債務整理 弁護士コラム
最近では脱サラして自分で企業することを考える人が増えているようです。
起業するためには一定の資金を工面しなければなりません。
その資金がこれまでの蓄えや今の勤め先退職金などの自己資金では足りないときには、金融機関などから借金をして起業資金を調達しようと考える人もいるかもしれません。
しかし借金をして起業することには「自己資金がなくても起業できる」というメリットだけでなく、さまざまなリスクがあります。
そこで今回は
・起業の際に借金することのメリット・デメリット
・起業後に借金が返済できなくなったときの解決方法
・借金が返すために注意すべきこと
についてまとめました。
脱サラして起業したいけど、自己資金がないから借金することを考えている方は参考にしてみてください。
この記事がお役に立てば幸いです。
起業するには、一定の資金が必要となります。
起業する際には、開業に必要な準備資金に加え、事業が安定して利益を出せるようになるまでの運転資金(+その間の生活費)を用意しておく必要があります。
これらの資金を調達することには、次のようなメリットがあるといえます。
開業に必要な資金が多額な場合には、自分で蓄えることにも時間がかかります。
たとえば、数百万円の起業資金をいまの勤務先からの給料(+アルバイト・副業の収入)だけで蓄えようと思えば、数年間の時間が必要となる場合が多いでしょう。
起業資金を借金で工面できれば、この時間を丸々節約することができます。
また、ビジネスには「そのとき」でないと得ることのできないチャンスもあります。
開業するのに理想的な条件の物件に空きが出た、狙っているビジネスにブームの兆しが見えたといったときには、それから自己資金をため込んでいては好機を逃してしまうこともあるでしょう。
「金融機関から借金できる」ことは、信用のひとつともいえます。
金融機関は、返済できる可能性のない企業・事業主に融資することは考えられないからです。
実際に、一度借り入れた資金をきちんと完済すると、その金融機関との「優良な取引実績」となり以後の取引に有利に働きます。
事業を安全に進めていくためには、「手元資金」に余裕があることはとても重要です。
たとえば、開業するために「手元資金をすべて使ってしまった」というのでは、その後の事業に支障が出ることの方が多いでしょう。
手元資金がなければ、仕入れや人件費、家賃・光熱費といったランニングコストの支払いにも窮してしまう可能性が高くなるからです。
また、たとえそれが借金であっても「預金口座に一定額の蓄えがあるという外観」は、取引先などに対するひとつの信用となることもあります。
借金をして起業することは、メリットばかりではありません。
「借金をする」ということによるリスクも当然生じます。
当然のことですが、借金は返済しなければなりません。
ビジネスは、最初から順調に利益を上げるとは限りませんが、毎月の返済日だけは利益の有無にかかわらず毎月必ずやってきます。
特に、金融機関から資金を調達した場合には、元金だけでなく利息の支払いもしなければなりません。
事業用の借り入れは、通常のカードローンよりも利率は低くなります。
しかし、その分元金が大きくなるため、利息の負担も金額ベースに直せば軽くないケースが多いです。
借金は返済しなければならないという点にも関係しますが、毎月の元金返済・利息支払いの負担が事業の損益分岐点を引き上げることになります。
たとえば無借金経営であれば月50万円の売り上げでも利益が出ているケースでも、毎月の返済額が10万円であれば、60万円の売り上げがなければ利益は出ないのです。
事業用の借り入れは、金額も大きく返済期間が長くなることも多いです。
そのため借金の返済が足かせとなって「十分な利益が出ない」状況が長く続いてしまう可能性も否定できません。
借金を抱えて事業を始めたときには、「早く借金を完済したい」と誰もが考えます。
そのため、利益の高い事業を行おうとリスクの高い事業に手を出してしまうこともあるかもしれません。
また、「手持ち資金にゆとりがあるから」という理由で、すぐに必要ではない設備投資を行うなどの、必ずしも効率的ではない経営をしてしまう可能性もあるでしょう。
ビジネスは必ずうまくいくとは限りません。
夢も希望ももって始めた事業も、何かしらの事業で失敗してしまうことがあります。
また、事業自体は赤字でなくても、高利での借り入れが原因となり資金がショートしてしまうということもあるかもしれません。
起業資金の借り入れは、数百万円を超えるかなりの高額な借金になる場合も少なくありません。
「多額の借金を返せない」というケースでは、とにかく「慎重」かつ「迅速」な対応が事態をさらに悪化させないために重要です。
実際のケースでは、「今月の返済が間に合わない」からと、他の金融機関から追加の借り入れをして当面の返済資金に充てる自転車操業が行われることも少なくありません。
しかし、ほとんどの自転車操業はとても危険な対処方法であることを忘れるべきではありません。
たとえば、公庫(国金)からの低利の借り入れを返済するために、民間の金融機関から高利の借り入れをしてしまえば最終的な返済負担は余計に重くなってしまいます。
自転車操業が「経営破綻」の可能性を高める危険な行為であることは絶対に忘れるべきではありません。
借金が返せなくなった場合の解決方法には次の3つの方法があります。
①任意整理
任意整理とは、借金の返済が難しくなったときに、その事情を債権者に直接相談し、
「毎月の返済を一定期間猶予してもらう」
「毎月の返済額を減額してもらう(返済期間を延ばしてもらう)」
「利息の支払いを免除してもらう」
といった対応をお願いすることが考えられます。
そんな都合の良いお願いなんて聞いてもらえるはずがないと思い込んでいる人も多いかもしれません。
しかし、金融機関側に「事業を支援しよう」という意図があれば、返済猶予などに応じてくれることも珍しいことではありません。
また自分では債権者と交渉できないというときには、弁護士に「任意整理」として、返済条件の見直しについて、債権者との交渉を依頼することも可能です。
債権者との私的な話し合いで借金の返済を見直すことができれば、事業に与える悪影響も最小限に食い止めることができるでしょう。
②民事再生・個人再生なら有利子負債を大幅に削減できることも
民事再生・個人再生は、裁判所に認可された返済計画にしたがって借金の一部を返済することで、残額の返済を免除してもらえる手続きです。
借金返済を免除してもらえる程度は、抱えている借金の額や、利用する手続き(個人再生(個人事業主)なのか民事再生(法人形態)なのか)によっても異なります。
しかし、借金が7割~9割の減額を認めてもらえるケースもないわけではありません。
「事業は順調だが、有利子負債の返済負担が重すぎて事業を継続できない」というようなケースでは、借金返済の負担が軽くなることで安定経営を取り戻せる場合もあるでしょう。
また個人再生(民事再生)を利用した場合には、財産の差し押さえも回避することができます。
だから営業免許(許認可)にも悪影響を与えることはありません。
③自己破産すれば借金の全額が免除に
自己破産は、もっともよく知られた借金の解決方法です。
とはいえ自己破産を選択するのは、他の方法では借金を解決することができない最終的な場合となります。
自己破産をすると借金全額の返済が免除されることと引き替えに、「財産の差し押さえ」、「法人の解散」といった大きなデメリットが生じてしまうからです。
起業した人の中には、債務整理=事業廃止というイメージから「債務整理は絶対に避けたい」と考えている人がいるかもしれません。
しかし、実際の債務整理は、「事業を継続させる」ために行われるものも少なくありません。
たとえば、中小企業の民事再生や私的整理は、事業継続のために負債を圧縮する目的で利用されます。
また、自己破産をしていったん事業を廃止した場合であっても、一生再チャレンジできないということにはなりません。
経営者が自己破産をした場合でも、再度法人の役員になる(再度会社を興す)こともできます。
むしろ返済不能な負債額が多くなり過ぎたときには、1日も早く再チャレンジするためにも早期の自己破産に踏み切った方がよい場合もあるでしょう。
起業の際に借金をしたことで苦労してしまうケースには、いくつかの要素が共通していることが少なくありません。
どうしても借金をして起業をしなければならないという場合には、これから解説する4つのポイントに留意しましょう。
借金をして起業をするということには必ずリスクがあります。
したがって、リスクに備えられるだけの準備をきちんとした上で、借り入れを行うべきです。
たとえば飲食店をはじめようと考えている人が「立地の良い物件に空きが出た」というだけで、すぐに飛びついてお店を始めることはとても危険です。
たしかに飲食店にとって立地はとても重要です。
しかし、その立地と自分が提供するメニュー・座席数、ピーク時の座席回転数、配置する人員数などに基づいた売上額との比較検討を行わないと、その物件が本当に適している物件であるかどうかは判断できません。
開業のタイミングを逃さないことは大変ですが、準備が整わないうちに事業をはじめることはただのギャンブルに過ぎません。
上で述べた点にも共通しますが、起業に失敗するケースには、「収支見通しが曖昧」というケースが少なくありません。
たとえば、顧客のニーズ調査が不十分なままに事業を始めてしまう場合が典型例といえます。
起業を考える人のなかには、「わたしの好きなことで生計を立てたい」と考えている人も多く、「それが本当に(採算の合う)ビジネスになるのか」という視点での冷静な分析に欠けているケースが多いのです。
店舗コスト・人件費の見積もりが甘いまま飲食店をはじめた場合には、このような状況になることもあります。
最近は、「お客さんはいるのに、必要な従業員が確保できない」というケースも増えていますから、「継続可能な収支見通し」を丁寧に立てることが重要です。
起業資金として借り入れるときには、「必要最低限」の金額にとどめておくことが重要です。
新規事業の収益は、ふたを開けてみないとどのような結果になるかはわかりません。
どんなに精緻な事業計画・収支見通しを立ててみても予想どおりに行かなかったら? ということも念頭においておかねばなりません。
必要以上の借り入れをすれば、返済の負担が重くなり、「すぐに資金ショート」ということにもなりかねません。
どのような事業であれ、「失敗」のリスクが必ずあります。
特に、「初めての起業」であれば失敗してしまう可能性は大手民間企業が新規事業を興す場合に比べて高いことも否定できません。
したがって、「事業に行き詰まったときには傷が広がらないうちに撤退する勇気」をもつことはとても大切です。
せっかく始めた事業だから「もう少し頑張れば」と考えたくなる気持ちも理解できます。
しかし、事業がうまくいかないときこそ、より冷静に今後の事業継続の可能性をさまざまな角度から分析すべきです。
早期に撤退できれば撤退方法の選択も広がりますし、早期再チャレンジの可能性も高くなります。
起業には「自分の夢」をかけている人も多いと思います。
それ故に、起業に失敗したときには「あきらめきれない」、「現実を受け入れられない」といったことが原因で対応が遅くなりがちです。
しかし、事業の失敗は、早期に対応することで損失を最小限に食い止めることができます。
債務整理を上手に利用することで、行き詰まっていた事業が生き返る事例も少なくありません。
起業したけどうまくいかず、借金の返済が苦しいというときには、できるだけ早いうちに弁護士などの専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。
冷静、客観的に現在の状況を把握するためにも第三者の意見はとても重要です。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。