債務整理 弁護士コラム

親の借金が気になる人が知っておくべき、親の借金を子どもが返さないといけない場合

2019年12月16日
  • 借金問題
  • 親の借金

親の借金が気になる人が知っておくべき、親の借金を子どもが返さないといけない場合

親が子どもの借金を代わりに支払うということは、比較的よく耳にすることですが、実際にはこれとは逆のこともよく問題となります。借金を取り扱った映画などでも、まだ若い子のところへ、「ここまで育ててもらった親が借金で苦しんでいるのだから子どもが助けるのは当然」と、借金の取り立てにやってくるシーンが描かれることもあります。

たしかに、子どもとしては、「家族だから助けなければならないのか?」と考えてしまうこともあるかもしれません。

そこで、この記事では、

•子は親の借金を代わりに返済しなければならないのか?
•親が借金を残して亡くなったときにはどうしたら良いのか?
•親の借金を調査する方法はないか?

といったことについて解説していきます。

1、親の借金を子どもが肩代わりしなければならない3つの場合

子が親の借金を「法律上の義務」として肩代わりしなければならない場面は、実はそんなに多くありません。

子が親の借金に対して、法律上の返済義務を負うのは、

  • 子が連帯保証人となっているとき
  • 借金してきたのは(そのお金を使ったのも)親だけど「名義人が子」であるとき
  • 親の借金を相続したとき


の3つの場合だけです。

  1. (1)親の借金の連帯保証人になっているとき

    連帯保証人は、主たる債務者と同等の義務を負うことになります。

    たとえば、子が親の組んだリフォームローンの連帯保証人になっている場合には、親が返済できなくなったときには、子が代わりに返済しなければなりません。
    これは、自分で連帯保証人になると決断したことですから、仕方のないことです。

  2. (2)親が「子の名義」で借金していたとき

    たとえば、親から頼まれて、借金するときに「名義を貸してしまった場合」には、実際に借りたお金を使ったのが親であっても、法律上は「子の借金」です。
    債権者が「それが親の借金であることを確実に知っていた」という場合であれば、事情が変わる可能性はありますが、実際にそのようなケースはレアでしょう。
    このケースも法律上は「自分の借金」なのですから、自分で返すほかありません。

    ところで、親と同居をしている場合などには、親が子の印鑑などを勝手に持ち出して、子の名義で借金をしてしまうこともあるかもしれません。
    この場合にも、基本的には「子」が返済義務を負うことになります。

    印鑑などの必要な書類を示して契約してくる(借金してくる)ことは、「表見代理」に該当する可能性がかなり高いからです。

    そもそも、印鑑(実印)などを「誰でも持ち出せるところ」で管理していることに子にも落ち度があり、そのために債権者が不利になる(子に返済を請求できない)ことは、公平とはいえないと民法は考えているからです。
    もっとも、親にもしまってあるところを内緒にしてあった実印を、親が探し出して(盗んだに等しい形で)黙って用いたという場合であれば、子に支払い義務は生じません(無権代理となる)。

    ただし、「表見代理ではなく無権代理であること」は、子が証明しないといけないことですし、無権代理であることを争おうとすれば、訴訟まで発展する可能性も高いでしょう。
    むしろ、日頃からそのようなトラブルが起きないように十分な注意をすることが大切です。

  3. (3)親が借金を残したまま死亡したとき

    親が残した財産は、子や配偶者といった相続人に相続されます。
    相続財産は、不動産や貯金といったプラスの財産だけでなく、借金のようなマイナスの財産も含まれます。

    特に、親が個人事業をしていて、事業負債があるときには、多額の借金を相続させられてしまうということもあるかもしれません。

2、多額の借金を抱えた親が死亡したときはどうしたらよい?

親(被相続人)が多額の借金を抱えて亡くなってしまったというときには、どうしたらよいのでしょうか。

  1. (1)相続の原則ルールは単純承認(全部相続)

    相続には、上でも簡単に触れたように、「すべての財産」を相続するのが基本的なルールです。これを専門的には、「(相続の)単純承認」といいます。
    要するに、「相続(財産)をそのまま認める」ということです。

    たとえば、「1000万円の価値のある不動産、200万円の貯金、2000万円の借金」のある被相続人(親)がなくなった場合に、単純承認すれば、不動産も貯金も相続できる代わりに、2000万円の借金も引き継がなければならない(返済義務を負う)ということになります。

  2. (2)親の借金を相続しない2つの方法

    親の借金を相続したくないときには、

    • 相続放棄
    • 限定承認


    の2つの方法があります。

    ①相続放棄
    相続放棄は、簡単にいえば「相続に一切関与しないこと」です。
    つまり、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことをいいます。

    ②限定承認
    限定承認は、簡単にいえば「相続財産を先に清算して残ったプラスの部分を相続する」という手続きです。

    たとえば、2000万円の価値のある不動産、貯金500万円、負債1000万円というケースであれば、相続財産から負債の1000万円を先に支払った上で、残った分だけを相続するということになります。
    ※積極資産(プラスの財産)よりも負債の方が多いときに限定承認するメリットはありません

    ③相続放棄と限定承認はどちらが良いの?
    親が抱えていた借金を相続したくないときには、「相続放棄」を選択するのが一般的です。 「多少でも財産を得られる限定承認の方が良いのでは?」と思う人も多いと思いますが、限定承認は、決して簡単な方法ではないからです。

    たとえば、相続人が複数いるときには、「全員で限定承認」しなければなりません。共同相続人の間で足並みがそろわない(借金を返済してでも家を相続すべきだという相続人がいるときなど)ことが原因で、限定承認を断念するケースは少なくありません。

    また、財産の清算が相続に先行することから、単純承認では発生しない税金が生じることもあります(単純承認した上で借金を返した方が有利ということ)。
    限定承認はとても便利な制度のように見えるのですが、そのハードルは決して低くないため、実際にもあまり用いられていません。

    たとえば、平成29年の司法統計(記事作成時点で最新の司法統計年報)では、相続放棄は20万件以上の申述があったのに対し、限定承認の申述は722件にすぎません。
    したがって、限定承認を考えるのは、「手間とコストをかけてでも絶対に手元に残したい財産がある」という場合のみと考えておいた方がよいでしょう。

  3. (3)相続放棄ができない場合もあることに注意

    相続放棄(限定承認)は、いつでもできるというものではありません。
    相続を放棄するかどうかは、相続開始(通常は親の死亡)から3か月以内(この期間を熟慮期間といいます)に決めなければならないからです(限定承認も同様です)。
    熟慮期間の間に相続放棄・限定承認の申述がない場合には、「単純承認した」と法律上みなされてしまいます。

    ただし、裁判所に申し立てることで、熟慮期間を延長してもらえる場合があります。3か月では決められないという事情があるときには、弁護士(もしくは家庭裁判所)に相談するとよいでしょう。
    また、熟慮期間が過ぎていなくても、「相続財産の処分」が行われたときにも、相続放棄(限定承認)はできなくなります。

    相続財産の処分の典型は、「遺産分割協議」です。相続財産から故人(亡くなった親)の借金を返済することも、相続財産の処分に該当します。

    他方で、葬儀代の支払いなどの「当然の行為」の支払いを相続財産から行うことは、相続財産の処分には該当しないといわれています。
    とはいえ、相続財産の処分に該当するかどうかの線引きは、法律の専門知識のない一般の人にとっては、とてもわかりづらいものです(借金を返す行為も一般の人からみれば「当然の行為」といえるからです)。

    相続放棄(限定承認)する可能性が少しであるときには、「相続財産には手を付けず」に弁護士などに相談することを強くおすすめします。

3、親の借金を債権者から取り立てられることはあるの?

借金を取り扱ったマンガなどでは、親(子)の借金を子(親)に取り立てにいくシーンが描かれることがあります。
しかし、実際にはそのようなことは、(正規の金融機関からの借金である限り)ほとんどありません。

  1. (1)本人以外への取り立ては原則禁止

    正規の金融機関は、本人以外への取り立て・連絡を「特別の事情のあるとき」を除き禁止されています。

    特別な事情とは、

    • 子が連帯保証人(保証人)となっている場合
    • 子が取り立てを受ける(借金を肩代わりする)ことに同意している場合
    • 親が債権者からの連絡を無視している場合


    といった事情です。

    連帯保証人などになっている場合には、返済に応じる法的義務があります。また、債権者に肩代わりすることを同意した場合にも、同意した以上は、きちんと応じる義務があるといえるでしょう。

    他方で、返済すべき法的義務もなく、自ら肩代わりに応じようというわけでもないときには、「肩代わりに応じられない」、「債権者には協力できない(親の居所を教えることはできない)」といった趣旨を債権者に伝えれば、それ以上の取り立て(連絡)を受けることはないはずです。

    協力を明確に拒んだ債務者の家族などに、さらに執拗に協力を求めることも禁止されているからです。

    万が一、協力を拒んでもなお、執拗に連絡(取り立て)してくる債権者がいるときには、金融庁(財務事務所)、都道府県、貸金業協会、銀行協会、弁護士などに相談してみるとよいでしょう。

  2. (2)自分から親の借金を返済することは可能?

    子が自ら望んで親の借金を肩代わり(代位弁済する)ことは可能です。ただし、債務者本人である親の承諾(書)が必要となります。

    この場合、法的には、返済後は債権者の地位(借金の返済を求める権利)を銀行・消費者金融といった金融機関から子が引き継ぐことになります。
    とはいえ、お金に困っている親から、金融機関のように取り立てることは実際には難しい(心情的にも難しい)場合が多いと思います。

    この場合には、

    • 相続に反映させる(特別寄与分として考慮する)
    • 代物弁済で清算する(不動産などの親の資産の所有権で返済してもらう)


    といった対応をとることもひとつの方法です。

    ただし、これらの方法は、他の相続人(兄弟)がいるときには、後の相続トラブルの原因にもなりかねませんので、「親の借金を代わりに返済した」ということを、他の相続人にもきちんと理解してもらう(正確に伝える)ことが大切になるでしょう。

    また、相続に反映させるようなときには、弁護士や公証人などに相談をして「遺言」としてきちんと残しておくことも大切です。

4、親の借金を調査することはできる?

借金の問題は、家族であってもなかなか打ち明けづらいものです。そのため、家族が知ったときには、「多額の借金に膨らんでしまっていて解決に苦労する」ということが、実際には少なくありません。

また、亡くなった親の借金の場合には、「熟慮期間を過ぎて(遺産分割協議が終わってから)から借金の存在に気がついた」ことで、「相続の放棄ができない」ということもあります。
借金していることを知らなければ、債務者が死亡したことを債権者に伝えることもできないからです。
なんとか、早めに家族の借金を調査することはできないものでしょうか?

  1. (1)すでに亡くなった親の借金を調査する方法

    死亡した人の借金の調査は、信用情報を照会することで行うことができます。
    信用情報を取り扱っている機関には、

    • JICC(消費者金融団体が設立)
    • CIC(クレジットカード会社団体が設立)
    • KSC(銀行団体が設立)


    の3つがあります。

    3つすべての信用情報機関に照会すれば、国内の借金は完璧に網羅することができますが、JICCの加盟金融機関のほとんどは、CICにも加盟しているので、CICとKSCの2つに照会をすれば十分な場合が多いといえます。

    照会の申し込みは、JICC・CICは、インターネット経由でも行うことができますが、KSCは、郵送のみの受付となっています。
    それぞれ、本人確認書類(相続人であることを証明できる書類)が必要です。

  2. (2)親が健在なときには調査できない

    信用情報による照会は、親が健在のときでも、「親(本人)の同意」があれば、行うことは可能です。
    とはいえ、実際には、「借金を隠している親」が信用情報の照会に簡単に同意することはあまりないかもしれません。

    ただ、同意しないということは借金をしている可能性が高いということもできるかと思いますので、その場合には、万が一の場合に備えて、常に対応できるようにしておくほかありません。

    大事なことは、「借金のことを打ち明けられるように」家族間の信頼関係をきちんと築く、普段からのコミュニケーションを大切にするということでしょう。

5、家族の借金が心配なときは、早めに弁護士にご相談ください

親に借金がありそう、親の借金が発覚したというときに、子が弁護士に「親の借金の調査」や「親の債務整理」を依頼することは、残念ながらできません。弁護士であっても、不必要に他人のプライバシーを調査することはできません。

また、債務整理は、債務者本人に重大な不利益が生じる可能性のあることなので、「本人からの依頼」しか受けることができません。

しかし、親の借金について、弁護士に相談することは「ムダ」というわけではありません。
万が一の場合の備え方や、親と借金について上手に話し合いをする方法、親が弁護士に相談しやすくするための方法などについて、アドバイスできることもあるからです。

6、まとめ

借金問題は「早期に対応する」ことが何よりも大切です。
1日でも早く手を打てれば、その分だけ、借金の金額も少なく、解決の選択肢が広がり、解決にかかるコストも小さくなる可能性が高いからです。

特に、親の借金をそのまま放置すれば、相続の場面で、大きな不利益をあなた自身が受けてしまう可能性もあります。

もしかして……と感じたときには、できるだけ早く必要な対処をとることが大切でしょう。 お悩みの際は、ぜひベリーベスト法律事務所へご相談ください。ご相談内容にあわせて、適切な解決方法のアドバイスをいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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