債務整理 弁護士コラム
夜逃げ(よにげ)とは「誰にも知らせずに居所を変えてしまう」ことです。
人目に付かない夜に行われることが多いという理由で「夜逃げ」といわれますが、最近では昼間に夜逃げするケースも増えています。
夜逃げするまでは普通に振る舞うため、周りの人は「なんであの人が?」と思うことも多いようです。しかし実際には、夜逃げする方は借金やDVなどといった、つらい事情を抱えている場合がほとんどでしょう。
夜逃げは簡単にできることではありません。その場は逃げられたとしても、その後の生活で別の苦労をすることもあるでしょう。夜逃げは、いま抱えている問題の根本的な解決にならないことが少なくないのです。
本コラムでは、夜逃げを行う原因やその後の人生に待ち受けるリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
なぜ夜逃げをする人が後を絶たないのか、まずは夜逃げをする人の原因について、ご紹介していきます。
「多額の借金の返済から逃れたい」という理由が、もっとも典型的な夜逃げの理由です。有名人がテレビ番組などで、過去の夜逃げ経験を告白することもあります。また、過去には「夜逃げ屋本舗」という映画が公開されたこともありました。
しかし、後に解説するように、夜逃げは解決につながらないことが少なくありません。
それよりも、「債務整理」をして借金を根本的に解決することが賢明です。
ところで、借金が原因で夜逃げを考えるケースでは、「ヤミ金から借金がある」場合も少なくありません。ヤミ金には「まともな方法が通用しない」と思い込んで夜逃げで解決しようと考えてしまうからです。しかし、ヤミ金からの借金は、1円たりとも返済する必要がありません。
万が一、ヤミ金と関わってしまったときには、「夜逃げ」ではなく、すぐにヤミ金問題の経験が豊富な弁護士に相談しましょう。
借金以外の理由としては、次のような「自分に迫る身の危険」から逃れるために夜逃げという手段が選択される場合もあるようです。
① ストーカー被害に遭っているとき
本来は警察に連絡・相談すべきケースです。しかし、警察に連絡をすることで、その後の報復を恐れて、夜逃げを選択してしまうこともあるようです。
しかし、夜逃げしたことで、ストーカーが逆上的な対応に出てしまう可能性もあります。ストーカー被害にあっているときには、弁護士や内閣府男女共同参画局「女性センター」、警視庁などに相談し、適切なアドバイスをうけて対処すべきでしょう。
② 親しい人から逃げたいとき
DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)もまた、夜逃げをする原因としてよく挙げられます。また、配偶者や同棲相手との性生活の不一致、性格の不一致が原因で、離れて暮らしたいというときにも夜逃げが選択される場合もあるようです。
これもストーカーと同様に、警察へ連絡した後の報復を恐れ、夜逃げに走ってしまう人が多いのが現実です。しかしDVに関しても、夜逃げをする前に、内閣府男女共同参画局の「DV相談ナビ」や「民間シェルター」などの窓口へ相談することを視野に入れてください。
③ 犯罪者などにつきまとわれているとき
何かのきっかけで、自分自身が犯罪や犯罪者と関わりを持ってしまうこともあります。知らないうちに詐欺の片棒を担がされていた、ヤミ金業者への返済の代わりに犯罪行為に加担させられたといったようなケースです。
このような場合には、「このままではいけない」と思いながらも、相手への恐怖から関係を断ち切れない場合も多いでしょう。そのため、「夜逃げ」が選択される場合も多いようです。
しかし、これらのケースでも、弁護士や警察に相談することによって、適切に対応してもらえます。犯罪に関わってしまったという場合でも故意がないのであれば、罪に問われないケースも少なくありません。
いずれのケースでも夜逃げは根本的な解決にはなりません。
冷静な判断のもと、本当に夜逃げをするべきなのかを考え、できるのであれば各種窓口などに相談を依頼して、根本的な解決を図るようにしましょう。
夜逃げをする原因をご紹介してきましたが、上記にも記載したように、夜逃げをしても根本的な解決にはつながりません。
ここからお伝えするリスクを理解した上で、本当に夜逃げをするべきか、ぜひ考えるようにしてください。
夜逃げをすることは、実はさまざまなリスクを併せ持ちます。
① 夜逃げで借金は深刻化する
借金苦を原因とした夜逃げは、消滅時効によって借金を帳消しにすることを目的としています。消費者金融、銀行、カード会社などへの支払いは、「最後の返済から5年間権利行使されない」と消滅時効が完成します(商法522条)。「5年なら何とか逃げ切れる」と考えてしまう人も多いようです。
しかし、実際に夜逃げで借金を帳消しにするのは簡単なことではありません。「行方をくらませただけ」では消滅時効は完成しないからです。消滅時効の完成の要件は、「借金を返さないこと」ではなく「債権者が権利行使しないこと」です。消費者金融や銀行、カード会社が「5年間の間何もせずに放置しておく」ことは、実際にはほとんどありません。
債務者の所在がわからなくても、「公示送達」という方法で訴訟を起こすことは可能です。債権者が法的措置を講じれば、消滅時効の完成はそこからさらに10年が経過するのを待つ必要があります。つまり、夜逃げで借金を帳消しにしようと思えば、「15年逃げ切る覚悟」が必要なのです。夜逃げしている間も、遅延損害金で借金はどんどん膨らんでいきます。
さらに、消滅時効で借金を帳消しにするためには、消滅時効の完成後に債権者に対して「時効援用」をしなければなりません。実は、夜逃げをすると「消滅時効の完成時期」を正確に把握することも難しくなります。
② 住民票のない生活のデメリット
夜逃げの多くは、転出入届を役所に提出せずに行われます。住民票の異動を追跡することで、夜逃げ先を特定されてしまう可能性があるからです。債権者には、債務者の住民票の開示を自治体に請求する権利が認められています。
しかし、夜逃げのために転出入届をしないまま生活を続ければ、「住民票が職権削除」されてしまうことがあります。住民票のない生活は、次の点で大きなデメリットがあります。
・国民健康保険が使えない
・選挙権・被選挙権を行使できない
・国民年金を受け取れない
・児童手当が受給できない
・運転免許が更新できない
・就職の際に不利になることが多い
こういった状況になってしまえば、「夜逃げをしたために生活がさらに苦しくなった」ということもありえます。
夜逃げをすると、家族や知人といった身近な人に大きな影響を与えてしまいます。
家族には、子どもに十分な教育を受けさせることができなくなったり、十分な医療措置を受けさせることができないという事態が生じる可能性があります。
また、連帯保証人のいる借金を抱えた人が夜逃げすると、連帯保証人に多大な迷惑をかけてしまいます。
ここまで説明してきたように、「夜逃げ」はメリットよりもデメリット・リスクの方が明らかに大きい危険な行為です。そもそも「誰にも知らせずに内緒で引っ越しをした」とはいえ、「逃げ切れる保証」はどこにもありません。
「夜逃げ屋本舗」、「ナニワ金融道」などのような借金と夜逃げを取り扱った映画・マンガでも、夜逃げはすべてがハッピーエンドに終わっているわけではありません。消費者金融・銀行・カード会社・サービサー(債権回収業者)といった債権者は、行方をくらませた債務者を追跡するノウハウを独自に構築しています。
また、住民票不在(住所不定)の生活をいつまでも続けるわけにもいきません。子どもの進学や自らの結婚・就職などによって住民票の異動を余儀なくされる場合もあります。「そろそろ大丈夫だろう」と住民票を復活させたことで、債権者に居所を突き止められてしまうケースは実際にも珍しくありません。さらに最近では、SNSなどを通じて、債務者を追跡することも可能でしょう。
たしかに、DV被害からの緊急避難としては、夜逃げは有効な対処法となる場合もあります。しかし、夜逃げはあくまでも「一時退避」の手段にすぎないことを理解しておくことが大切といえます。
夜逃げを考える状況は、精神的にも追い詰められている場合が少なくありません。精神的につらい状況で問題をひとりで抱え込むことはとても危険です。冷静な判断ができない場合が多いからです。
借金・DV・犯罪者との関わりといった、夜逃げを考えたくなる事情は、弁護士に相談することがベストの対応といえます。
夜逃げには大きなリスクがあり、逆に人生を狂わせてしまう可能性すらあります。借金苦からの夜逃げを考えているのであれば、夜逃げよりも債務整理をすることが賢明です。
債務整理をすれば、借金の負担を減らすことができます。「絶対に返せない」と思い込んでいる借金であっても、分割で返せるようになることもあるのです。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産という、主に3つの方法があります。
たとえば、任意整理をすれば、将来払う利息を削減してもらえます。個人再生ができれば、4000万円の借金があるときでも、最大で90%を免除してもらえる可能性があるでしょう。
また、自己破産後に免責を得られれば、借金の返済義務は完全に免除されます。自己破産をしても、99万円までの財産は手元に残せるほか、生活に必要な家財道具は失いません。戸籍や住民票を汚すこともなく、年金(受給権)を失うこともありません。債務整理のデメリットは、一般の方がイメージしているよりもはるかに小さい場合の方が多いのです。
どの債務整理がご自身に最適な方法なのかは、弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、借金に関するご相談は何度でも無料で承っております。また、その後にかかる費用も明確に記載しておりますので、夜逃げを考える前にお問い合わせください。
ストーカーやDVで追い詰められているときにも、弁護士に相談することはとても有効です。弁護士が介入したことで、被害を抑制できる場合があるだけでなく、「面接禁止の仮処分」などの法的措置によって加害者に警告することも可能です。
また、警察などの関係機関への働きかけも弁護士を通じて行うことでよりスムーズになることが多いでしょう。ご自身ひとりでは相談にいけないというときに付き添うことも可能です。
夜逃げをすることには生活面や周囲との関係性でリスクが生じるため、夜逃げをせずに、根本的な解決を目指していきましょう。
現在では、インターネットの普及により、悩みを誰かに相談したり、あるいは相談窓口で実際に相談することも手軽にできます。
「夜逃げしたい」と考えるほどのつらい状況は、ひとりで抱え込まないことが何よりも大切です。誰かに相談することが、心の落ち着きを取り戻すきっかけとなることも少なくありません。
借金やDVなどの問題から「夜逃げしてしまいたい」とお悩みの際は、まずは弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、あなたの状況に合わせて最適な解決方法をご提案し、お悩みを解決するべく尽力いたします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
債務整理、任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求など、借金問題についてのお悩み解決を弁護士がサポートいたします。債務整理のご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽に お問い合わせください。
借金の支払遅延が生じたり、債務整理が行われたりすると、個人信用情報機関に「異動情報」が登録されます。
異動情報が登録されるとさまざまなデメリットが生じるため、債務整理を行う前に注意点を理解しておきましょう。
本記事では、債務整理などによって登録される異動情報について、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
「今回だけ…」とおそるおそる少額で始めたはずの課金も、いつも間にか抵抗がない状態に陥っている方も多いのではないでしょうか。
スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
本コラムでは、ソシャゲなどのスマホゲームで課金をやめられない心理、課金に制限をかける方法、課金をやめる方法、課金が原因で借金に悩んでいるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介します。
廃課金とよばれるような過度な課金は、日常生活にも支障をきたす恐れがあります。できるだけ早めに課金をコントロールしたり、借金問題を解決したりして、通常の生活に戻していきましょう。