債務整理 弁護士コラム
住宅ローンを組む場合や奨学金を借りる場合のように、多額の借金をするときには「担保」を求められることがあります。
しかし、法律的に担保がどのようなものであるか、担保のある借金のメリット・デメリットは何かと尋ねられると詳しくはわからないという人も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は借金と担保について、最低限知っておくべき重要ポイントについてご紹介します。
借金の担保に関心がある人は参考にしてみてください。
この記事がお役に立てば幸いです。
担保とは、債務者(借りた人)自身が借金の返済をできなくなってしまったときに「代わりに返済する手段(返済のための引き当てとなるもの)」として、債務者が債権者(貸した人)に差し入れる物や人のことをいいます。
担保権とは、担保を差し入れてもらった債権者の「担保に対する権利」のことを差します。
基本的には、「担保から最優先で被担保債権を実現してもらう(借金を返済してもらえる)権利」のことをいいます。
担保のことを「借金のカタ」と表現することもありますが、
などが担保としてはもっとも一般的な例といえます。
実際の取引のなかでは、法律で明文化された担保(権)だけでなく、商慣習の中で認められた担保までさまざまな担保権が存在しています。
ここでは一般の人にとって特に身近な担保について、基本的な事項を確認していきます。
債権者に差し入れをする担保には、大きく分けて「物的担保」と「人的担保」に分けることができます。
それぞれ文字通り、担保(引き当て財産)として提供された「財物」のことを物的担保といい、担保として提供された「人」を人的担保といいます。
物的担保の典型例は、住宅ローンの際の抵当不動産、人的担保の典型例は、保証人・連帯保証人です。
民法の条文上認められている担保として、抵当権・質権・先取特権・留置権の4つがあり、商慣習上の担保権としては譲渡担保がよく知られています。
①抵当権(民法369条)
抵当権の典型例は、住宅ローンを組んだ場合の担保権設定です。
抵当権は、簡単にいえば、「担保として差し入れてもらった『不動産』から優先弁済を受ける権利」のことをいいます。
抵当権の特徴をまとめておけば次のようになります。
抵当権の大きな特徴は担保物の直接の引き渡し(占有移転)を行わない点に特徴があります。
住宅ローンを組んで抵当権を設定した場合でも、その抵当不動産に居住し続けられることをイメージすればわかりやすいでしょう。
また、物上代位が認められているので、担保物が滅失してしまった場合でも債権化されているときには、抵当権者はその債権から優先弁済を受けることができます。
さらに、不可分性が認められるので債務者が債務(住宅ローン)の一部を返済していたという場合であっても、抵当権者は担保物すべてに対して権利実行(競売)をすることができます。
このことからかなり強力な権利だということが言えるでしょう。
②質権(民法342条)
質権は、担保物の「占有を債権者に引き渡す」方法で差し入れる場合の担保権です。
債務者が債務を返済できないときには、「担保物(質草)の所有権を失う」ことで返済をすることになります。
かつては、全国各地に質屋があったように、質権はもっとも身近な担保権でした。
たとえば、江戸時代などの生活を語った落語などにも、「大工のはっちゃんが飲み代のために、大工道具を質に入れて、質流れ(期日前に借金を返さないために所有権を失うこと)にあってしまう」というようなシーンがよくでてきます。
とはいえ、近年では質屋の多くはリサイクルショップに取って代わられています。
③譲渡担保
譲渡担保は、法律の条文では明記されていないのですが、慣習上認められている担保権です。
自動車をローンで購入した時の「所有権留保」をイメージすれば、譲渡担保の大まかな枠組みは理解できると思います。
たとえば、自動車のような「動産」を担保に入れようとすれば、法律上の担保権では質権を設定するほかありません。
しかし、質権の設定は物件の引き渡し(占有移転)が要件となるので、「完済しなければ自動車は使えない」ということになり、債務者にとって現実的ではありません。
また、不動産を担保に入れる場合でも、抵当権を設定すれば、権利実行の負担が重く(裁判所の手続きを経由しなければならなくなる)担保権者にとってメリットが小さくなる場合も考えられます。
そこで、その中間的な担保として、金融取引の慣習として認められてきたのが譲渡担保です。
これは、「機動性の高い担保」として、中小企業への融資に伴って仕掛品・在庫商品などに担保を設定する場合などに用いられることが多いです(集合動産譲渡担保)。
④留置権・先取特権
①~③の担保権は当事者間の契約によって生じる担保権なので、「約定担保(権)」とよばれることがあります。
これに対して、留置権(りゅうちけん)・先取特権(さきどりとっけん)は、契約に基づかずに発生する担保権です(法定担保権といいます)。
これらは、「借金の担保」とはいえないものですが、比較の意味で重要なポイントだけ簡単に解説しておきます。
留置権の典型は、請負代金が発生する場合です。
たとえば、携帯・スマホの修理を依頼した場合には、修理業者との間には「請負契約」が成立するとされています。
この場合に、修理業者が「代金を支払ってくれるまで携帯・スマホを引き渡さない」といえる権利のことを留置権といいます。
要するに、この場合の担保物は、修理の対象となる携帯・スマホです。
この「権利が実現するまで担保物を債権者の手元に留め置ける権利」を留置権というわけです。
請負代金(契約)が発生する他の例としては、作家・ライターの原稿作成、土木工事(家の新築工事やリフォームなど)が挙げられます。
先取特権は、特定の契約関係が生じたときに発生する優先弁済権のことをいいます。
一般的な先取特権は、包括的な優先弁済権が発生する点で、「担保物から優先弁済を受けられる」にすぎない他の担保権よりも強力な権利といえます。
そのため、先取特権は、共益費用や雇用関係に基づく債権の場合など、ごく限られたケースでしか認められないことになっています。
人的担保には、保証人と連帯保証人とがあります。
保証人と連帯保証人は、主たる債務者(実際に借金した人)が返済できなくなったときに代わりに返済する人という意味では、共通しています。
そのため「どちらもあまり違いのない制度」と思い込んでいる人も少なくないようですが、実際には、保証人と連帯保証人とでは負うべき責任の程度は全く違います。
連帯保証人は、保証人に認められている、次の3つの主張をすることが認められないため、かなり重い責任を負わされることになるからです。
以上を簡単にまとめれば、連帯保証人というのは、「主たる債務者と全く同じ責任を負わされる」とても負担の大きい人的担保ということです。
保証人しかいない場合には、債権者はまず主たる債務者に対して訴訟や差し押さえなどの措置を講じてからでないと保証人に返済を求めることはできません。
しかし、連帯保証人がいる場合には、「主たる債務者と連帯保証人のうちの回収しやすい方」だけを相手に手続きを進めれば良いということになります。
よって、債権者にとっては連帯保証人の方が好ましい人的担保といえるわけです。
そこで、実際に契約の場面で用いられる人的担保のほとんどすべては「連帯保証人」です。
一般の人が「保証人になってほしい」と言うような文脈でも、実際に求められているのは「連帯保証人」ですから注意しておきましょう。
最後に、借金の際に債務者が担保を差し入れる(債権者が担保の提供を受ける)メリット、デメリットについてまとめておきましょう。
借金する際に担保を差し入れてもらうことは、債権者(貸主)にとっては大きなメリットです。
融資額に見合った価値のある担保が提供されれば、「貸し倒れ」となるリスクがほとんどなくなるからです。
このことは、債務者にとっても「適用利率が下がる」、「審査にとおりやすくなる」というメリットとして跳ね返ってきます。
担保が提供されていれば、貸し倒れのリスクが下がるので、貸主としては高いリターン(利息)を要求する必要がなくなるからです。
なお、同じ担保であっても、人的担保・物的担保では、物的担保の方が債権者となる金融機関の評価が高くなるのが一般的です。
物的担保は、担保価値を正しく価値査定できるので、「連帯保証人の自己破産」のような担保からの回収が不能になるという状況をほぼ確実に回避できるからです。
これとは逆に消費者金融・銀行のカードローン(カードキャッシング)は、「無担保の借金」の典型です。
カードローンの利息が高いのは、無担保であるために貸し倒れのリスクを上乗せして利息が設定されるからです。
担保を提供して借金をするときの最大のデメリットは、「返済できなくなったとき」に生じます。
物的担保を提供しているときに借金の返済を怠れば、担保物を強制処分(売却)されてしまいます。
住宅ローンを滞納すると、債権者(抵当権者)によって差し押さえの上競売にかけられてしまうことが典型例です。
また、人的担保(保証人・連帯保証人)を立てているときには、これらの人に債権者から支払いの請求がいくので大きな迷惑をかけてしまいます。
さらに、もっとも重要なデメリットとして覚えておかなければならないのは、担保を提供して借金をした場合には、(住宅ローン付き個人再生を利用した場合のごく一部の例外を除いては)
自己破産などの「債務整理をしても担保権の優先弁済権は消滅しない」ということです。
つまり、主たる債務者が自己破産をして、借金それ自体の返済義務は免除してもらえたとしても、
担保物の処分(担保権実行)や連帯保証人(保証人)への請求を止めることはできないということです。
担保は、常に貸し倒れのリスクのある金融取引の場面では、とても重要な役割を果たしています。
担保があれば、融資を有利な条件で受けることができます。
他方、担保を提供したときには、返済できなくなったときのリスクも小さくありません。
担保を提供する借金を申し込むときには、わからないことをそのままにせずに、「担保を提供するというのはどういうことなのか」ということをきちんと理解した上で契約すべきでしょう。
特に、人的担保(保証人・連帯保証人)を設定する場合には「安易にお願いするケース」も少なくないと思いますが、「万が一の場合」をきちんと想定した上で、好意で連帯保証人を引き受けてくれた人に迷惑をかけないようにしていきましょう。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。