債務整理 弁護士コラム
債務整理には一定の期間が必要です。
弁護士などに債務整理を依頼したとしても、数日で手続きが終わるということはありません。
一般的には、債権者との交渉、裁判所への申し立ての準備だけでも1か月以上かかりますし、債権者との交渉・裁判所の手続きも数日・数週間で終わるというわけではありません。
さらには、任意整理・個人再生では手続き終了後に債権者への分割返済をしなければなりませんから、本当の意味で債務整理が終わるまでには数年単位の期間がかかるといえます。
他方、債務整理を依頼する債務者は、お金のやりくりそれ自体に困っていることも多く、再整理の依頼後であっても、さまざまな場面で「借金が必要」と考えることもあると思われます。
そこで今回は、このような債務整理中・債務整理後にカードローンを利用する(申し込む)場合のリスクなどについて、弁護士が解説します。
まずは、債務整理中(弁護士などへの依頼から手続きが終わるまで)にカードローン(借金)を申し込むことは可能かということについて、解説します。
基本的には、債務整理を依頼した人でも、借金することが直接的に法律で禁止されるわけではありません。その意味では、「債務整理中でも借金することは自由」といえなくはありませんが、実際には、「債務整理中の借金」にはさまざまな問題があるといえます。
任意整理は、債権者と直接の交渉をすることで、今後の返済条件を見直す(負担を軽減させてもらう)ための手続きなので、任意整理は、債権者と債務者との信頼関係(合意)が基本となる手続きといえます。
したがって、任意整理中というケースでは、相手方の信頼を損なわない、同意を得られるのであれば、債務整理中に別の債権者のカードローンを組むことも問題ないといえます。
とはいえ、実際に、「自社の借金を返済できない」と任意整理を申し出てきた債務者が「他社からさらに借金する」ということを快く思う債権者はほとんどいないといえるでしょう。
一般的には、任意整理の交渉中に他社から新規のカードローンを組むことは、任意整理を決裂させる原因になることの方が多いといえます。
なお、金融機関にカードローン(借金)の申し込みをしたことは信用情報に半年間登録されます。金融機関は信用情報を照会することができますので、「バレなければ大丈夫」という安易な考えはとても危険です。
【参考】CICが保有する信用情報(CICウェブサイト)
個人再生は、裁判所で行われる手続きで、手続きを成功させるには債権者の同意(小規模個人再生の場合)と裁判所の認可の両方が必要となります。
したがって、債務整理中(弁護士に依頼後、個人再生開始まで)にカードローンを申し込んだことを既存の債権者が問題視しなかったとしても、裁判所が問題視した場合には、個人再生が失敗する(再生計画が不認可になる)原因になってしまいます。
個人再生では、裁判所に認可された「再生計画」に基づいて定期的・継続的に借金の一部を返済しなければなりません。
この再生計画を「適正に履行できる見込みがない」と裁判所が判断した場合には、再生計画は不認可となるので、「新規に借金をする」ことは、基本的には不利な事情になると考えておくべきでしょう。
なお、実際に借り入れをした場合は、その新たな借金も再生手続きの中で減額されるため、その新たな債権者から不同意意見が出されることや、全額を返済するつもりがなかったことを理由に詐欺行為と主張される可能性が高いと考えられます。
また、個人再生開始後に組んだカードローンは、法律によって、再生計画の履行が終わるまでの返済が禁止されています(民事再生法123条2項)。
したがって、通常であれば、民事再生手続き中にカードローンを組むことは事実上不可能(返済できない顧客に融資してくれる金融機関は存在しない)といえます。
自己破産は、債務者の抱えている負債を(財産処分による配当と引き換えに)免除してもらうための手続きです。
したがって、自己破産手続が開始される直前に新規のカードローンを組むことは、「返すつもりのない借金」として「詐欺」に問われる可能性があります。
実務的に、「借りてから全く返済していない借金」がある場合には、一定の返済を済ませるまで自己破産を申し立てないのが一般的といえます。
そのような場合には自己破産を申し立てても裁判所によって破産申立てが棄却される可能性があるからです。
自己破産の手続きでは、債務者のお金の動きはかなり厳しくチェックされるので「上手く借金すればバレない」ということは絶対に考えない方がよいでしょう。
債務整理を成功させるためには、債権者との信頼関係だけでなく、手続きを依頼する弁護士との信頼関係も非常に重要です。
一般的に考えれば、「負担を減免してもらえなければ借金を返せない」という状況にある人が、さらに借金(カードローン)を申し込むことは、依頼業務の成功を阻害する行為といえます。
したがって、カードローンを申し込まなければならない、やむを得ない事情があるときには、「事前」に弁護士に相談することが必須といえるでしょう。
弁護士に内緒のまま借金を申し込んだことが発覚した場合には、「信頼関係が破壊された」として辞任を申し出られる可能性も高いといえるでしょう。
なお、この場合には、すでに支払った着手金について返金を受けることもできません。
以上のように、債務整理の手続きを実際に進めている間に借金の申し込みをすることは、かなりのリスクを伴いますし、実際に融資に応じてくれる債権者もほとんどいないと思います。
また、弁護士に依頼をしていれば、手続き中の生活費の確保などについてもきちんと目配せしてくれるはずなので、よほどのことがない限りは、借金の必要に迫られることもないと思われます。
実際に、「債務整理中に借金したい」と考えるケースの多くは、「債権者との交渉・裁判所手続が終わった後の分割返済中」のケースではないかと思います。
以下、それぞれの債務整理手続き別の注意点などについて解説していきます。
任意整理は、上でも触れたように当事者間の合意を基礎にする手続きです。
したがって、任意整理がまとまった(和解が成立した)後、その内容にしたがって、「毎回の返済をきちんとできる」のであれば、新たなカードローンを組むことも問題ないといえます(借金を組めるかどうかの問題については3、で別に解説します)。
しかし、任意整理に基づく分割返済が終わるまでは、毎月一定額の返済を抱えていることを考えれば、さらに借金の返済を増やすということは非常に危険です。
再度の借金が原因で、任意整理の相手方への返済も滞ってしまうことになれば、いわゆる再和解(同じ債権者との2度目の任意整理)もかなり難しくなるといえるでしょう。
個人再生手続において再生計画が認可されたときには、その計画内容を厳守して計画の完遂まで返済を続けなければいけません。
万が一、返済が滞ったときには、裁判所によって再生計画が取り消される可能性もあります。
再生計画が取り消されると、再生手続の開始・再生計画の認可によって生じた効果(借金の減免・個別差し押さえの停止など)はすべて消滅し、借金は元通りの状態に戻ってしまいます。
この場合には、債権者から債務残額の一括返済を求められることが一般的ですので、それに応じることができなければ、自己破産を選択せざる得なくなります。
なお、個人再生の手続き後(再生計画の履行中)の借金は、開始後債権となり「再生計画の履行が終わる(弁済期間が終了する)まで返済が禁止される」ことは、すでに1(2)で解説したのと同様です。
自己破産手続きでは、裁判所から「免責を認めてもらう」ことが何よりも大切です。
免責を得ることができなければ、破産をしても返済義務の免除は得られないからです。
その意味では、破産手続き開始決定直後(免責を得る前)に、新たな借金を申し込むことは、その判断において不利な材料になりかねません。
なぜなら、「自己破産によってきちんと更生する意思がない」と判断できる債務者に免責を与えることは債権者との関係で公平とはいえないからです。
最近の裁判所は、免責判断において「破産手続きにおける債務者の誠実さ」を重視する傾向が強いといわれています。
前の借金を免除してもらおうとするときに別の借金を申し込むということは、一般的には「不誠実な対応」と評価される可能性が高いことには注意しておく必要があるでしょう。
なお、破産手続では開始決定の時点での負債と財産のみが手続きの対象となりますので、破産手続開始決定後のカードローン(借金)については、その後に免責決定の効果を受けることはありません。
債務整理を行うと、そのことが信用情報に登録されてしまいます(いわゆるブラックリスト入り)。
債務整理中(債務整理の経験のある人)が「カードローンの申し込みをしても審査に通らない」というのは、信用情報に事故情報(ブラック情報)が登録されていることが原因といえます。
この事故情報は、登録から5年(一部のケースでは10年)保存されることになっているので、その間は、「借金の申し込みをしても審査に落ちる」と考えておくべきといえるでしょう。
上記の原則の例外が、街金融(マチキン)と呼ばれることもある「中小の消費者金融」です。これらの貸金業者は、顧客確保の必要性から、信用情報に事故情報が登録されている人でもカードローンを組める可能性がないわけではありませんが、以下の点に注意する必要があります。
まず、街金融であっても「現在手続き中」の人に融資を行うことはまずありません。
理由はすでに上でも解説したことに加え、一般的にもそのような状況にある人は「返済できない」リスクがかなり高いと考えられるからです。
また、すでに手続きが終わっているという場合でも、過去の債務整理の事実はきちんと申告しておいた方が債権者の心証は逆によいといえます(申告しなくても審査において必ず知られてしまうことです)。
むしろ、ウソの申告は、審査に通らない理由になるだけでなく、後のトラブルになる可能性も高いので絶対にすべきではありません。
申込額についても、必要最低限度にとどめるべきです。
身の丈に合わない金額の申し込みは審査で不利になる可能性が高くなるので、「満額は認められないから多めに申告しておこう」という考えはむしろ逆効果といえます。
最後に、これらの街金融では、10万円未満の融資から契約がはじまることが多く、そのため適用される金利も、大手金融機関のカードローン(15~18%)よりも高い20%(利息制限法の上限利率)となる場合が多いです。
ネットなどを検索してみると「ブラックでも融資可能」といった貸金業者などの広告コピーを目にすることがあります。
しかし、これらの業者には、「悪質業者」、「違法業者」が少なくないことに注意する必要があります。
特に近年は、ヤミ金手口の多様化により被害に遭う人も増えています。
正規の貸金業者には、広告やウェブサイトなどに登録番号を明示することが義務づけられています。
貸金業の営業許可は、営業所が単一の場合には都道府県、営業所が複数の場合には本店を管轄する財務局となっていて、その横の( )の数字は、営業免許の更新回数(3年に1回の更新が必要です)となっているので、数字が大きいほど「きちんと営業している期間が長い貸金業者」であるということも可能です(この制度ができたのが1983年なので、記事作成の時点では(13)が最大の数字になります)。
名前の知らない業者から借金をしなければならないというときには、この登録番号を確認し、実際の登録情報と照合するだけでも違法業者・ヤミ金被害に遭う確率は減るといえるでしょう。
【参考】貸金業者検索(金融庁ウェブサイト)
債務整理は「借金問題を解決する」ために行うものです。
その手続き中に借金をさらに重ねることは、債務整理それ自体を台無しにしてしまう可能性が高いといえます。
「どうしても欲しいものがある」ということもあるかもしれませんが、将来の生活のことを考えれば、債務整理中の借金は慎むべきであるといえます。
どうしても借金しなければならないやむを得ない事情があるときには、債務整理を依頼している弁護士に必ず相談すべきです。
また、債権者への返済中の借金も非常に危険です。
手続き終わったとしても返済が終わらなければ、債務整理が成功したとはいえません。
普段の生活の中から少しずつでも蓄えをしていくなど、「何かがあっても借金しなくて済むような対策」をしっかり講じておくべきといえます。
この場合にも、やむを得ない場合には債務整理を依頼した弁護士に相談した上でその指示にしたがって対応すべきでしょう。
弁済も完了した場合には、基本的には自己責任となりますが、同じ失敗を繰り返さないためには「ひとりで悩まない」、「ひとりで結論を出さない」ことが重要といえますので、弁護士・家族などに適宜相談することが大切といえます。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。