債務整理 弁護士コラム
借金の滞納を続けていると、代位弁済が行われることがあります。保証会社などの第三者が債務者に代わって残高を返済するのです。
以後はその会社が債権者となり、代位弁済通知書を送付してきます。その社名に心当たりがないために放置する人もいますが、保証会社は正当な権利に基づいて請求しているため、通知を無視することは非常に危険です。
本コラムでは、代位弁済の意味を詳しく解説するとともに、代位弁済されたときに生じるリスクや手続きの流れ、保証会社に支払えないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご説明します。
代位弁済とは、債務者以外の第三者が、債務者に代わって債務を弁済することです。主に銀行系のカードローンやクレジットカード、住宅ローンなどの返済を概ね3か月にわたって滞納した場合に、保証会社による代位弁済が行われます。その後は、保証会社が債権者となり、債務者に対して支払いを請求します。
「保証を頼んだ覚えはない」という人もいるかもしれませんが、銀行から借金をする際には、保証会社との保証委託契約を結んでいるはずです。通常、保証委託契約では、保証会社が債権者から弁済を求められたときは、債務者に対して事前に催告することなく代位弁済を行うことができ、債務者は代位弁済に関して異議を述べない、という条項が定められます。
そのため、借金の滞納を続けていると、債務者の知らないうちに保証会社による代位弁済が行われてしまうのです。
保証会社が代位弁済を行うと、債務者には以下のリスクが生じます。放置すればするほどリスクが高まっていくので、早期に対処することが重要です。
代位弁済をした保証会社は、保証委託契約に基づき、債務者に対して代位弁済額の支払いを請求してきます(民法第459条1項)。保証会社のこの権利のことを「求償権」といいます。
通常、保証委託契約では、求償権の行使に対する債務者の弁済について、分割払いの条項は定められません。したがって、元の借金が分割払いの契約であったとしても、保証会社から請求を受けた場合には、原則として残高を一括で支払わなければなりません。
保証会社が求償権を行使するときには、代位弁済額に対して遅延損害金を加算することが認められています(民法第459条2項、第442条2項)。保証委託契約においても、その旨の条項が定められているはずです。
遅延損害金の利率は14.6~20%程度が一般的ですが、残高の全体に対してかかるため、短期間でも遅延損害金が高額となる可能性があることに注意が必要です。
銀行からの借金を滞納して代位弁済されると、信用情報に傷がつきます。具体的には、KSCという信用情報機関に「代位弁済」という事故情報が登録されます。
その後5年間は、借入、ローン、クレジットカードの利用や、携帯電話・スマホ端末の分割購入が難しくなります。その他にも、賃貸住宅への入居や契約更新に支障をきたしたり、子どもの奨学金の保証人になれないなど、さまざまな制限がかかることがあるので、注意しなければなりません。
保証会社とは別に連帯保証人を立てている場合には、連帯保証人も保証会社から督促を受けます。連帯保証人は主債務者(借金をした本人)と同一の義務を負っているため、やはり、残高と遅延損害金の一括返済を請求されるのです。
銀行で住宅ローンを組むと、保証会社の抵当権が住宅に設定されます。したがって、債務者や連帯保証人が求償権の行使に応じなければ、保証会社は抵当権を実行し、住宅を競売にかけることが可能となります。
競売にかけられる時期は保証会社の意向次第ですが、保証会社からの請求を無視していると、いずれ住宅を失うことは避けられません。
銀行カードローンやクレジットカードの利用代金など、無担保の借金を滞納して代位弁済された場合には、最終的に保証会社が債務者の給料や預金を差し押さえることがあります。これらの財産を差し押さえられると、生活費が不足する恐れがあるだけでなく、勤務先や家族に借金の滞納がバレてしまうリスクがあることにも注意が必要です。
代位弁済とその後の求償の手続きは、一定の流れに沿って行われます。いきなり競売や差し押さえを受けるわけではなく、以下のように、何らかの対処をとることが可能な機会が事前に何度もあることにご注目ください。
借金を滞納してから数日~1週間が経過すると、借入先の金融機関から督促状が届きます。督促状を無視すると、繰り返し督促状が送られてきたり、電話がかかってきたりして支払いを催促されます。それでも滞納を放置すると、催告書が届けられます。
督促状も催告書も支払いを催促するための書面ですが、催告書には最終の警告書としての意味合いがあります。一般的に銀行から送られてくる催告書には、指定された期日までに滞納を解消しなければ、代位弁済が行われる旨が記載されています。
債務者が督促状や催告書を無視し続けると、金融機関が保証会社に保証債務の履行を求め、保証会社はこれに応じて代位弁済を行います。滞納開始から代位弁済が行われるまでの期間は金融機関によって異なることもありますが、銀行の場合は概ね3か月(3回の滞納)程度です。
代位弁済が行われると、保証会社から代位弁済通知書が送られてきます。この通知書は求償権に関する請求書を兼ねており、債務者が支払うべき金額と支払期限、振込先などが記載されています。
支払えない場合には保証会社まで連絡すべきことと、連絡先も記載されているので、一括で支払えない場合には無視せず、連絡することが重要です。
保証会社からの請求も無視していると、やはり督促状などの送付や電話による支払い催促が何度か繰り返された上で、最終的に裁判を起こされます。
保証会社が起こす裁判には支払督促と民事訴訟の2種類がありますが、どちらの場合も裁判所から特別送達で書類が届けられます。そして、どちらの裁判を起こされた場合も、放置すると裁判所で保証会社の言い分がすべて認められ、公的に債務が確定します。
債務が公的に確定すると、保証会社は強制執行を申し立てることができるようになります。この申し立てが裁判所で認められると、給料や預金などを差し押さえられ、強制的に債務の弁済に充てられるのです。
なお、住宅ローンの場合は、保証会社が抵当権に基づき強制執行の申し立てが可能なので、支払督促や民事訴訟を起こすことなく競売にかけられることに注意が必要です。
代位弁済通知書を受け取り、保証会社から請求された金額を支払えない場合でも、以下の対処法をとれば差し押さえを回避して解決することが可能です。
代位弁済が行われた時点で銀行からの借金が消滅時効にかかっていることは考えにくいですが、代位弁済後に支払わないまま時効期間が経過していることはあり得ます。保証会社の求償権の消滅時効期間は、「代位弁済が行われたとき」から5年です。
時効が成立している場合でも、債務の時効消滅を主張するためには「時効の援用」が必要です(民法第145条)。時効の援用を行う方法に決まりはありませんが、一般的には「消滅時効援用通知書」を作成し、内容証明郵便で保証会社へ送付します。
時効が成立していない場合は、求償に応じる義務があります。一括で支払えない場合には、保証会社に連絡して事情を話せば、多くの場合は協議により分割払いが認められます。
裁判を起こされた場合でも、答弁書を提出したり、裁判期日に出頭したりして和解協議を行えば、ほとんどの場合は分割払いで裁判上の和解を成立させることが可能です。
早めに協議した方が柔軟な対応が期待できるので、請求を受けたら無視せず、保証会社に連絡することが重要です。
保証会社と和解条件で折り合えない場合には、債務整理が有効です。弁護士を通じて任意整理を行えば、保証会社が譲歩して支払い可能な条件で和解できる可能性があります。
保証会社が十分に譲らない場合や、分割でも支払えないほどの金額を請求された場合でも、個人再生や自己破産で解決することが可能です。一定の条件を満たせば、借金の大幅な減額や全額免除が認められます。
債務整理をするなら、まずは弁護士へのご相談がおすすめです。状況に応じて最適な手続きについてアドバイスが得られます。実際の債務整理手続きは、弁護士に依頼すれば、すべて弁護士が代行します。弁護士のサポートを活用することで、納得のいく結果が得られるはずです。
代位弁済後の保証会社からの請求を無視すると大きなリスクが生じますが、早めに適切な対処をとれば、柔軟に解決できる可能性も十分にあります。一括で支払えないのであれば、早めに弁護士にご相談の上、対処法を検討した方がよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、代位弁済の前後を問わず、借金問題のご相談は何度でも無料で承っております。経験豊富な弁護士が最善のアドバイスをいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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