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給与ファクタリングとは? 仕組みや利用上の注意点を解説

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更新日:2020年11月24日 公開日:2020年11月24日

給与ファクタリングとは? 仕組みや利用上の注意点を解説

簡単な手続きで即日現金が調達できる手段として「給与ファクタリング」に注目が集まっています。しかし、「借金ではないから大丈夫」、「金融ブラックでもOK」などの誘い文句で、法外な手数料を請求する悪徳なファクタリング業者が問題になっているのも事実です。

この記事では、「お金を工面したいけど、給与ファクタリングを利用してトラブルになるのが心配」という方に向けて、給与ファクタリングの仕組みから「実際に利用するとしたら何に注意すればいいのか?」という疑問まで詳しく説明していきます。

給与ファクタリングにより急ぎでお金を工面したいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

1、給与ファクタリングとは?

  1. (1)給与債権を売却し、売却代金を受け取る

    給与ファクタリングとは、「会社から給料を受け取る権利」をファクタリング業者が買い取り、早期現金化する金融サービスです。

    もともとファクタリングは、主に中小企業が入金待ちの商品やサービスの請求書を他企業に買い取ってもらい、資金調達をする手段として広まっていました。
    これを個人向けに当てはめたのが、給与ファクタリングです。

    給与ファクタリングには、

    • 審査が比較的ゆるい
    • 最短即日で現金が得られる
    • 担保や保証人が不要
    • 会社にバレずに利用できる


    といったメリットがある一方で、

    • ファクタリング業者へ払う手数料が高い
    • 違法業者の危険がある


    といったデメリットもあります。

  2. (2)利用者は実質的に給料を前借りできる

    給与ファクタリングは、イメージとしては「給料の前借り」に近いといえます。

    本来給料の前借りは、企業が従業員に対して行うものです。
    しかし、常に企業から給料を前借りできるとは限りませんし、仮にそのような制度があったとしても、前借りを行うには気まずい気持ちが強く働く場合もあります。
    そこで、そのような人は業者を通じて、実質的に給料の前借りをする給与ファクタリングの利用を検討するというわけです。

    しかし、給与ファクタリングの場合、手数料は非常に高くなるという問題があります。
    5%~20%前後の手数料をとる業者が多く見られ、中には45%以上の手数料をとる業者も存在します。

    たとえば、給料20万円分を借りようとするとき

    • 手数料10%→2万円
    • 手数料20%→4万円


    の手数料を取られることになります。

    手数料20%の給与ファクタリングの場合、取引の流れは以下のとおりです。

    1. ①Aさんが来月の給与予定額20万円を受け取る権利(給与債権)をファクタリング業者に売る
    2. ②ファクタリング業者は手数料4万円を差し引いた16万円をAさんに交付する
    3. ③返済日までにAさんはファクタリング業者に対して20万円を返済する


    つまり、利用者は翌月分の給料(20万円)から手数料(4万円)を差し引いた現金(16万円)をファクタリング業者から実質的に前借りすることができます。
    このように給与ファクタリングは給料の前借りと実質的には同じですが、手数料が高額になるため注意が必要です。

  3. (3)業者は売却代金と手数料の差額でもうける

    ファクタリング業者は利用者からの手数料で利益を得ています。
    手数料の金額は業者によってさまざまです。

    手数料の相場は5%〜20%ですが、2020年11月現在、給与ファクタリング業者の提示する手数料が法外であるとして問題になっています。
    2020年3月、金融庁は「金融庁における法的解釈に係る照会」への回答で「給与ファクタリング業者と労働者の資金の返還・回収の流れは貸金業にあたる」と発表しました。

    貸金業にあたる場合、出資法で定められた上限年利は20%です。
    これを超えて貸し付けを行うことは出資法違反となり、刑事罰の対象となります。
    たとえば返済期間が1か月のケースで40%の手数料をとっていた場合、年利に換算すると480%となり、出資法の上限金利を大きく超過します。

    しかし実際には、出資法の上限金利を大きく超過する水準の手数料をとる悪質なファクタリング業者も数多く存在します。
    法外な手数料を要求してくる悪徳業者には十分注意してください。

2、勤務先に給与ファクタリングしたことってバレるの?

結論からいえば、給与ファクタリングを利用したことが勤務先にバレることは基本的にありません。
給与ファクタリングは、業者と利用者の2者間で行われる取引であり、金銭の授受も業者・利用者の間でのみ行われるためです。

なお、個人向け給与ファクタリングの場合、ファクタリング業者が利用者の企業から直接給与を回収することはできません。
これは労働基準法第24条第1項「直接払いの原則」により、労働者の勤め先は労働者本人に直接給料を支払う義務があるからです。

ただし、返済が遅れたり業者からの連絡を無視したりした場合には、業者から勤務先に連絡されることがあるので注意が必要です。

3、給与ファクタリングの問題点とは?

給与ファクタリングについては、特に最近になって貸金業該当性の問題がクローズアップされています。
東京地裁において令和2年3月24日にいい渡された2件の判決では、いずれも給与ファクタリングが貸金業に該当するという判示がなされました。
また、同時期に金融庁からも、給与ファクタリングは貸金業に該当するという見解が表明されています。

給与ファクタリングが貸金業に該当することにより問題となるのは、大きく分けて①貸金業の登録と②出資法の上限金利の2点です。

  1. (1)貸金業者としての登録がない業者

    給与ファクタリングが貸金業に該当することを前提とすると、給与ファクタリングサービス業者は貸金業の登録を受ける必要があります(貸金業法第3条第1項)。
    そのため、貸金業者としての登録がない給与ファクタリング業者は違法な悪徳業者ということになります。

    貸金業登録の有無は、金融庁WEBサイト(登録貸金業者情報検索サービス)から検索することができるので、給与ファクタリングを利用する際には事前に登録の有無を必ず確認しましょう。

    登録貸金業者情報検索入力ページ

  2. (2)違法に高額の手数料をとっている業者

    給与ファクタリングが貸金業に該当するならば、金銭の貸し付けに関する金利などを規制する出資法の規制対象となります。

    出資法では金銭の貸し付けをする際に借り主へ請求する利息について、以下のとおり上限が設けられています。

    • 金融業者は年利20%以内
    • 非金融業者は年利109.5%以内


    東京地判令和2年3月24日の事例では、給与ファクタリング業者が年利1843.5%相当もの違法な手数料を利用者に課していました。
    この場合、給与ファクタリング業者は出資法違反により刑事罰の対象となります。
    このような法外な手数料を課す違法な給与ファクタリング業者に引っかからないよう、契約内容をよく確認して、手数料の年率計算を行うようにしましょう。

4、怪しい給与ファクタリング業者の見分け方

悪徳なファクタリング業者を見分けるためのポイントについて解説します。
以下のチェックポイントにあてはまる給与ファクタリング業者は利用を避けましょう。

  1. (1)手数料の金額が高い

    まずは契約書に記された手数料をよく確認して、手数料の年率計算を行いましょう。
    給与ファクタリング業者は、金銭の貸し付けを業として行う者とみなされるため、適用される出資法の上限金利は年20%です。
    これを1か月あたりに引き直すと、月2%未満となります。
    業界平均は5%~20%程度ですが、これは悪徳なファクタリング業者も含めての相場なので注意が必要です。
    中には「給与ファクタリングの手数料の相場は20~40%です」といって高い手数料が当たり前であるかのように記すサイトもあるので注意してください。
    また、悪徳業者の場合には、口頭で説明された手数料と書面での手数料が異なる可能性もあります。
    そのため、契約書に明記されている条件は隅から隅まで確認してから契約することが重要です。

  2. (2)返済期間が短い

    あまりにも返済期間が短い場合、そもそも給与ファクタリングを利用するメリットがほとんどありませんし、手数料の年率も非常に高くなる可能性が高いといえます。

    目安として、返済期間が1か月以内の場合は契約を見合わせた方が良いでしょう。
    返済期間は契約書に記載されているので、その内容をよく確認してください。

  3. (3)貸金業に関する質問に対して満足な回答をしない

    信頼できるファクタリング業者かどうかを確かめるためには、給与ファクタリング業者にありがちな問題について実際に質問をしてみるとよいでしょう。

    ポイントは、

    1. ①貸金業登録の有無
    2. ②手数料率(年率)


    の2点を確認することです。

    もし、質問の回答をはぐらかされたり話題をそらされたりする場合は、悪徳業者の可能性があります。

5、給与ファクタリングを利用せず公的な支援を検討する

ここまでの内容からわかる通り、給与ファクタリングには違法な業者が多いため、基本的には利用は避けるのが無難です。

とはいえ、
「大手金融機関からは貸し付けを受けられそうにない」
「経済的に追い込まれている」
という方もいると思います。

そんな方には、公的な支援を検討することをおすすめします。

利用可能な制度の具体例は、下記のとおりです。

  • 特別定額給付金(10万円)
  • 持続化給付金(個人事業主の場合上限100万円、法人の場合上限200万円)
  • 日本政策金融公庫や商工中金による特別貸し付け
  • 厚生労働省の生活福祉資金貸付制度
  • 東京都社会福祉協議会の総合支援資金
  • 生活保護


生活保護を申請できるのは無職の人だけだと勘違いしている方もいるかもしれません。
しかし、実際は働いている人であっても、収入と資産が基準を下回れば申請することができます。

上に挙げた以外にも、自治体によって多くの公的支援が存在するので、自分が受け取れる公的支援がないか一度自治体で確認してみてください。

6、借金問題には債務整理が有効

増えてしまった借金を減らしたり、支払いに猶予を持たせたい場合は弁護士に依頼をして債務整理の手続きをしましょう。 

債務整理の手続きは、大きく分けて以下の三つです。

  1. ①任意整理
  2. ②民事再生
  3. ③自己破産


債務整理の手続きを行えば、借金の負担を軽減できる可能性があります。
借金に苦しんでいる方は、まずは一度、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
給与ファクタリング業者には、貸金業法や出資法との関係で問題がある悪徳業者が多いため、基本的に利用はおすすめできません。

給与ファクタリングの他にも、債務整理を含めて、お金の問題を解決するための方法はさまざまに考えられます。
お金のことでお困りでしたらまずはベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国74拠点、約360名の弁護士が在籍
※2024年2月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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