債務整理 弁護士コラム
借金の問題は金額にばかり目が行きがちですが、実は借金のリスクは金額よりも「借入件数」に比例して大きくなる可能性の方が高いといえます。
特に、昨今はインターネットショッピングの普及や現金レスの決済が増えたことで、クレジットカードを複数枚もっている人も増え、借金自体もしやすくなったといえるので、毎月複数のカードローンの支払いを抱えている人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は「多重債務」とよばれる状況やそのリスク、解決方法などについて弁護士が解説します。
毎月何件も支払いがあって苦しいという方はもちろん、返済はできているものの先行きに不安を感じている方も参考にしてみてください。
多重債務とは、その言葉通り「複数の借金を抱えている状態」のことをいいます。
特に、借金問題の文脈においては、「担保のない借金を2件以上抱えている状態」にある人のことを「多重債務者」と称することが一般的です。
具体的には、
を複数抱えている状態にあれば、多重債務者であると考えることができます。
「多重債務」という問題は、ごく限られた人だけの問題というイメージをもっている人が多いと思いますが、実際には、わたしたちにとってかなり身近な問題であるということができます。
たとえば、令和元年6月に発表された「体重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」によると、平成30年度において、無担保の借り入れが3件以上ある人は120万人、5件以上の借り入れがある人は9万人、1人あたりの借金残額は53万円とされています。
特に、銀行カードローンは、キャッシュカード1枚で簡単に借金できることから、いまでは消費者金融のカードローンよりも利用者が増えています。このような状況を前提にすれば、借金2件以上の人(多重債務のある人)は相当の数になると推測できます。
また、同データ「多重債務対策をめぐる現状及び施策の動向」によると、借金をしたきっかけの1位は、定収入・収入の減少で、2位と倍近くの差があることから、近年の借金問題は、ギャンブル・浪費といった原因よりも、低い所得を原因とするものが増えているのが特徴といえます。
低所得は、学歴などの構造的な問題や、病気などを原因とすることも少なくありませんし、収入減は勤務先の都合、コロナ禍のような社会状況の急変によって引き起こされることの方が多いといえます。その意味では、多重債務の問題は「誰にでも起こりうる問題」と考えるべきでしょう。
多重債務に陥ってしまった場合には、さまざまな危険が潜んでいます。ここでは、代表的な5つのリスクを解説します。
前述したように、多重債務の状況に陥れば、1件しか借金がなかった場合と比べて返済の負担も増えてしまいます。
また、借金返済の負担は、借金の金額よりも借金の件数の増加によって重くなることの方が多い点にも注意しておくべきでしょう。
借金の件数が多くなれば、毎月の返済回数・返済額は、同じ金額で1件の借金しかない場合よりも重くなっていくのが通常だからです。
多重債務の多くは、すでに抱えている借金ではお金が足りず(これ以上借りることができない)、借金を返せないということを理由にスタートすることが多いでしょう。
たとえば、あるカードローンから追加の借金ができるのであれば、わざわざ別のローンを組む必要もないからです。
多重債務に陥るケースでは、慢性的にお金が足りない状況のため、追加の借り入れの際には借りられるだけ借りてしまうケースも多く、借金を一気に増やしてしまう原因にもなっているといえます。
借入件数が増えれば、新たに借金できる可能性は少なくなっていきます。
つまり、2件目の借金よりも、3件目の借金の方がさらにハードルが高いということです。
特に、いまの貸金業者には、「総量規制」というルールが課されているため他社貸し付けを含めて年収の1/3を超える貸し付けを行うことが禁止されています。
したがって、最初の借金を返済するために2件目、2件目の返済のために3件目ということを無限に繰り返すことは不可能といえます。
必ずどこかで「総量規制の壁」にあたってしまうからです。
正規の金融機関からお金を借りられない人がさらにお金を借りようとすれば、行き着く先は「ヤミ金」ということになります。
いわゆる「090金融」や、ネット掲示板などを利用した「個人間融資」はすべてヤミ金ですので絶対に関わらないようにしましょう。
なお、「ヤミ金から借りても返せば大丈夫」、「数万円くらいならすぐに返せる」という安易な考えは非常に危険です。
ヤミ金は法外な利息を取り続けることを目的としているので、完済させないようにさまざまな手を講じてきます。完済されれば利息を取ることができなくなるからです。
また、最終的に返済(利息の支払い)ができなくなった債務者に対し、銀行口座や携帯・スマホの違法売買といった犯罪行為に加担させることを目的としているヤミ金も少なくありません。
これらの行為に加担してしまえば、「数万円程度の借金」がきっかけで、刑事罰を負うという大きなデメリットを被ることにもなりかねません。
新規の借り入れができなくってしまった債務者の中には、クレジットカードの現金化をする人もいます。
「クレジットカードの現金化」とは、カードを利用して購入した商品を、カード代金支払い前にリサイクルショップなどに売却し、換金することです。
クレジットカードの現金化はカード規約違反なので、カードの利用停止・解約になってしまうだけではなく、カード利用残高を一括払いするように請求され、状況がさらに悪化してしまうでしょう。
多重債務の状況は、1日も早く解消した方がよいといえます。負担の大きな借金を長期間抱えることは、破綻のリスクを大きくさせるだけだからです。
自力で家計を改善させ、すぐに借金を完済できることが理想ですが、実際にそのような対応ができるケースはあまり多くないといえます。
短期間で、劇的に家計を改善させることは、思っているよりも簡単なことではないからです。
そこで、以下では、多重債務を解決するための2つの方法を紹介します。
多重債務を解消するひとつの方法が、いわゆる「おまとめローン」による借金の1本化です。「おまとめローン」とは、他社からの借り入れを清算し、複数の借り入れを1社にまとめるための借金の通称です。
銀行や消費者金融のほとんどには、おまとめローンに該当する商品(借金のメニュー)が用意されています。
多重債務のもっとも大きなリスクは、毎月の返済回数(返済日)が多くなることにあります。
「月に何度も借金の返済をする」というのは、お金の管理が大変というだけでなく精神的な負担も小さくありません。
借金をひとつにすることができれば、返済日の管理だけでなく、借金の状況も正しく把握しやすくなります。
さらに、借金は小口のものほど利息の負担も大きくなるので、借金にまとめてひとつにすることで、金利を下げることも可能になります。
金利が下がることで毎月の返済額を減額できる場合も多いでしょう。
しかし、おまとめローンも借金なので、審査に通らなければ借りることはできません。
借り換えに必要な借金に対して収入が少なすぎる場合や、すでに借金返済に滞納がある場合には審査に通らないこともあります。
また、適用される金利は、審査が終わるまでわからないので、借り換えができたとしても、適用金利が思っていたよりも低くならなかったということも考えられます。
その場合には、完済までの期間がそれまでよりも長くなることで、返済不能になるリスクが大きくなる場合や、返済総額が増えてしまうこともあります。
まとめローンはメリットだけではなく、リスクも多いので、申し込む前に綿密な返済シミュレーションを行うことが大切です。
借金の1本化で解決できないような多重債務に陥ってしまった場合には、自力で借金を解決するのは大変難しい状態です。
「頑張ればいつか完済できる」と思っていても、借金が膨らんでしまうことの方が多いといえます。自力での完済が苦しいと感じたときには、早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。
また、「借金の取り立てへの不安」から、多重債務に陥るケースは少なくありません。しかし、弁護士に債務整理を依頼すれば、取り立てを止めることができます。
弁護士へ債務整理の依頼をすると、弁護士から債権者に「受任通知」が送付されます。
受任通知が送付されると、法律により債権者は債務者に対し、電話や訪問など直接の取り立て請求が禁止されるのです。
また、債務整理に着手すると借金の返済も一時的にストップさせることが一般的なので、取り立てだけでなく返済からも一時的に解放されます。
借金は「できるだけ早く対応すること」がとにかく大切です。対応が遅くなってしまうと、ますます返済が苦しくなり深刻な状況に陥ってしまうだけでなく、債務整理の選択肢も減ってしまいます。
借金問題はひとりで問題を抱え込んでしまうと、冷静な判断ができなくなってしまうこともあるでしょう。誰にも相談できず、結果としてヤミ金や犯罪などのトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。
借金の返済ができずに多重債務者に陥ってしまったときは、「まだ大丈夫」とひとりで判断せず、早急に弁護士などの法律の専門家に相談することが、借金を根本的に解決するための効果的な手段です。
弁護士に相談をしても、借金の悩みを抱えていることは家族などに知られることはありません。借金の返済が苦しいと少しでも感じたときは、一刻も早く相談し借金問題を解決しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
「期限の利益って何のことだろう?」「期限の利益喪失通知書が自宅に届いたけど、どうすればよい?」……借金をしている方のなかには、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
期限の利益とは、「期日までにお金の返済をすればよい」という債務者と債権者(銀行や貸金業者など)の約束事を言います。
いつまでに借金を返せばよいのか、返済日をあらかじめ決めることにより、債務者は返済のめどを立てることができます。そして、「返済日に返す」ということは、それまでは返さなくていよいということです。
期限の利益という言葉においては、その「返さなくてもよい」ということを、「利益」と表現されています。
本コラムでは、期限の利益の基本情報や期限の利益を喪失するケース、期限の利益喪失通知が来た場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
期限の利益について悩んでいる方のご参考になれば幸いです。
債務整理は、借金問題を解決するための法的手続きの総称です。
債務整理の手続きを通して、合法的な手段で借金を減額したり、返済そのものを免除したりすることができます。しかし、それと引き換えに、一定のデメリットもあります。
債務整理には任意整理や特定調整、個人再生、自己破産といった種類があり、それぞれ特徴や注意すべき事項が異なります。
そのため、借金問題を適切に解決するためには、自分に合った手続きを選ぶことが重要です。
本コラムでは、債務整理の各手続きにおけるデメリットや、債務整理のなかでも自分に合う方法の選び方について、ベリーベスト法律事務所 債務整理チームの弁護士が解説します。
銀行口座は、資産管理を行う上で欠かせません。万が一のために蓄えを備えるだけでなく、給料の受け取りや決済用の手段としても、必須のツールです。
しかし、借金の返済などを滞納してしまえば、銀行口座が差し押さえにあってしまうこともあります。債権者にとっても銀行口座の預貯金は、滞納した借金を回収するための重要な引き当て財産だからです。
令和2年4月に改正民事執行法が施行され、債権者による債務者の財産調査が容易になりました。そのため、銀行口座は以前よりも差し押さえやすくなったといえます。
銀行口座に限った統計ではありませんが、裁判所が公表する「司法統計年報」によると、「債権及びその他の財産権に対する強制執行」の手続きが裁判所で行われた数は、13万6949件でした。うち11万7866件は、取り下げられています。
(出典:令和4年司法統計年報 第101表 民事執行既済事件数―事件の種類及び審理期間別―全地方裁判所)
本コラムでは、借金の返済を滞納して銀行口座が差し押さえられてしまうときの流れや効果、差し押さえを回避する方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。