債務整理 弁護士コラム
保証人になれば、万が一の場合には、債務者に代わって借金を返さなければならないことは、多くの人が知っていると思います。
しかし、実際に引き受ける保証人は、「ただの保証人」ではなく「連帯保証人」なので、保証人よりもかなり重い責任を負っていることを知っている人は少ないのではないでしょうか。
名前は似ているのですが、連帯保証人と通常の保証人の責任はかなり違うのです。
そこで、この記事では、
・連帯保証人と保証人との違い
・連帯保証人が負わなければならない責任の範囲
・連帯保証人になった場合のトラブルとその対処方法
などについて解説していきます。
最初に、保証人と連帯保証人との法律上の違いについて確認しておきましょう。
「連帯」という2文字がつくだけで、法律上負うべき責任がかなり重くなることに注意しておく必要があります。
保証人と連帯保証人は、「主たる債務者が借金を返済出来なくなったとき」に、「主債務者に代わって借金を返済しなければならない義務を負う」という点では、同じ性質の責任を負っています。
しかし、その責任の追及のされ方には、これから説明する3つの違いがあります。
① 主債務者を飛び越えて保証人(連帯保証人)に督促がきたときに拒めるか?
連帯保証人と保証人との違いの第一は、「催告の抗弁権」の有無です。
抗弁権というのは、法律用語なのですが、簡単にいえば「反論できる権利」のことです。
「催告」というのは、「まずは主たる債務者に請求してください」ということです。
通常の保証人の場合であれば、主たる債務者に請求する前に保証人に請求されたというときには「まず主債務者に返済を求めてください」と債権者に反論することができます。
他方で、連帯保証人の場合には、主たる債務者に請求する前であっても「債権者から支払いを求められたときには応じなければならない」のです(連帯保証人には催告の抗弁権がない)。
② 主たる債務者の財産の前に、保証人の財産を差し押さえすることができるか?
第二の違いは、「検索の抗弁権」の有無です。
通常の保証人であれば、主たる債務者の財産を差し押さえる(強制執行する)前に、保証人の財産に対して差し押さえが行われたときには、「まずは主たる保証人の財産から差し押さえられる財産を見つけてください」と反論することができます。
他方、連帯保証人の場合には、検索の抗弁権が認められていないので、主たる債務者が「差し押さえ可能な財産を持っていた場合」であっても、債権者は、連帯保証人の財産をいきなり差し押さえることができるのです。
③ 連帯保証人は、「借金全部」について返済義務を負う
保証人が複数人いるという場合には、保証人が返済義務を負うのは、「保証人の頭数で割った分」となります。たとえば、300万円の借金について、3人の保証人がいるケースであれば、保証人はそれぞれ100万円ずつ返済義務を負うことになります。
しかし、連帯保証人は何人いようと、それぞれが借金全額(上のケースでは300万円)について返済義務を負うことになります。
上で説明した通り、連帯保証人と保証人とでは、明らかに連帯保証人の方が債権者にとって都合の良い人的担保ということができます。
連帯保証人であれば、「どちらを先に」という順序や、「いくらまで請求できるのか」ということを気にすることなく、「債権者にとって回収しやすい人」に対して返済を求めればよいからです。
したがって、実際に人的担保を提供しなければならない場面のほとんどすべてのケースでは「連帯保証契約」が交わされています。
他方、法律に詳しくなければ、「連帯保証(人)」と「保証(人)」との区別をつけないまま「保証人」と言ってしまうことが少なくありません。
他人から「保証人になってもらいたい」と言われたときには、「連帯保証人になってもらいたい」と言われているのだと理解しておく必要があるでしょう。
連帯保証人と(通常の)保証人との違いを確認したところで、連帯保証人が負う責任について、具体的なケースなども引き合いに出しながら説明しようと思います。
「1」(1)①~③で説明したことをふまえると、連帯保証人は、「自分が借金をした場合とほぼ同等」の責任を負わなければならないということになります。
その意味では、「主たる債務者には資力があるから大丈夫」と安心してしまうことはとても危険です。
連帯保証人にとっては、主たる債務者の資力は、自分の返済義務を軽減する根拠とはならないからです。
連帯保証人になってほしいと頼まれたときには、「自分自身で連帯保証する借金を返せるか」という観点から慎重に検討すべきです。
「連帯保証人になったために、他人の財産を背負わされてしまった」ということは、テレビや映画・マンガの世界だけの話ではありません。
保証債務・連帯保証債務は、主たる債務と運命を共にするのが原則です。
つまり、主たる債務者が借金を完済したことで主たる債務それ自体が消滅したときには、「当然に保証債務も消滅する」ことになります。
このことを法律用語では「保証債務の付従性(ふじゅうせい)」といいます。
以下では、具体的ないくつかのケースを例に保証債務の付従性について、もう少し詳しく説明していきます。
主たる債務者が亡くなった場合でも、借金(債務)は消滅しません。債務も相続の対象となるからです。
相続財産がマイナスという場合に、相続人が主たる債務も含めて相続放棄をした場合であっても、連帯保証人の責任がなくなるわけではありません。相続放棄があった場合でも、主たる債務が消滅するわけではないからです。
同様に、連帯保証人となっている人が死亡したときには、連帯保証債務も相続の対象となります。「自分が死亡すれば連帯保証人ではなくなる」と勘違いしている人は少なくないようなので注意しましょう。
債務整理をすると、借金の返済義務が減免されます。たとえば、自己破産をして免責を得られれば、破産手続き開始の時点で抱えている負債の返済義務がすべてなくなります。
主たる債務者の返済義務がなくなるのですから、「連帯保証人の返済義務も一緒に消滅する」と考えてしまいがちですが、実はそうではありません。
主債務者の債務整理による借金の減免の効果は、連帯保証債務に一切の影響を与えないと民法440条・458条が定めているからです。
むしろ、それとは逆に、主たる債務者が債務整理をしたときには、連帯保証人が債権者から連帯保証債務の支払いを請求されることになります。
主たる債務者が債務整理をすれば「借金を完済出来ないこと」が確定的になってしまうからです。
借金の返済義務は、消滅時効で消滅させることもできます。
銀行や消費者金融などからの借金は、債権者が5年間権利行使しなかったとき(消滅時効の完成後)に、債務者が時効を援用することで法律上の返済義務を消滅させることができます。
① 主たる債務者が消滅時効によって借金を帳消しした場合
主たる債務者が消滅時効によって返済義務を消滅させたときには、連帯保証人の義務も「保証債務の付従性」によってあわせて消滅します。
とはいえ、実際には、「消滅時効が完成する」ことはまれといえます。
金融機関が債権者であるときには、延滞された借金を5年以上も何もせずに放置することはあまりないからです。
5年が経過する前に、民事訴訟、支払い督促を申し立てられれば、それまでの時効は中断し、再度の時効完成までにはさらに10年必要になります。
これだけの長期間、借金の返済から逃げるための生活を続けるというのは、あまりにも非現実的といえるでしょう。
② 連帯保証人固有の消滅時効
連帯保証人には、主たる債務者の消滅時効とは別に、連帯保証人固有に成立する消滅時効を援用することもできます。
しかし、この場合には、主たる債務者に対して時効中断が発生した場合には、連帯保証人自身には時効中断事由が発生していなくても、消滅時効が中断してしまうことに注意が必要です。
つまり、消滅時効についても、主債務と連帯保証債務は、一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係になるのが原則です。
ただし、連帯保証人が債務承認をした場合についてだけは、主債務の時効中断は発生しないとされています(この場合は、主債務と連帯保証債務は、それぞれ別に時効期間をカウントすることになります)。
連帯保証人が、主たる債務者に代わって借金の返済をしたときには、その返済額について「求償権」を行使することができます。
求償権とは、簡単にいえば、「肩代わりした分を返してもらえる権利」のことです。
つまり、連帯保証人が、主たる債務者に代わって、債権者に300万円返済したという場合には、この300万円を主たる債務者から返してもらえるということです。
とはいえ、連帯保証人が借金を肩代わりしなければならない状況で、主たる債務者に求償権を行使しても「すぐにお金が返ってくる」ということは、あまり期待できない場合の方が多いでしょう。
「求償権があるから大丈夫」と考えてしまうのは、とても危険です。
連帯保証人は、「1」で説明したように検索・催告の抗弁権がないので、「債権者から支払いを求められたら応じる義務」があります。
特に、主たる債務者と同居していないような場合には、連帯保証人の予期しないタイミングで支払いを督促されるというケースも少なくありません。
主たる債務者が期限の利益(分割返済できる契約上の権利)を喪失しているときには、多額の借金の一括返済を求められることだってあります。
たとえば「残っている借金1,000万円全額を一括返済せよ」と債権者に請求されたような場合には、応じることができる人の方が少ないでしょう。
債権者からの支払いに応じられないときには、できるだけ早くに弁護士に相談すべきでしょう。
支払いに応じられない状態が続けば、債権者から民事訴訟などを起こされてしまうこともあり得るからです。
連帯保証人には催告の抗弁権がないので、主たる債務者に対して訴訟を起こす前に連帯保証人に対して訴訟を起こすことも可能ということを忘れてはいけません。
さらに面倒な事態になってしまう前に、弁護士に相談し、最善の対処を講じるべきです。
借金の連帯保証人についてよくあるトラブルとして、次の2つの場合について解説します。
連帯保証人となるには、債権者との契約が必要です。
といったように、本人の知らないところでなされた(本人の意思とは異なる)連帯保証契約は、原則としては効力がありません。
しかし、主たる債務者などに「代理権を与えたような外観がある」ときには、本人の知らないところでなされた連帯保証契約の効力を否定できない場合があります。
たとえば、
といった場合には、表見代理が適用されるので、「わたしは連帯保証人ではない」と債権者に抗弁することができない可能性があります。
連帯保証の契約は、通常は、「連帯保証をしたときの借金のみ」が対象となります。
たとえば、3,000万円の住宅ローンの連帯保証人になったというときには、3,000万円(から返済分を差し引いた残金)についてのみ、連帯保証人は責任を負います。
したがって、主たる債務者が同じ債権者からさらに借金をしてしまったという場合であっても、連帯保証人が責任を負う借金の額が増えるわけではありません。
しかし、連帯保証の内容が「根保証(継続保証)」であったときには、事情が変わります。
根保証の場合の連帯保証人は、「契約時に設定された『極度(限度)額』」までの責任を負わなければならないからです。
つまり、契約時に交付された金額が200万円だったとしても、主債務の契約で設定された極度額が1,000万円の場合には、連帯保証人は1,000万円までの借金残額について責任を負うことになるということです。
根保証契約は、事業用融資に連帯保証人を立てる場合に用いられることが多いので、「会社の運転資金の融資を受けるための連帯保証人」を頼まれた場合には、「100万円の借金だと思ったから連帯保証人になったのに」ということにならないように、契約の内容をしっかり確認しておきましょう。
他人の借金の連帯保証人になることは、「自分で借金した」のとほぼ同じことです。
他人の借金の連帯保証人になってしまったために、多額の借金の一括返済を求められ、自己破産に追い込まれてしまうというケースは、映画やマンガだけでなく、実際にも少なくありません。
最近では、奨学金を返せなくなったことで、奨学生(子)とその連帯保証人(親)が同時に自己破産するというケースも多く見聞きします。
連帯保証について、わからないこと、困ったことが生じたときには、できるだけ早く弁護士に相談されるとよいでしょう。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。