債務整理 弁護士コラム
「生活が苦しいから、生活保護を受給したいけど借金がある……」と悩んでいませんか?
結論から申し上げますと、借金があっても生活保護申請をすることは可能です。
今回は借金があっても生活保護申請をすることができる理由をご紹介していきたいと思います。また併せて、生活保護申請に係るさまざまな問題への対処方法もご説明していきたいと思います。
政府が公表した「無担保無保証借入残高がある人数及び貸金業利用者の1人当たり残高金額の推移」をみると、平成25年から1人当たりの借金の残高金額は横ばいで推移しています。また、消費者金融からの借入残高がある人数は、減少傾向が続いています。
特筆すべきは5件以上の消費者金融からの借入残高がある人が激減傾向にあるということです。このことから、多重債務に関する政府の施策は、一定の効果を上げていることがわかります。
また同調査結果から借金問題に悩む人の年収は、年収300万円以下が圧倒的多数であることもわかります。
このことから、借金問題は低収入が原因で借金を抱える人が多いことがわかります。
参考:法務省 「多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向」(PDF:1.24MB)
ここでは借金を抱えている人が生活保護を受給することができる理由をご説明していきます。
下記は厚生労働省が公表している生活保護の受給要件です。これを見ると、生活保護の受給要件に「借金がないこと」は存在しないことがわかります。
●保護の要件等
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
●資産の活用とは
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください。
●能力の活用とは
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
●あらゆるものの活用とは
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
●扶養義務者の扶養とは
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。
そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。
参考:厚生労働省WEBサイト
言い換えれば、借金があっても生活保護を受給することができるということになります。
生活保護の受給要件は以下になります。
ですから、生活保護は借金があっても、上記の条件に該当すれば当然に受給できるということになります。
元来、生活保護は日本国憲法の第25条を実現するために制定された制度です。
日本国憲法第25条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
「すべて国民は」との文言があることからも、生活保護は、受給要件を満たす限り、全ての国民に無差別平等に適用される制度であることがわかります。
生活保護は日本国憲法第25条の「最低限度の生活を営む権利」を具現化した制度です。
よって、保護費を借金の返済に充てることは、生活保護制度の趣旨に反するため、原則認められていません。
生活保護を受けている最中に保護費を借金の返済にあてた場合、後に収入の届け出義務を怠ったとして保護費の返還を求められる可能性があるので注意が必要です。
生活保護の制度趣旨は国民に最低限度の生活を保障することであり、借金苦を解消するための制度ではありません。
まず、生活費が足りない理由が借金問題から派生するものなのか、収入が低いことからきているのかをしっかりと見極めることが大事です。
住宅ローン・自動車ローン等に保護費を充当するのは原則的に許されていません。しかし、住宅ローンの場合は例外的に認められるケースもあります。
住宅ローン・自動車ローン等に保護費を充当することは、「国民に最低限度の生活を保障する」との生活保護の制度趣旨に反するため、原則申請却下されてしまいます。「借金の支払いをすることができる=生活に余裕がある」とみなされてしまうからです。ですから、生活保護を受給するためには不動産・車等を処分した上で申請しなければいけません。
例外事例として、住宅ローンの場合以下の条件に当てはまる場合は生活保護が認められるケースもあります。
ただし上記の条件をすべてクリアしたとしても、必ず申請が認められるわけではありません。詳しくはケースワーカーへ相談しましょう。
上記は一般的な借金をしている状態での話です。特別な事情がある場合は個別具体的にケースワーカーへ相談しましょう。
ケースワーカーへ相談する際に「相談しても生活保護の受給は認められないかもしれない…」と考えて、事実と異なることを申請してはいけません。後々、不正受給であると判断され、罰則を受けることがあるからです。
誠実にありのままの状況を、申請しましょう。
生活保護法第85条では「不実の申請その他不正な手段により保護を受け」た場合には、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」との規定があります。
生活保護法第85条
不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。
偽りその他不正な手段により就労自立給付金若しくは進学準備給付金の支給を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法に正条があるときは、刑法による。
ですから、不正受給が発覚した場合、最悪刑務所に入れられる可能性もあるので、不正受給をしてはいけません。
内容 | 処分 | 不正受給分の処理 |
---|---|---|
過失による不正受給 | 厳重注意 | 不正受給分返納 |
故意による不正受給 | 保護廃止の可能性 | 不正受給分の140%を返納 |
悪質な故意による不正受給 | 保護廃止 | 不正受給分の140%を返納 |
ケースワーカー等の対応が悪く、生活保護の受給に関する相談をまともに聞いてもらえないといった場合、弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することが問題の解決への早道になります。
「借金がある人は生活保護を使えません」といって申請を断ることは、上記の生活保護法第七条で明記された「申請保護」にもとづく申請権を侵害する違法行為です。
生活保護法第7条
保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
また日本国憲法第25条で認められている「最低限度の生活を営む権利」からも到底認めることができない行為といえます。
生活保護申請に関する問題を弁護士に相談した場合、弁護士が生活保護よりも他の手段で問題を解決したほうがよいと判断すれば、債務整理することを提案してもらえます。
問題の根本が生活保護を受けられないことではなく、借金があり生活がままならないのであれば、まず借金を減免することで生活を立て直すことができるかも検討すべきだからです。
債務整理も任意整理・特定調停・個人再生・自己破産と4種類あります。
弁護士に相談した場合、状況に応じて4つの種類から最適な債務整理方法を選択してもらうことができます。
ここで「弁護士なんかに相談したら無理に債務整理へもっていかれるのでは…」と心配する方もいるかもしれません。近年は法テラスや自治体などで法律に関する無料相談を行っています。この無料相談を活用して、あなたに最良な方法を提案する弁護士を選べばよいのです。
「弁護士に相談したいけど、費用が心配…」という方も多いと思います。弁護士費用は国が設立した法テラスを利用することで負担を軽減することができます。
①法テラスとは
法テラスとは2006年4月に「総合法律支援法」に基づいて設立された日本司法支援センターの愛称です。
②法テラスでできること
法テラスでは、さまざまな法律問題に関する支援を行っています。その一環として「資力のない国民に対する民事法律扶助」も行っています。
具体的には法律相談を無料で行ってもらえます。また、「費用の立て替え」制度を活用すれば、月額5000円~1万円程度の分割で弁護士費用などを支払うことができます。
今回は借金があっても生活保護申請をすることができる理由や生活保護申請に係るさまざまな問題への対処方法をご紹介してきました。
基本的に借金問題と生活保護申請は分けて考えるべき問題です。「借金や生活苦の悩みに関する解決方法がわからない……」という方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士があなたの状況にあわせて最適な解決方法をご提案し、借金の苦しみを解決するサポートをいたします。
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結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
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しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。