債務整理 弁護士コラム
「借金を滞納してしまったから、借金取りが家や勤務先に押しかけてくるのではないか」「取り立てのために家に居座られたりしたらどうしよう」といったように、借金に関して不安に感じていることがある方もいるでしょう。
1998年から1999年にかけて、商工ローンの大手だった旧商工ファンドと日栄が「腎臓を売れ」「目玉を売ってでも借金返せ」と債務者に違法な取り立てを行い、大きな話題となったこともありました。
しかし、結論からいえば、借金取りに関して心配をする必要はありません。金融機関に対する規制は、当時よりもかなり厳しくなっているからです。
本コラムでは、借金取りが自宅や勤務先にやってきてしまう具体的なケースや、借金取りが自宅などにきてしまったときの対処方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
借金の返済に自信がない人にとっては、「返済を滞納したら借金取りが自宅や勤務先に押しかけてくるかも」という不安はとても大きいかもしれません。
しかし、基本的には、借金取りが自宅や勤務先にやってくるということはありません。
法律だけでなく、金融機関の社内ルールとしても、自宅や勤務先に訪問して取り立てを行える場合が厳しく制限されているからです。
また、そもそも「本当にお金がない」という人の自宅や勤務先に行ったところで、その場で返済してもらえるわけでもないのですから、費用対効果という観点でも、訪問による取り立ては、債権者にとってあまりにも効率が悪すぎます。
借金取りが自宅にやってくるのは、次の4つの場合に限られるといえます。
それぞれについて、詳しく解説していきます。
債務者が事前に「訪問での取り立て」に明確に同意している場合には、借金取りが自宅に出向くことそれ自体は問題ありません。
過去に、金融機関の債権管理部門に勤めている人から、「毎月滞納するけど、取りに来てと頼まれて集金に行くと、毎回きちんと払ってくる高齢者のお客さんがいた」という話を聞いたことがあります。
たしかに、振り込みに行くのが面倒ということもあるかもしれませんが、実際にはまれなケースといえるでしょう。
なお、提携契約書に「訪問での取り立てに同意する」ような条項が含まれていた場合でも、そのような契約書になっているだけで、訪問での取り立てが認められるというわけではありません。
訪問での取り立ては、法律で原則禁止(特別な事情があるとき以外はしてはいけない)となっている行為なので、契約締結時にその旨についてきちんとした説明を受けていない場合には、法律の規制に違反する契約条項は無効と考えることができるからです。
貸金業法という法律では、以下のとおり定められています。
貸金業法21条1項3号
債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること
ここでいう「正当な理由」とは、簡単にいえば、「訪問以外の方法では、借金返済の督促を行えない」ような場合と理解されています。
その典型的な例が、「債務者が債権者からの連絡に一切応じない」というケースです。
契約の際に届け出られた番号に電話をかけても全く出ない、届け出住所に郵便物を送っても何の反応もないという場合には、債務者の所在の確認も含めて、自宅に訪問してみる、もしくは勤務先に訪問してみるという手段をとることには、一定の理由があるといえるわけです。
なお、勤務先などと違い、自宅への訪問は貸金業法上は時間帯の制限(夜遅い時間は禁止)だけで、訪問自体は禁止されているわけではありません。ただ、勤務先などと同様に、自宅訪問以外の方法では督促を行えない状態になっていない限りは、家に来ることはないと理解してよいでしょう。
言い換えれば、今の「取り立てルール」を前提にすれば、債権者からの連絡を無視しなければ、自宅や勤務先に借金取りがやってくることはないということです。
借金取りに自宅・勤務先に押しかけられてもやむを得ないといえるもうひとつの場合は、債権者が何度も正しい方法で返済の督促をしているのに、全く返済されないという場合です。
たとえば、債権者から電話がきたときに、「○日までには延滞分を支払います」と返答するけれど、その約束が全く守らないようなケースをいいます。
実際には、滞納後の返済約束を1回破ったくらいで、借金取りが自宅や勤務先まで押しかけてくるということは(電話連絡に応じている限り)はないと思いますが、「できもしない約束をした(約束を破った)」という落ち度がある以上は、自宅などに訪問されてもやむを得ないといえるでしょう。
借金を取り立てる際の法令や行政指導などによる規制は、正規の金融機関(銀行・消費者金融・信販会社)に対してのみ、意味を成します。
いわゆるヤミ金は、正規の登録を受けていない違法営業の金融屋ですから、法令や行政を守って営業(取り立て)を行うはずがありません。
その意味では、ヤミ金から借金をしてしまったという場合には、テレビやドラマでみたような借金取りが自宅に押しかけてくることが起こりうる可能性があります。
しかし実際には、今のヤミ金は昔と違い、自宅まで押しかけて借金を取り立てることはあまりないといわれています。
その理由は次のとおりです。
以前のヤミ金業者は、実際に債務者と対面してお金を貸すような業者が多かったといえます。そのため、営業エリアも限られていましたから、債務者の家に行くこともそれほどの手間ではなかったのでしょう。
また、以前のヤミ金は、暴力を背景に顧客(債務者)を支配することが目的でしたので、回収できるかどうかは別としても、債務者の元に出向いて、自分の存在をアピールすることが重要だったといえます。
しかし、今のヤミ金は、テレビや漫画などで出てくるような強面なイメージではありません。
一般的にはあまり知られていませんが、ヤミ金自体がとても増えているので、古いタイプのヤミ金では商売にならないのです。
暴力を背景に商売をすれば、摘発・逮捕のリスクも高くなります。
その意味では、ヤミ金業者にとっても自宅や勤務先に押しかけるというのは、割に合わない回収方法といえるのです。
実際にも、最近のヤミ金は、利息の支払いに行き詰まった債務者に対して、違法行為である銀行口座の譲渡や、その他の犯罪行為(詐欺の出し子など)に協力することで残額の返済と相殺するよう、すすめてくることが多いといわれています。
とはいえ、ヤミ金はメンツ商売の要素があることは否定できません。
「自宅に来ない」と決めつけて、ヤミ金を挑発するような対応をすれば、何かしらの報復措置を受ける危険があります。
ヤミ金と関わってしまったときには、素人判断で対応せずに、弁護士や警察に早急に相談するべきでしょう。
「自宅に借金取りがやってきてしまった」ときの正しい対処方法についても確認しておきましょう。
借金の返済に行き詰まってしまったケースでは、さまざまな理由から、「債権者からの連絡を無視してしまう」、「実現不可能な返済の約束をしてしまう」、「ヤミ金に手を出してしまう」ということもあり得るからです。
借金取りが自宅にやってくるというと、「パンチパーマ」に「紫のスーツ」といった、見た目にも強面な雰囲気の人が押しかけてくるというイメージをもっている人もいるかもしれません。
しかし、実際には、そのような一般の人がみて「威圧的に感じる風貌」の借金取りがやってくることはありません。
一般の人であれば「こわい」と感じるような風貌で取り立てに行くことも、法令などで禁止されている行為だからです。
金融機関は取り立てについての法令などとは別に、社内ルールを設けているのが一般的ですが、「訪問時はグレーのスーツ着用」「ダブルのスーツは禁止」「パンチパーマ厳禁」といったようなルールを設けているところもあるようです。
借金取りが自宅などにやってくると「金返せ!」と大声をあげられたり、玄関先などに「借金返せ!」「ドロボー!」といった張り紙をされたりするかもしれないと心配している人もいるかもしれません。
たしかに、借金を取り扱った映画などではそのようなシーンが描かれることもあります。
しかし、これらの行為も法令などで明確に禁止されている行為です。
たとえば、金融庁が定めている金融機関の指導ガイドラインには、次のような行為は、貸金業法21条が定めている禁止行為に該当するおそれが大きいと記されています。
これを受けて、金融機関は、「訪問取り立ては○名以内で対応」というような独自ルールを定めているところがほとんどです。
また、玄関先や債務者の住まいの壁などに張り紙をする行為、近隣にビラをまき散らす行為が禁止されていることは、いうまでもありません(貸金業法21条1項5号)。
マンガなどでは、「今日は利息だけでも払ってもらわないと帰れません」などと、借金取りがその場に居座ってしまうシーンが描かれることがあります。
しかし、このような居座りも、貸金業法が次のように定めているように、明確に禁止された取り立て行為です。
貸金業法21条1項4号
債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
また、金融庁のガイドラインでは、1日のうちに何度も自宅を訪問することも規制されるべき行為として示しています。
記事の冒頭でも紹介したように、消費者金融が「サラ金」と呼ばれていた時代には、記事の冒頭でも紹介したような乱暴な取り立てが行われていたことは事実です。
過酷な取り立てに耐えきれなくなって、命を絶ってしまったという借金苦の人も少なくありません。貸金業法や金融庁ガイドラインにおける「取り立て規制」の強化は、このような事態を繰り返さないためのものであるといえます。
ドラマや映画などでは、「借金する際に生命保険に加入させられる(返せなくなったら死亡保険金で返済)」というシーンが描かれることもありますが、今の貸金業法では、生命保険金による弁済は禁止されている行為です。
近年では、消費者金融のほとんどが銀行傘下に入ったこともあり、以前に比べれば、金融機関のコンプライアンス(法令遵守)は徹底されているともいえますので、マンガなどで目にするような、借金取りがやってきてこわい思いをすることは、ほとんどないといえるでしょう。
万が一、問題のある取り立て行為にあってしまったときには、以下の方法が考えられます。
苦情を申し立てるときには、取り立て行為に問題があると客観的にわかるような証拠をきちんと用意しておいた方がよいでしょう。
万が一、借金取りがやってきたときには、スマホなどで会話を録音するなどの対処をとっておくとよいかもしれません。その際は、「録音します」と伝えておくだけでも、暴言を吐かれるなどのリスクが減る可能性があります。
ヤミ金は、そもそも違法な業者です。
やむを得ない事情があってヤミ金と関わってしまったときには、すぐにでもヤミ金問題に取り組んでいる弁護士に相談すべきです。
ヤミ金から借りた借金は、違法な利息だけでなく元金(実際に借り入れたお金)も返さなくてよい場合があります。
不必要な報復(逆恨み)を避けるためにも、身の危険を感じていなければ警察ではなく弁護士に相談した方がよい場合が多いです。実際にも、弁護士が上手に介入したことで、全く後腐れなくヤミ金との手を切れたというケースは少なくありません。
万が一、ヤミ金の借金取りが自宅にやってきてしまったというときには、かなり慎重に対応する必要があります。
上でも説明したように、今のヤミ金(090金融や「ソフトヤミ金」と名乗っている業者、いわゆる個人間売買の貸主)は、通常は自宅等に取り立てに来ることはないからです。
ヤミ金が自宅にやってきたときには、以下の対応を徹底しましょう。
「借金取りが家に来るかもしれない」と心配になるケースの大半は、「借金の返済」にも不安があるときです。
毎月の収入で借金を返すことが厳しくなってきたときには、早期に正しい対応をすることがとても大切です。
今月の支払いが足りないからと、さらに借金を重ねるようなことをすれば、気が付いたときには借金が2倍、3倍に膨らんでいたということも珍しくありません。
自力での返済が困難になった借金は、債務整理で解決するのがもっとも安全で確実です。
弁護士に債務整理を依頼すれば、金融機関は債務者との直接連絡を禁止されるので、借金取りが家に来るということもありません。
債務整理の相談は、最近ではほとんどの法律事務所が無料相談を実施しています。
借金の返済が苦しいというときには、「借金取りがやってくるかもしれない」という不安も含めて、相談してみるとよいでしょう。
映画や漫画などの影響から、「借金取りはこわい」と思い込んでしまっている人は少なくないかもしれません。しかし、今の金融機関は、消費者金融であっても乱暴な取り立てを行うことはありません。
万が一、「自宅(あるいは勤務先)に伺ってお話をしたい」と金融機関からいわれたとしたら、延滞の状況がかなり深刻(金融機関からみて悪質な延滞)な可能性が高いといえます。
返済に行き詰まった借金は、早く対処することで、できるだけ小さな負担で解決することが可能です。
「借金返済が苦しい」「もしかしたら借金取りが家に来るかもしれない」と感じたときには、できるだけ早く、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。知見のある弁護士が最善の解決策を検討し、借金のお悩みを解決するお手伝いをいたします。
また、ベリーベスト法律事務所での債務整理のご相談は、何度でも無料です。お気軽にお問い合わせください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
『旦那や家族には言っていないけど、実は私、借金を抱えてます…』
実は、主婦で借金を抱えている人は多く、それを言えずに悩んでいる方もたくさんいるのが現状です。もしかしたらこの記事をご覧のあなたも、そういった悩みをお持ちなのかもしれません。
一人で悩むことなく、主婦で借金をしている人は意外と多いということを知っていただいて、ぜひご自身の借金返済について前向きに考えていってください。この記事があなたにとって、ご参考になれば幸いです。
これから債務整理をしようと考えている方の中には、債務整理後にキャッシングできるのか、債務整理中にお金が足りなくなったときキャッシングを利用することは認められるのかと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、債務整理をしたことで、キャッシングなどを法律で禁止されるわけではありません。
しかし、債務整理をすると信用情報に事故情報が登録される(ブラックリスト入りする)ので、ほとんどの金融機関は、融資に応じてくれなくなります。
親子であっても、他人の借金を返済する義務は原則としてありません。肩代わりするかどうかは、基本的に子ども自身の判断で自由に決められます。
しかし親の借金でも子どもに返済義務が生じることがあり、借金を放置すると子どもが差し押さえを受けることにもなりかねません。
本コラムでは、親の借金が降りかかってきた場合に、子どもはどのように対処すればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。