債務整理 弁護士コラム
借金の滞納を続けていると、財産を差し押さえられることがあります。会社員やパート・アルバイトなどでお勤めの方なら、「給料差し押さえ」を受ける可能性が高いといえます。
とはいえ、滞納してすぐに給料が差し押さえられるわけではありませんし、何の前触れもなく突然に差し押さえが行われるわけでもありません。差し押さえを回避できる機会は、事前に何度もあります。
本コラムでは、借金を滞納してから給料差し押さえを受けるまでの流れや期間、給料を差し押さえられたときに生じるリスクをご紹介します。併せて、差し押さえを事前に回避する方法と、差し押さえを受けてしまった後に解除する方法もご紹介します。
まずは、借金の滞納が始まってから給料差し押さえを受けるまでの流れと期間をご紹介します。以下の流れと、それぞれのステップにかかる期間を知っておくことで、差し押さえを回避するためには、いつまでに、何をすればよいのかが理解しやすくなるはずです。
返済期限を過ぎても返済しなければ、債権者からの督促が開始されます。督促の時期や方法は、債権者によって違いがあります。返済期限の翌日から電話をかけてくるところもあれば、数日~1週間後くらいに督促状を送付してくるところもあります。
この段階では、多少の遅延損害金が加算されるものの、返済条件が大きく変更されるわけではありません。
滞納を続けると期限の利益を失い、残高に遅延損害金を加えて一括で返済するように請求されます。期限の利益とは、返済期限が来るまでは返済しなくてよいという、債務者にとっての利益のことです。通常、分割払いの契約であっても契約書や利用約款で、滞納すると期限の利益を失う旨が定められています。期限の利益を失うと分割払いは認められなくなり、残高を直ちに支払わなければならないのです。
実際に一括返済を請求されるまでの期間は債権者によって前後しますが、「61日以上」または「3か月(3回分)以上」を滞納したときが目安です。
一括返済の請求を受けても返済しないでいると、債権者は支払督促または訴訟という裁判手続きをとります。
裁判を起こされるまでの期間は、債権者によって大きく異なるのが実情です。滞納開始から3か月程度で裁判を起こすところもあれば、1年が経過してもまだ裁判を起こさないところもあります。一般的には、6か月が経過する頃から裁判を起こされる可能性が高まる傾向にあります。
裁判を放置していると、「仮執行宣言付支払督促」または「判決書」という債務名義が裁判所で発行されます(判決書については、確定すると債務名義となります)。債権者は、債務名義を取得すると強制執行の申し立てが可能です。強制執行とは、裁判所が債務者の給料などの財産を差し押さえ、強制的に債務の弁済に充てられる手続きのことです。
債務者が裁判を放置した場合、強制執行を申し立てられるまでの期間は、「支払督促」が届いてから約1か月後、あるいは「訴状」が届いてから数か月後が目安です。
裁判所が強制執行の申し立てを認めると、実際に給料などの差し押さえが行われます。その場合、裁判所から債務者と勤務先の会社へ差し押さえ通知(正式名称は「債権差押命令」)が送付されます。
郵送のためタイムラグがありますが、強制執行の申し立てから1週間程度で会社に通知が届くはずです。
実際に給料が差し押さえられると、債務者には以下のリスクが生じます。
差し押さえられる金額は、支給額から税金や社会保険料を控除した後の手取り額の4分の1が原則です。ただし、手取り額が44万円を超える場合は、33万円を除いた全額が差し押さえられます。
全額が差し押さえられるというわけではありませんが、これだけの金額が給料から差し引かれると、多くの方は生活が苦しくなるでしょう。
会社には裁判所から差し押さえ通知が届くとともに、債権者からも支払いを求める連絡が入ります。そのため、確実に借金の滞納がバレます。そうなると、会社からの信頼を失うなど、仕事がやりにくくなるおそれもあります。
給料差し押さえ自体は解雇事由として認められないため、それだけが理由で会社をクビになることはありません。とはいえ、上司や同僚などから暗に「辞めてほしい」といった態度をとられると精神的な負担が重くなり、職場にいづらくなることはあるかもしれません。
給料の差し押さえは、債務名義で認められた債権額と、債権者が強制執行手続きに要した費用を完済するまで毎月続きます。
たとえば、債務名義で100万円の債権が認められ、債権者が手続き費用として1万円を支払った場合は、101万円を完済しなければなりません。債務者の手取り給料が30万円だとすると、1か月分の給料から差し引かれる金額は7万5000円なので、14か月にわたって差し押さえが続くことになります(最終月は2万5000円の差し引き)。
債務整理を検討する際には任意整理を希望する人がもっとも多いですが、差し押さえを受けた後では、任意整理を申し出ても差し押さえを解除することはできません。なぜなら、債権者はすでに労力と時間、コストをかけて強制執行手続きを行っているため、もはや交渉して和解に応じるメリットがないからです。
契約どおりに借金が払えなくなった場合でも、以下の方法によって給料差し押さえを事前に回避することが可能です。
債権者から督促を受けている段階で話し合えば、1~2か月程度であれば返済を待ってもらえることもあります。一括返済の請求を受けた段階でも、話し合えば分割払いを認めてもらえる可能性が十分にあります。
債権者としても、強制執行手続きに労力と時間、コストをかけるよりも、できる限り任意での債権回収を望んでいるのです。早めに債権者に連絡すれば、柔軟な対応も期待できます。
債務者自身が債権者と話し合うだけでは、基本的に借金を減らすことはできません。そのため、返済の継続が苦しい場合には、債務整理が有効です。
給料差し押さえ前であれば、ほとんどの債権者は任意整理の交渉にも応じます。早期に任意整理を申し出たほうが有利な条件での和解が期待できるので、早めに債務整理を検討したほうがよいでしょう。
給料差し押さえを受けてしまい、生活が苦しい場合には、差し押さえを解除する必要があります。任意整理では解除できませんが、個人再生または自己破産を申し立てれば解除できます。
個人再生では、申し立てと同時に差し押さえ手続きの「停止」、再生手続開始決定が出た時点で「中止」を求めることが可能です。中止された場合、再生計画案の認可決定が確定すると、差し押さえ手続きは失効します(民事再生法第148条)。
ただし、失効するまでの間は、差し押さえ対象とされている金額は会社が保管するか供託することとされているため、原則として給料全額は受け取れない状態が続くことに注意が必要です。個人再生の申し立てから差し押さえ手続きの失効までには、5~7か月の期間がかかります。その間に給料全額を受け取る方法としては、強制執行停止の申し立てをするか、債権者と交渉して債権差押命令の申し立てを取り下げてもらうことが考えられます。再生手続開始決定が出た後は、債権者にとって給料差し押さえのメリットがほとんどなくなります。そのため、取り下げに応じてくれる債権者も少なくありません。
自己破産では、管財事件の場合は破産手続開始決定と同時に差し押さえ手続きが失効します。そのため、申し立てから1~2か月後の給料日には全額を受け取ることが可能です。
同時廃止事件の場合は、差し押さえ手続きは破産手続開始決定と同時に中止となり、免責許可決定の確定により失効します。自己破産の申し立てから差し押さえ手続きの失効までには、4~5か月程度かかります。その間に給料全額を受け取るためには、個人再生の場合と同様、強制執行停止の申し立てをするか、債権者と交渉して債権差押命令の申し立てを取り下げてもらわなければならないことに注意が必要です。
給料がいったん差し押さえられると、個人再生や自己破産で解除するとしても、ある程度の時間を要します。できる限り、事前に対処して給料差し押さえを回避するほうが得策です。そのためには、早めに弁護士にご相談のうえ、債務整理も視野に入れて対処法を検討することをおすすめします。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
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これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。