
この要請の根拠は、リーマンショック後の不況下に中小企業への貸し渋り・貸し剝がしや住宅ローントラブルを防止する目的で臨時立法された「中小企業金融円滑化法」という法律によるものです。この法律自体は、平成25年3月をもって効力がなくなっていたものですが、新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、金融庁がこの法律による「リスケジュール(=返済計画の見直し)報告のスキーム」を復活させたのです。
したがって、リスケジュールの相談に積極的に応じることは、金融機関の義務ともいえます。
実際に、銀行をはじめとする各金融機関は、コロナ禍を原因とするリスケジュールのための相談窓口を設定しています。
詳細については、それぞれの金融機関のウェブサイトで案内されていますので、「コロナ禍で減収してしまって借金の返済が苦しい」という人は問い合わせしてみるとよいでしょう。
借金返済を見直す方法は、それぞれのケースによってまちまちですが、一般的な方法としては次のような対応が考えられます。
たとえば、元金据え置きが選択されれば、毎月の支払額はかなり減らすことができるので、コロナ禍によって収入が減ったなかでも、何とか毎月の支払いを継続できるようになることもあるでしょう。
生活をする上では、借金返済以外にも多くの支出があります。これら支出を削ることで、借金返済に充てるための資金を工面できる可能性もあります。
税金や年金などの公租公課の支払いは、家計にとって大きな負担となっている場合が少なくありません。そこで、コロナ禍によって一定以上の減収がある場合には、これらの納付の猶予を認めてもらうことができます。
たとえば、国税(所得税・法人税など)は、令和2年2月1日から令和3年2月1日に納期限が到来するものについては、令和2年2月以降の任意の1か月以上の期間において前年同期よりもおおむね20%以上減少している場合に、納税を1年間猶予してもらうことができます。
また、国民年金や国民健康保険についても、令和2年2月以降の所得状況に応じて納付の減免を認めてもらうことができます。これらの手続きは、窓口に出向かなくても郵送・ウェブ上で行えますので、国税庁・日本年金機構・各市区町村のウェブサイトを確認してみてください。
奨学金の貸与を受けていた人であれば、コロナ禍による減収で奨学金の返還が難しくなってしまうこともあると思われます。日本学生支援機構の奨学金の場合であれば、以前からある減額返還、返還期限猶予の仕組みによって、返済猶予などの措置を講じてもらうことができます。
こちらも、スカラネット・パーソナル(日本学生支援機構奨学生向けのポータルサイト)で申請書を作成することができます。
コロナ禍によって資金繰りの苦しくなった人を支援するために、国・地方自治体・官公庁などはさまざまな給付金や貸付制度を用意しています。これらの仕組みを上手に活用することで、借金返済のための資金を工面できる場合もあるでしょう。
①一般消費者向け
一般消費者向けの仕組みとしては、次のようなものがあります。
これらの仕組みは、コロナ禍の前からあるものですが、コロナウイルスの感染拡大によって社会に大きな影響が出ていることを受けて、申請要件の緩和などの措置が講じられています。
たとえば、総合支援資金は、何かしらの事情により失業してしまった人が生活を再建させるまでの生活費や住居費用などを無利子で貸与する仕組みですが、コロナ禍によって減収してしまった場合には、失業状態でなくても利用することができます。申請の窓口は、全国各市区町村の社会福祉協議会です。
②中小企業・個人事業主向け
中小企業や個人事業主向けの支援制度としては、「持続化給付金」がよく知られていますが、それ以外にも多くの仕組みが用意されています。
たとえば、テナント事業者向けの家賃支援給付金が利用できれば、法人は最大600万円、個人事業主は300万円(家賃6か月分の最大額)の給付を受けることができます。家賃の支払い分を給付金で工面できれば、借金の返済に充てる余裕が生まれるという場合は多いでしょう。
さらに、中小企業などのコロナ禍による資金繰り悪化を支援するために、金融機関(政府系金融機関)などでは、実質無利子での貸し付けも行っています。
また、各自治体などによる中小企業向けの給付金制度などもありますので、それぞれの地域の自治体や商工会議所に問い合わせてみるとよいでしょう。
公的支援によっても借金返済が難しいという場合には、弁護士に債務整理を依頼し、借金それ自体について減免を受けることで解決していくことになります。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産の3つの種類があり、それぞれのケースの状況(借金の総額・返済能力・財産の有無)によって最適の方法を選択することになります。
①任意整理
任意整理は、債権者と個別に話し合いをして「将来利息の免除」を中心とした返済条件の見直しをお願いする手続きのことです。
裁判所を介する必要がないため、手続きも簡単で費用も安く済ませることができます(原則として将来利息の免除のみ)。
したがって、コロナ禍によって収入が大幅に減ってしまったという場合には、任意整理によって利息を免除してもらったとしても、「借金が返せない状況は変わらない」ということもあるかもしれませんし、失職中で収入がないという場合には行うことができません。
②個人再生
個人再生は、裁判所の決定によって今後の利息と借金元金の一部を免除してもらった上で、残額を原則3年の分割払いで返済していく手続きです。元金免除の程度は、負債額と所有財産の状況によって異なります。
借金元金の一部免除がある分、任意整理よりも減額効果はかなり大きくなりますが、残額の分割返済が必須となるので、無収入になってしまった(裁判所の認可決定までに分割返済できるだけの収入を得られる見込みがない)場合には手続きをすることができません。
③自己破産
自己破産は、破産手続き開始の時点での借金を裁判所の下で清算する手続きです。清算後に残った借金は、免責を受けることで完全に免除されるので、「無収入の人」であっても借金を解決することのできる唯一の手続きです。
ただし、債務者に法律上処分可能な財産(目安は99万円を超える財産)があるときには、財産を処分した上で債権者に配当を実施する必要があります。
債務整理を成功させるためには弁護士への依頼が必須といえます。しかし、コロナ禍で借金の返済がままならないという場合には、「弁護士に依頼するための費用の工面も難しい」と感じている人も多いかもしれません。
そのような場合には、法テラス(日本司法支援センター)が行っている「民事法律扶助」を利用して弁護士費用を立て替えてもらえる場合があります。
民事法律扶助を利用するためには、収入や保有財産が一定額以下(居住地域ごとの生活保護水準に準ずる程度)である必要がありますが、現在国会で審議中の特別措置法案が可決された場合には、要件が緩和される可能性もあります。
新型コロナウイルスの感染状況の先行きはかなり不透明といえます。したがって、コロナ禍による減収の状況は、今後も長引く可能性の方が高いといえることから、借金返済が苦しくなってしまったという場合には、できるだけ早く弁護士相談することが大切です。早期に対応すれば、解決のための選択肢が多く残されるだけでなく、悪質業者の被害などの不要なトラブルに巻き込まれる可能性も小さくできるからです。
このような状況下では、経済的に困窮している人をターゲットにしたさまざまな詐欺手口が横行する傾向にあります。借金返済のためのお金を工面しようと気持ちが焦ってしまえば、これらの被害に遭い、状況をさらに悪化させてしまう可能性も高くなってしまいます。
借金問題の相談は、無料で受けられる弁護士事務所が増えていますので、少しでも借金返済に不安があるという人は、まず相談の申し込みをしてみるとよいでしょう。
新型コロナウイルスの感染が拡大による影響は、今後も大きくなっていく可能性が高いといえます。借金返済は、多くの人にとって精神的にも大きな負担となりやすく、追い詰められてしまったために誤った対応を取ってしまうケースも少なくありません。
コロナ禍による家計・借金のトラブルは、弁護士はもちろん、金融機関や市区町村などさまざまな窓口で相談に応じてくれます。「新型コロナウイルスの影響で借金が返せなくなった」ということは、誰のせいでもなく、恥ずかしいことではありませんから、安心して相談を申し込んでみてください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。