債務整理 弁護士コラム
借金をして利息を払いすぎていた場合は、過払い金の返還を請求することができます。
ただし、貸金業者に対して単に「過払い金を返してくれ」と言うだけで自動的に返還してもらえるものではありません。
過払い金を取り戻すためには、こちらで金額を計算した上で、返還請求手続きをしなければなりません。そのためには、いくつかの書類が必要になります。
本記事では、過払い金を全額取り戻すために返還請求における必要書類などについて解説していきます。
過払い金返還請求の準備をどうすればいいのかとお悩みの方のご参考になれば幸いです。
まずは、過払い金返還請求をするための必要書類をご紹介します。
以下の必要書類をそろえることが、過払い金返還請求の準備の第1歩となります。
過払い金返還請求に必要不可欠な書類は、以下の三つです。
①取引履歴
取引履歴とは、貸金業者との取引を全て記録した書類のことです。
過払い金の返還を請求するには、まず、貸金業者との間で「いつ、いくらを借りたのか」、「いつ、いくらを返済したのか」という事実を全て確認しなければなりません。
そのために必要となるのが、取引履歴です。
②引き直し計算書
引き直し計算書とは、取引履歴に記録されている全ての取引を法定金利(利息制限法による上限金利)によって計算し直した書類のことです。
貸金業者との取引は、法定金利を超える金利で行われていることがあります。
その場合、利息を支払いすぎていることになります。
その取引を法定金利に引き直して計算を行い、最終的に元本と法定金利による利息を上回る金額を支払っている場合、その金額が「過払い金」になります。
③過払い金返還請求書
過払い金返還請求書とは、利息の引き直し計算によって判明した過払い金の返還を請求するために貸金業者に送付する書類のことです。
過払い金返還請求を行うときは、後々裁判をするための証拠を残すためにも、過払い金返還請求書を作成して引き直し計算書と一緒に配達証明付書留郵便で貸金業者へ送付するとよいでしょう。
以上3点の必要書類があれば過払い金返還請求は可能ですが、以下の書類もあれば準備しておきましょう。
貸金業者が開示する取引履歴が正確であるという保証はないので、以上の書類があれば誤りをチェックすることができます。
また、貸金業者は取引履歴の一部しか開示しないこともあります。
しかし、取引をさかのぼるほど、過払い金が発生している可能性が高くなります。
そんなとき、上記の書類によって開示された取引履歴よりも前の取引があることを証明できれば、その取引履歴の開示も請求することができます。それでも開示されなかった場合にはこれらを証拠にして過払い金返還請求をすることも考えられます。
では、過払い金返還請求をするにはどうすればいいのでしょうか。
ここでは、過払い金返還請求の準備から和解までの流れと、必要書類の取得方法をご説明します。
取引履歴は、貸金業者に開示請求をすれば送ってもらうことができます。
全ての取引を自分で記録していたり、利用明細書など上記でご紹介した書類を全て保管している場合は、自分で取引履歴を作成することも可能ですが、貸金業者に開示請求をするのが一般的です。
引き直し計算書は、エクセルで作成された利息計算ソフトで作成することができます。
ただ、全ての取引をひとつひとつ入力する必要があるので、入力ミスがないように注意しましょう。
また、適用する金利を間違えないように注意することも大切です。
貸金業者は、自社に不利となるミスは指摘しますが、有利となるミスは指摘してくれないことが少なくありません。
ミスのために計算結果が本来請求できる過払い金より少なくなると損してしまうので、引き直し計算書を作成した後はミスがないかどうかを入念に確認しましょう。
過払い金返還請求書の書式には特に決まりはないので、自由に記載してかまいません。
インターネットでテンプレートをダウンロードすれば、簡単に作成することができます。
過払い金返還請求書を送付してからしばらくすると、貸金業者から連絡があります。
多くの場合は、実際に発生している過払い金のうち何割かを返還することで和解してほしいと打診されます。
貸金業者によっては、自社独自の計算結果を提示してくることもあります。
状況によっては、過払い金返還請求権の時効消滅を主張されて過払い金の返還を拒否されたり、大幅な減額を求められることもあります。
いずれにしても、この段階で過払い金の全額を返還してもらう約束ができることはまずありません。
そのため、いくら返還してもらえるのかを交渉することが必要になります。
過払い金の返還される金額や返還時期についてお互いが合意すれば、和解成立となります。
和解する場合は少なくとも実際に発生した過払い金のうち何割かを譲歩することになりますが、裁判をする場合よりも早く返還してもらえるというメリットもあります。
したがって、金額はある程度少なくなっても早くお金が必要な場合は和解するのもよいでしょう。
和解するときは、和解書を2通作成し、お互いが1通ずつを保管することになります。
和解書はどちらが作成してもかまいませんが、多くの場合は貸金業者が作成した和解書に署名押印します。弁護士に依頼した場合は、弁護士が作成するのが一般的です。
和解の交渉では、どのように粘っても過払い金を全額取り戻すことはほぼ不可能です。
では、過払い金を全額取り戻すためにはどうすればいいのでしょうか。
訴訟によって過払い金が発生した事実を証明することができれば、過払い金の全額を返還すべきという勝訴判決を得ることができます。
和解は、貸金業者が任意にお金を支払うという契約なので全額の返還を強制することはできませんが、勝訴判決を得れば強制的に全額を返還してもらうことができます。
訴訟をするためには、以下の書類が必要になります。
①訴状
訴状とは、訴訟で請求する権利の内容と、それを裏づける事実を記載した書面のことです。
簡易裁判所には定型の訴状用紙が置いてありますし、インターネットでもテンプレートをダウンロードすることができます。
②証拠書類
訴訟では、主張する事実を証明できる証拠を提出する必要があります。
過払い金返還請求の訴訟では、前述した取引履歴と引き直し計算書があれば足ります。
③資格証明書
被告となる貸金業者が法人の場合は、登記簿謄本を取得し、訴状に添付して提出する必要があります。
登記簿謄本は法務局の窓口か、オンラインサービスを利用して取得できます。
④収入印紙
訴訟にかかる手数料は、訴状に収入印紙を貼ることによって納めます。収入印紙の金額は、訴訟で請求する金額に応じて決められています。詳細は裁判所に問い合わせるか、事前に弁護士に相談するといいでしょう。
⑤郵便切手
裁判所が連絡に要する郵送費は、原告が提訴時に郵便切手を提出することによって納めます。
金額は5000円~6000円程度ですが、切手の種類や組み合わせが裁判所によって異なるので、事前に裁判所に問い合わせて確認しましょう。
訴状を提出すると、1か月半~2か月程度先に第1回の裁判期日が指定されます。
指定された期日までに被告から「答弁書」という反論書面が提出されます。
第1回期日では訴状と答弁書の内容が確認され、次回期日を指定されるのが一般的です。
以降は、おおむね月に1回のペースで裁判が開かれ、お互いに主張・反論を重ねていくことになります。
その後、裁判所から和解を打診されることが多いですが、和解を拒否すれば判決が言い渡されます。
過払い金の返還請求権は、最終取引から10年で時効消滅します。
時効が問題となりやすいのは、いったん借金を完済したものの、同じ貸金業者から再度借り入れをしているケースです。
貸金業者は、以前の借り入れに関する取引で過払い金が発生していたとしても、その完済のときから10年が経過していれば消滅時効を主張してきます。
つまり、完済前の取引と完済後の新たな取引は分断して別々の取引として考えるべきだと主張してくるのです。
しかし、同じ基本契約に基づいて再度借り入れをした場合は、基本的に完済前と完済後の取引は一連のものであると判断されます。
ただし、完済してから新たに借り入れるまでの期間や、新たな借り入れの際にカードが再発行されているかどうかなど、事情によっては取引が分断されていると判断された裁判例もあります。
とはいえ、同じ基本契約に基づいて再度借り入れをして、その最終取引から10年が経過していない場合は、過払い金返還請求が認められる可能性が高いので、基本契約の変更がないことや取引の空白期間の短さなどの有利な事情を諦めずに主張していくことになります。
過払い金返還請求は自分で行うこともできますが、弁護士に依頼することによって手間が省ける上に、高額の過払い金を取り戻すことも期待できます。
具体的には、弁護士に依頼することで以下のようなメリットを受けることができます。
貸金業者に取引履歴の開示を請求することは難しいことではありませんが、途中からの取引履歴しか開示してもらえないことはよくあります。
このような場合、弁護士から請求することでさらに以前からの取引履歴が開示される可能性があります。
また、引き直し計算書の作成も単純作業ではあるものの、ミスが発生しやすい作業でもあります。前述したように、ミスをすると損をしてしまう可能性が高くなります。
弁護士に依頼すれば引き直し計算書の作成も代行してくれるので、正確な引き直し計算書をスピーディーに作成することができます。
和解によって過払い金を返還してもらう場合は、交渉が重要となります。
しかし、貸金業者の交渉担当者は交渉のプロです。素人では対等に交渉することは困難です。
特に、時効など法的な論点を主張された場合は太刀打ちできないでしょう。
そんなときは、弁護士に依頼することで交渉を代行してもらうことができます。
専門的な知識とノウハウを生かして交渉してもらうことで、より有利な条件で和解することが期待できます。
訴訟は手続きが複雑になりますし、訴状などの裁判書面を書くときには専門的な知識も必要になります。
訴訟手続きに失敗して敗訴してしまうと、過払い金の返還を受けられないことが確定してしまいます。
弁護士に依頼すれば訴訟手続きも代行してもらえるので、訴訟する場合は弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士に依頼するためには、委任契約の際に提示する本人確認書類が必要です。
その他には、特に必要書類はありません。
取引履歴の開示請求も引き直し計算書や過払い金返還請求書、裁判書面の作成も全て弁護士が代行します。
ただ、弁護士に依頼するときには、最初にいつ借り入れをしたのかを伝えることが大切です。
そのために契約書や利用明細書、振り込み明細書、通帳などをある限り準備して持参しましょう。
これらの書類は、弁護士が貸金業者との交渉や推定計算やゼロ計算を行うなど、訴訟を提起する際の証拠として重要なものでもあります。
過払い金返還請求をする際は、契約書や利用明細書、振り込み明細書、通帳などが残っていれば有利になることもありますが、特に書類がなくても本記事でご説明した方法により自分で請求することは可能です。
ただ、書類があまりない場合の請求手続きなどには、専門的な知識やノウハウが必要になります。
悩んでいる間にも消滅時効期間は経過します。過払い金返還請求をお考えの場合、早めに弁護士にご相談なさることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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消費者金融や銀行といった金融機関に対する過払い金の返還請求は、借金の負担を軽減できる有効な方法のひとつです。
しかし、「過去に過払い金の請求をしたことが原因で、自動車ローンや住宅ローンなどの借金に悪い影響が出るのでは?」などと考えて、過払い金請求をためらう方は少なくないようです。
そこで今回は、過去の過払い金請求が、その後の自動車ローンや住宅ローンなどに影響を与えるのかについて、解説します。
ラジオでは、相変わらず、あなたにも過払い金があるかもしれないという内容のCMが流れています。私にも関係あるかも?と思う方もいるでしょう。
CMを聴いてフリーダイヤルに電話する前に、過払い金についておさらいしておきましょう。
テレビや雑誌などで目にすることのある過払い金請求。
過去に借金で苦しんだ経験のある方であれば「私にも過払い金があるかもしれない」と考えるでしょう。
しかし、一般の方にとって過払い金があるかどうかの調査は手間暇のかかる難しい作業というイメージが強いでしょう。
また、あるかどうかわからない過払い金の調査に費用をかけたくないと考える方も少なくありません。
そんなときに便利なのが、「過払い金の無料調査」です。
しかし、過払い金の無料調査はメリットばかりというわけではありません。
そこで今回は、
●過払い金の無料調査のメリット
●デメリット
●利用時の注意点
などについてまとめてみました。
「もしかしたら、わたしにも過払い金があるかもしれない」と考えている方はぜひ参考にしてみてください。