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債務整理をすると保証人に影響がある?任意整理など債務整理別に解説

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更新日:2023年11月21日 公開日:2020年06月23日

債務整理をすると保証人に影響がある?任意整理など債務整理別に解説

保証人・連帯保証人は、主たる債務者が借金を返済できなくなったときに肩代わりをする義務があります。

とはいえ、実際に保証人・連帯保証人になる人は、保証人・連帯保証人が負っている法的義務などについて詳しく理解している方も少なくありません。
しかし、主たる債務者の滞納は、保証人・連帯保証人の知らないところで発生してしまうこともあります。

ある日突然、債権者から多額の一括請求を迫られれば、保証人・連帯保証人の生活それ自体も危うくなることがあります。
そこで今回は、主たる債務者が債務整理した場合の保証人への影響について解説します。

1、保証人の役割

この記事での解説の前提として、保証人の役割について簡単に確認しておきましょう。

借金の文脈における保証人は、「人的担保」ともよばれることがあるように、主たる債務者の返済を保証する立場にいる人のことをいいます。

ここでいう「保証」というのは、簡単にいえば「肩代わり」のことを意味しますので、主たる債務者が債権者への返済ができない場合に、「主たる債務者に代わって借金の返済義務を負う方」が保証人ということになります。

  1. (1)保証人が必要となる借金の具体例

    一般的には「多額の借金」をする際には、保証人の提供を求められる可能性が高くなるといえます。

    債権者にとっては、高額な融資ほど貸し倒れとなるリスクも高くなるために、「万が一の場合の備え」を要求するケースも多くなるからです。

    保証人が必要となる借金の具体例としては、

    • 住宅ローン
    • 奨学金
    • 事業目的の多額の融資
    • 公的機関からの融資


    などを挙げることができます。

    ただし近年では、いわゆる「保証会社」が普及してきたこともあり、「保証人がいなければ借りられない借金」というのは減ってきています。

    近年では、住宅ローンでも保証人不要という商品も増えています。

  2. (2)「保証人」のほとんどは「連帯保証人」

    ところで、一般の人が「保証人」とよんでいるケースのほとんどは、「保証人」ではなく「連帯保証人」です。

    言葉としては「連帯」が付くだけなので、大きな違いはないと思っている人も多いかもしれませんが、法律的には「保証人」と「連帯保証人」とは大きな違いがあります。

    連帯保証人となった場合には、検索の抗弁権・催告の抗弁権といった保証人に認められている反論の権利(簡単にいえば、主たる債務者への取り立てを先に行って欲しいという反論の権利)が認められないからです。

    つまり連帯保証人は、ほぼ主たる債務者と同じ取り扱いを受けることになります。

2、債務者の債務整理の効果は保証人に及ぶのか?

債務整理は、債務者が抱える借金について「減額」、「免除」を認めてもらうための手続きです。

しかし、債務整理によって主たる債務者が借金の減額・免除を受けたとしても、その効果は保証人・連帯保証人の責任(返済義務)には何の影響も与えません。

主たる債務者に対する債務整理の効果が保証人や連帯保証人にも及ぶのであれば、「人的担保」としての意義が全くなくなってしまうからです。

むしろ、主たる債務者が債務整理を行うことは、「主たる債務者が返済不可能になった」ということを確定させるため、保証人・連帯保証人にとっては、債権者からの取り立てを受ける要因となります。

特に連帯保証人の場合には、上で触れたように検索・催告の抗弁権がありませんので、債務整理の代理人となった弁護士が債権者に受任通知を送付し、「支払い停止」を通告した時点から、取り立てを受けることになることは注意しておく必要があります。

つまり、連帯債務者は、検索・催告の抗弁権がないため、債権者からの督促に対し、「主たる債務者の自己破産手続きで配当できなかった残額だけを支払います」という反論すらできないというわけです。

3、求償権と債務整理|肩代わりした分を債務者に返してもらえるのか?

保証人・連帯保証人は、主たる債務者の債務を肩代わりしたときには、主たる債務者に対し肩代わり分の返還を求めることができます。これを求償権といいます。

以下では、主たる債務者が債務整理した場合の求償権の取り扱いについて確認していきます。

  1. (1)主たる債務者が任意整理をした場合

    任意整理は債権者と債務者が私的な話し合いをもって、今後の返済条件の見直しを行う、「契約交渉」といえます。

    ①任意整理における主たる債務の減免の効果
    任意整理において「将来利息が免除される」ということは、主たる債務の内容を当事者間の合意で変更したことになり、その効果は保証債務にも及ぶことになります(保証債務の附従性:民法448条)。

    したがって、仮に任意整理で「主たる債務の元金の減免」について主たる債務者・債権者との間で合意が成立すれば、原則としてその限度において、保証人・連帯保証人の責任も減免されることになります。

    ただ、実際の任意整理では債権者が借金元金の減免に応じることは(残額の大部分を一括返済できたようなケースを除いて)とても少ないです。

    ②保証人・連帯保証人の返済義務
    主たる債務者が滞納などを続けた場合や、弁護士等に債務整理を依頼した場合には、保証人・連帯保証人は債権者から保証債務の履行を求められることがあります。

    この場合には、連帯保証人の場合には、即座に支払いに応じる必要がありますが、保証人であれば催告・検索の抗弁権を行使できる余地が残されています。

    なお、任意整理が成立した場合には、債権者は主たる債務者に対して「期限の利益」を再度認めることになりますので、主たる債務者が和解の内容にしたがって、返済を続けている間は、保証人・連帯保証人への取り立てもストップすることになります。

    ③主たる債務者の任意整理と求償権
    任意整理成立前に保証人・連帯保証人が保証債務の一部を履行した場合には、その金額について、求償権を行使することができます(全額履行した場合にはそもそも任意整理する余地がなくなります)。

    とはいえ、主たる債務者が任意整理しているという事情を配慮すれば、即座の一括返済を求めることは難しい場合が多いといえるでしょう。

  2. (2)主債務者が個人再生した場合

    個人再生が認められた(再生計画が認可された)ときには、再生計画の内容にしたがって、主たる債務の内容に変更(元金免除)が生じますことがポイントになります。

    ①再生計画認可による権利変更の効果と保証債務の附従性
    再生計画認可が確定したことによって生じる権利(主たる債務)変更の効果は、保証債務には及びません(民事再生法177条2項)。

    したがって、主たる債務者が民事再生を申し立てた場合には、主たる債務者が再生計画に従って一部弁済した部分以外については、保証人の返済義務が残ります。

    ②保証人・連帯保証人が保証債務を履行した場合の求償権
    ここでは、主たる債務者(A)が、債権者(B)からの500万円の債権を抱えて個人再生を申し立て、400万円の減額が認められたという例で説明していきます。

    この場合に、保証人・連帯保証人(C)が返済義務を負うのは、あくまで500万円全体についてですが、Aが再生計画に基づいて返済するので、実質的には残りの400万円の部分について返済することになります。

    なお、再生計画の履行が失敗したという場合には、Aが支払うはずだった100万円(の残額)についてもCは支払い義務を負うことになります。

    また、再生計画認可後に、CがBに対してこの400万円について返済した場合でも、この400万円についてCがAに求償することはできません。

    もっとも、再生計画が終了した後であれば、Aの「任意の意思」に基づいて、400万円全額の返済を受けることは不可能ではありません。

    なお、CがBへ500万円全額の返済を再生計画認可前に行ったという場合には、CがBの地位を引き継いで、再生計画に従った100万円の返済をAから受けることになります。

  3. (3)主債務者が自己破産した場合

    主たる債務者が自己破産した場合には、破産手続きによる債権者への換価・配当(もしくは廃止決定)を経て残債務についての免責を受けることになります。

    免責を受ければ、残債務の法律上の返済義務が完全に免除されることになります。

    ①主たる債務者の破産免責の効果は保証債務に及ばない
    主たる債務者の破産免責の効果は、個人再生の場合と同様、保証債務には及びません。

    破産法253条2項に「免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない」と定められているからです。

    したがって、個人再生の場合と同様に、主たる債務者が自己破産をした場合には、保証人・連帯保証人は、主たる債務者に代わって債務を弁済しなければならなくなります。

    ②保証人・連帯保証人が保証債務を履行した場合の求償権
    保証人の求償権は保証債務の履行の有無を問わず、破産免責の対象となります。

    求償権それ自体は保証債務の履行を条件に発生する請求権ですが、求償権の基礎となる事実は、破産手続き開始決定の前にすでに生じています。
    そのため、破産債権として取り扱われることになるのです。

    したがって、主債務者が自己破産した場合には、保証人・連帯保証人は、債権者に対する支払い義務だけが残ることになります。

    なお、保証人が保証債務を全額弁済した場合に限っては、(債権者に代わって)主債務者の破産手続きに参加することにより、配当を受けることができます。

    ただし、保証債務の履行が一部弁済にすぎない場合には、主債務者の破産手続きに参加することはできません。

    債権者が債権の全額について破産手続きから配当を受ける権利を有しているためです(債権者が配当を受けた分だけ、保証人・連帯保証人の責任も減額されます)。

4、保証人に保証債務を支払える資力がない場合

主たる債務者が債務整理を行えば、基本的には借金の残りの全額について、保証人・連帯保証人は返済に応じなければなりません。

特に連帯保証人となっている場合や、債権者が主たる債務者の債務整理手続きからの回収より連帯保証人から回収することを選択した場合には、それを拒むこともできません。

保証人・連帯保証人に返済に応じられる資力がないときには、主債務者と同様に、債務整理を行うほかありません。

実際にも、奨学金の返済が行き詰まった場合の自己破産などでは、連帯保証人(主債務者の両親)もあわせて自己破産するようなケースが増えています。

5、まとめ

保証人・連帯保証人は、とても負担の大きな立場です。
主たる債務者が債務整理をした場合でも、保証人・連帯保証人の保証義務には影響がないからです。他方で、求償権は、債務整理によって大きく制限されてしまいます。

家族・友人のために保証人・連帯保証人になるケースのほとんどは、民間の保証会社のように、保証人・連帯保証人となる対価を受け取っているわけでもありません。
つまり、保証人・連帯保証人になるということは、「対価なしにリスクだけを抱える」ということでもあります。

したがって、万が一の事態を回避するためにも、保証人・連帯保証人は自らが積極的に主債務者との関係を維持し、主債務者が返済に行き詰まらないようにサポートしていく必要があるといえます。

この記事の監修者
萩原達也

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
オフィス
[実績]
・債務整理の相談件数 36万8091件
  ※集計期間:2011年2月~2022年12月末
・過払い金請求 回収実績件数 90253件
・過払い金請求 回収実績金額 1067億円以上
  ※集計期間:2011年2⽉〜2022年12⽉末
[拠点・弁護士数]
全国76拠点、約350名の弁護士が在籍
※2024年10月現在
[設立]
2010年(平成22年)12月16日

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