債務整理 弁護士コラム
過払い金を回収する方法には、裁判による方法と裁判はせずに金融機関と直接交渉する方法があります。
実際に過払い金の回収を考えている方にとっては、どちらがよいのか気になると思います。
しかし、裁判と任意交渉には一長一短があるので、すべてのケースでどちらかが有利といえるものではありません。それぞれの方法の特徴を正しく知らないまま手続きを行ってしまえば「こんなはずではなかった」と後悔する原因にもなりかねません。
そこで、今回は、過払い金を裁判と任意交渉のそれぞれの方法で回収する場合のメリット・デメリットについて解説します。
まずは、過払い金を「任意交渉(債権者との任意の話し合い)」で回収する方法のメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
任意交渉で過払い金を回収するメリットとしては、次の点を挙げることができます。
以下、それぞれについてみていきましょう。
①費用を安く抑えられる
過払い金を任意交渉で回収する最大のメリットは、回収のためのさまざまなコストをおさえられる点にあるといえます。
たとえば、債権者との和解交渉を自分で行えるのであれば費用はほとんどかかりませんし、弁護士に依頼した場合でも裁判よりも費用は安くなります。
また、交渉は電話などで行うことができますから、裁判所(や債権者の事務所など)に出向く必要もありませんし、書類などの作成も最低限度で済ますことができます。
②厳格な証拠が不要
裁判で過払い金を回収するときには、過払い金があることだけでなくその具体的な金額についても原告である債務者自身が、具体的な証拠を提示して主張する必要があります。
消費者対企業の裁判では、相手方である企業側に必要な資料が集中していることが多く、過払い金のケースに限らず、主張・立証の負担は小さくないといえます。
他方で、過払い金を任意交渉で回収する際には、争点があってもその争点に関する厳格な証拠は、必ずしも必要ではありません。
特に、何十年も前の取引部分については、十分な資料を収集できない場合も多く、「厳格な証拠がいらない」という点のメリットは小さくないといえます。
③過払い金を早期に回収できる
任意交渉による過払い金の回収は、裁判で行った場合に比べて早期に決着する場合が多いといえます。
以前に比べれば、日本の民事裁判は早く終わるようになってはいますが、それでも裁判となれば、訴えの提起から半年から1年くらいの期間がかかると考えておいた方がよいでしょう。相手方が控訴をすれば、さらに半年くらいの期間がかかってしまいます。
任意交渉であれば、相手方との交渉次第では、数か月以内に過払い金の支払いを受けられる場合もありますので、「すぐに過払い金を受け取りたい」という事情があるときには、任意交渉という方法のメリットは大きいといえます。
任意交渉で過払い金を回収するデメリットとしては、次のものを挙げることができます。
任意交渉を選択した場合には、相手方との話し合いが決裂してしまえば、その後に裁判をしないと1円の過払い金も回収できません。
特に、消滅時効の完成などが争点になるようなケースでは、相手方が「1円も支払わない」という態度を崩さないケースもあるかもしれません。
また、任意交渉を選択する以上、こちら側の主張額を譲歩する必要がありますので、たとえば、100万円の過払い金があるという場合であっても、100万円満額を回収できないということもデメリットのひとつとなります。
最近の任意交渉では、金融機関側から30~50%程度の減額を要求されるケースも少なくないようです。
次に、裁判(不当利得返還請求訴訟)によって過払い金を回収するときのメリット・デメリットについて確認していきましょう。
裁判(判決)で過払い金の回収を行った場合の最大もメリットは、法律上存在することが明らかな過払い金を確実に得られるということです。
任意交渉のときに用いた「100万円の過払い金がある」という例になぞらえれば、裁判(判決)で回収をすれば、特に争点がなければ1円も譲歩することなく100万円満額を回収できるということです。さらに、過払い金に対する利息も回収することができます。
「裁判の方が過払い金は多くなる」と説明されることが多いのはこのためです。
しかし、裁判(判決)によって過払い金を回収する方法はメリットばかりというわけではありません。裁判によって過払い金を回収するデメリットとしては次の点を挙げることができるでしょう。
①任意交渉の場合よりも費用が高い
過払い金の回収を訴訟で行うときには、弁護士のサポートが必須といえます。
裁判となった場合には、任意交渉の場合に比べて、次の費用を追加で負担する必要が生じます。
このうちで最も負担が大きいのは、弁護士への報酬です。
一般的には、過払い金を回収できた場合の成功報酬が任意交渉よりも裁判の方が高額になります。
さらに、被告が判決に対して控訴(上告)した場合には、追加の着手金が発生する場合もあります。
一般的な弁護士事務所の弁護士報酬は、審級ごと(判決ごと)を基準に発生することになっているためです。
②証拠をそろえる負担
任意交渉のところでも触れたように、裁判で過払い金を回収する際には、原告の方で過払い金が存在することなどについての証拠を収集・提出する必要があります。
万が一、十分な証拠を提出できなかった場合には、原告にとって不利な判決(請求棄却・認容額の減額)が下されることになります。
たとえば、消滅時効の成立が争点となるケースでは敗訴リスクを考えれば、任意交渉でいくらかでも過払い金をもらった方が良いというケースもあるでしょう。
過払い金の請求において最も重要な証拠は、その借金についての取引記録です。
金融機関には、顧客からの取引履歴開示請求に応じる義務があるので、取引履歴が保存されている限りは資料収集で困ることはないといえます。
しかし、取引履歴の保存義務は、最後の取引日(完済日)から10年とされているので、古い借金の過払い金を請求する際には、取引履歴が存在しない(と相手が主張する)場合もありえます。
この場合には、限られた資料から法的に有効な主張をする必要がありますので、専門家のサポートが必須といえます。
③任意交渉よりも回収までに時間がかかる
裁判を選択した場合には、過払い金の回収は任意交渉の場合よりも時間がかかってしまうことが一般的です。
裁判となった場合には、どんなに早くても半年程度はかかりますし、控訴審(第二審)まで進むことになれば、訴訟終了まで1年以上かかることの方が多いといえます(事案にもよってかなりの幅があります)。
したがって、「時間もコスト」であると考えたときには、過払い金の金額がさほど多くないケースでは、裁判よりも任意交渉の方が実際の利益が大きいということも少なくありません。
過払い金の請求を考えている人にとっては、「任意交渉と裁判のどちらが優れた方法なのか」ということは大きな関心事かもしれません。
しかし、結論を先に示しておけば、ケースの個性ごとに答えも変わってくるといえるので、常にどちらが優れているというものではありません。
ここまで解説してきたように、過払い金を回収する方法としての任意交渉と裁判はそれぞれ一長一短があります。
「こちらの主張額を譲歩する必要がない」ということを強調すれば、訴訟の方がより多くの過払い金を回収できるといえますが、それを裏付ける資料が不十分という場合には、「過払い金がゼロになるリスク」も抱えることになります。
特に、取引の分断などによって消滅時効が成立しているかどうかといった点が争点となるケースでは、裁判所の判断それ自体がオールorナッシングになる可能性も高いからです。
その意味では、多少の譲歩はしたとしても「確実にいくらかの過払い金を手にしたい」と考えることにも利がないわけではありません。
時間的なコストについても同様です。
「多少時間がかかっても1円でも多くの過払い金を回収したい」と考えるのであれば、裁判の方が優れていますし、それとは逆に、「1日も早く過払い金を手にしたい」というニーズの方が強ければ、任意交渉の方が優れている場合が多いといえます。
結局のところ、最も大事なのは、それぞれのケースにおいて「自分のニーズがどこにあるのか」ということを明確に意識することといえます。
過払い金の回収方法については、弁護士によってもかなり結論が変わってきます。
弁護士のなかには、「過払い金の回収は裁判でしか行わない」という事務所や、それとは逆に「原則として任意交渉で対応する」という(やや極端な方針の)事務所も少なからず存在するからです。
それぞれの方針は、弁護士事務所の都合(報酬額を多くもらいたい、事件を早く処理したい)や、過払い金回収という業務に対するこだわり(ビジネスとしてとらえているか、被害者救済として捉えているか)といった、依頼人のニーズとは全く別の理由で決められている場合は少なくありません。
その意味では、任意交渉と裁判のいずれの方法で過払い金を回収しようか迷っているというときには、複数の弁護士に相談してみることもひとつの手です。
過払い金を回収するときに、任意交渉と裁判のいずれが良いかということは一概に決められるものではありません。
一般的には、金額にこだわるなら裁判、コストにこだわるなら任意交渉と整理することは可能ですが、一応の目安に過ぎません。
裁判で多くの過払い金が認められたとしてもコストがそれ以上にかかってしまえば意味がありませんし、任意交渉は相手の都合で上手くいかないこともあるからです。
結局は、それぞれのケースが抱える事情や、過払い金を請求したいと考えるニーズなどに応じてその都度正しい選択をしていくことが一番重要ということになります。
その意味では、「弁護士にまかせきり」にすると、「こんなはずではなかった」と後悔する原因にもなりかねませんので、自分が信頼できると思える弁護士に相談・依頼することがやはり大切といえるでしょう。
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しかし、「過去に過払い金の請求をしたことが原因で、自動車ローンや住宅ローンなどの借金に悪い影響が出るのでは?」などと考えて、過払い金請求をためらう方は少なくないようです。
そこで今回は、過去の過払い金請求が、その後の自動車ローンや住宅ローンなどに影響を与えるのかについて、解説します。
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CMを聴いてフリーダイヤルに電話する前に、過払い金についておさらいしておきましょう。
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