債務整理 弁護士コラム
中小企業の経営にとって資金調達は生命線といえます。業績は順調な中小企業であっても、手元資金の工面に狂いが生じれば、一気に銀行取引停止・倒産という事態になってしまうこともあり得るからです。
しかし、中小企業の資金調達に不安を感じた場合には、言葉巧みに近づいてくる悪質業者に特に注意すべきといえます。
今回は中小企業をターゲットにしたヤミ金手口の典型といえるシステム金融の手口やシステム金融被害に遭った場合の解決方法などについて解説していきます。
システム金融とは、中小・零細企業を主なターゲットにしたヤミ金の手口のひとつです。
「システム金融」という名前は、複数人のグループ(債権者など)で仕掛け(システム)をつくって、顧客である債務者を自転車操業の状態に仕向けていく手口に由来するといわれています。
システム金融の手口の一番の特徴は、被害者の発行した手形や小切手をいわば「人質」にとられてしまう点にあります。振り出した手形や小切手が決済できなければ、「不渡り」となり、2回目の不渡りが起きたときには、銀行との取引が停止され、会社は事実上の倒産に追い込まれてしまいます。その意味では、会社それ自体が人質にとられているともいえ、「会社を守りたい」という気持ちのために、さらに悪質な詐欺被害にひっかかってしまいやすい状況に追い込まれることになるのです。
システム金融の特徴を理解するには、具体例を挙げるのが一番わかりやすいといえます。
中小企業は、手元資金に余裕がないという場合が多く、「資金をまわす」ために、手形や小切手などによって決済を行う場合も少なくありません。上述したように、もっとも古典的なシステム金融の手口は、融資の担保として債務者が振り出した手形・小切手を預かる点にあるのです。
手形・小切手を振り出すことになった債務者(中小企業)は、これをきちんと決済(=返済)できなければ、銀行取引が停止となり事実上の倒産となってしまいます。中小企業がシステム金融に手を出してしまうのは「会社を存続させるため」であるわけですから、債務者としても、この手形を決済しないわけにはいきません。
しかし、システム金融への返済(振り出した手形の決済)は、法外な利息の負担もあるので簡単なことではありません。そこに、別の悪質業者がさらにつけこむ余地が生まれることになります。
そのため、システム金融の被害にあった場合には、何件もの悪質業者・ヤミ金と関わってしまい被害も大きくなってしまう場合が多いといえます。
システム金融は、複数の悪質業者が中小企業をよってたかって食い物にする仕組みといえます。
悪質業者が、2件目、3件目に行う手口は、システム金融と同じ手口(手形・小切手を人質にする融資)であるとは限りません。
中小企業向けの悪質な詐欺としては、システム金融のほかにも、最近では次のような手口が増えているのです。
①悪質ファクタリング業者
ファクタリングとは、企業がもっている売掛債権を、支払日前に売却して現金化する資金調達の方法です。ファクタリングそれ自体は、必ずしも違法というわけではありませんが、システム金融の餌食になってしまった場合には、法外な手数料などを要求する悪質なファクタリング業者(元々はヤミ金だった業者)がさらに勧誘してくるケースも多いと考えられます。
②融資詐欺(保証料詐欺・貸します詐欺)
融資詐欺(保証料詐欺・貸します詐欺)は、いわゆる「振り込め詐欺」の一種です。資金繰りの困った中小企業などに「融資話」を持ちかけた上で、保証金、保険料、紹介料、審査料、手数料、紹介料、申込金などさまざまな名目で支払いを要求する手口が最も古典的なものといえます。
むろん、「お金をだまし取る」ことが目的なのですから、融資が行われることはありません。
システム金融の被害にあった場合には、「すぐにお金を用意しなければならない」という状況があらかじめ作り出されているわけですから、「会社を潰したくない」と、さらにこのような手口の被害に遭ってしまう可能性も高いといえるでしょう。
・貸します詐欺(全銀協作成啓発パンフレット)
システム金融業者のほとんどは、貸金業の許可を得ていない違法業者です。したがって、システム金融による貸し付けは「ヤミ金行為」といえます。
システム金融業者も、一般的なヤミ金と同様に「利息制限法」や「出資法」が定めている法定利率をはるかに超える法外な利息を要求してきます。被害者である中小企業側には、「明日にでも決済しないといけない支払い」があるような場合が多く、足下を見られやすいだけに、トヨン(10日で4割)・トゴ(10日で5割)といった利息を要求されるケースも多いといえます。ちなみに、10日で5割というのは年利になおせば1825%(単利計算)ですから、あり得ないくらいに法外な利率で、法律上の支払い義務も当然ありません。
このような法外な利息を要求する目的でお金を貸し付ける行為は、社会的にも許すことのできない反社会的行為・反倫理的行為と評価することができます。そのような悪質な行為のために行われた貸し付けは、「不法原因給付(民法708条)」に該当すると考えられるので、システム金融からの借金は、利息だけでなく、元本も返済義務がないのです。
最高裁判所も、法外な利息を要求するヤミ金業者からの借入れは、元金の返済も不要であるという趣旨の判決を下しております。
上で説明したように、ヤミ金業者であるシステム金融からの借金は、法律的には、利息も元金も返済する必要がないといえます。しかし、システム金融の被害にあった場合には、手形・小切手の振り出を行っているため、「返済を無視すれば良い」と簡単に考えるわけにもいきません。
システム金融業者が支払いを求めている手形・小切手を決済できなければ、「手形・小切手の不渡り」となってしまうからです。
また、手形や小切手は譲渡可能である点にも注意する必要があります。問題のある手形・小切手であっても、「善意の第三者」に譲渡された場合には対抗する(支払いを拒絶する)ことはできません。
もっとも、システム金融業者に振り出した手形などは、多くの場合事情を知っている「悪意の第三者」に譲渡される可能性が高いといえますが、その者の悪意(事情を知っていること)を明らかにすることは簡単ではありませんし、暴力団組織などに譲渡されてしまえば、それ自体が別のトラブルとなってしまいます。
したがって、システム金融の被害に遭った場合には、振り出した手形・小切手の回収(返還請求)まで行わなければ、問題をきちんと解決したとはいえないのです。
万が一、システム金融業者に手形・小切手を取り立てられた場合には、銀行などから手形交換所に異議申立て(不渡り異議)を申し立てることにより、不渡りによるデメリットを回避することが考えられます。
【参考】電子交換所規則・施行細則
ただし、不渡り異議の申立てをするためには、振り出した手形・小切手の券面額と同額の異議申立提供金を積み立てる必要があります。システム金融の被害は、1件だけで終わるということは珍しいといえますから、何件ものシステム金融業者に手形・小切手を振り出してしまった場合には「手元資金が足りない」ということになる可能性もあるのです。
システム金融と関わってしまった場合には、ヤミ金問題の経験が豊富な弁護士に解決を依頼するのが一番よい方法といえます。専門知識・スキルのない一般の人が、手形・小切手を握られてしまっている海千山千の悪徳業者と自力で戦うことは簡単ではないためです。
実際にも、弁護士が介入すれば、貸金の取り立てを諦めた上で、手形・小切手の返還に応じてもらえる(手形・小切手の取り立てを諦めてもらえる)ケースは多いといえます。ヤミ金業者が弁護士を敵にまわしても得をすることは何もないからです。
システム金融の被害に遭ってしまう中小企業は、会社が大幅な債務超過に陥っているというケースも少なくないといえますので、弁護士に依頼をすれば、会社の負債整理もまとめて対処できるのは大きなメリットといえます。
早期(負債額が膨らみすぎる前)に対応することができれば、会社を自己破産させなくても、私的整理(会社の任意整理)や民事再生といった手続によって負債を圧縮することで、会社を建て直すチャンスをつくる可能性があります。
また、「経営者の個人保証がある」という場合でも、会社の経営基盤や負債の状況によっては、いわゆる「経営者保証ガイドライン」を利用することで、経営者の負担(連帯保証人としての責任)を軽減できる場合があります。
システム金融と関わってしまった状況を放置しておけば、さらに被害は大きくなり、本当に会社を失ってしまうリスクもさらに高くなります。システム金融は、1件の貸し付けだけで終わることはなく、何件もの悪質な詐欺行為・ヤミ金行為がセットとなって仕組まれるケースが多いからです。
会社の資金繰りのために、危険な取引に手を出してしまったという場合には、1日も早く弁護士に相談し、正しく対処しましょう。これらの詐欺被害に遭ってしまう経営者は、「支払いはきちんと行いたい」と誠実な対応を心がけている人が多いといえますので、弁護士の助力を得て、問題を正しく解決できれば、会社の建て直しや再チャレンジの可能性も高くなる場合が多いといえるでしょう。
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これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。