債務整理 弁護士コラム
貸金業者からの借金には総量規制が適用されるため、年収の3分の1までしか借入れができません。お金を借りたい人にとっては厳しく感じられるかもしれませんが、実は消費者を守るために、法律でこのような規制が設けられているのです。
総量規制が適用されない借金も中にはありますが、返済能力を超えるような借入れは控えるべきです。本コラムでは、総量規制の内容を詳しく解説するとともに、貸金業者から年収の3分の1まで借りてしまい、もう借入れができなくなったときの対処法もご紹介します。
総量規制は、消費者を守るために、法律で貸金業者に課せられた規制です。以下で、具体的にご説明します。
総量規制とは、個人の年収の3分の1を超える貸付けをしてはならないという、貸金業者に対する規制のことです(貸金業法第13条の2第2項)。その前提として、貸金業者が貸付けをする際には、顧客の収入や借入れの状況など返済能力に関する事項を調査することも義務付けられています。総量規制に違反した貸金業者に対する罰則はありませんが、金融庁から業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を受けることがあります。
この規制を消費者の立場からみると、貸金業者に対して年収の3分の1を超える借金を申し込んでも審査に通らず、拒否されます。その結果、たとえば年収300万円の人なら、貸金業者からは100万円までしか借入れができないのです。
総量規制が設けられている理由は、消費者が返済能力を超えるような借金を背負うことを防止し、多重債務者を減らす必要性があるからです。
かつて、貸付け額の上限は各貸金業者による独自の審査に委ねられていました。その結果、消費者の返済能力を上回る過剰な貸付けが行われ、数多くの多重債務者が発生したのです。2000年代には、自己破産をする人やヤミ金に手を出す人が急増し、社会問題となりました。
この問題を重くみた国は、過剰な貸付けを防止するために貸金業法を改正し、段階的に施行してきました。2010年に完全施行された改正法により、総量規制が導入されたのです。
総量規制の対象となるのは、「貸金業者からの個人名義の借入れ」です。具体的には、消費者金融からの借入れと、クレジットカードによるキャッシングが該当します。
クレジットカードについては、消費者金融だけでなく信販会社が発行するものも対象となります。ただし、銀行が発行するものは対象外です。
貸金業者からの借入れでなければ、年収の3分の1を超えて利用することが可能です。また、貸金業者からの借入れであっても、特定のケースについては貸金業法で「除外」や「例外」が認められています。
以下で、年収の3分の1を超えても借入れが可能なケースをご紹介します。ただし、借入れの際には独自の審査が行われるため、必ずしも希望する金額が借りられるわけではないことに注意が必要です。
以下の借入れには、そもそも総量規制が適用されません。
銀行からの借入れについては、証書貸付けもカードローンも、貸金業法ではなく銀行法に基づいて行われるため、総量規制の対象外です。信用金庫、信用組合、労働金庫、農協からの借入れについても、それぞれ貸金業法とは異なる法律に基づいて行われるため、総量規制は適用されません。クレジットカードによるショッピングも、割賦販売法が適用されることから、総量規制の対象外となります。
以下の貸付けのように、高額ではあっても毎月の返済額が妥当な金額に抑えられるもの、担保が提供されるもの、命に関わるような高度の必要性があるものなどは、総量規制になじまないと考えられます。そのため、貸金業者からの借入れであっても、総量規制の対象から「除外」されています(貸金業法施行規則第10条の21第1項各号)。
以下の貸付けは個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがなく、総量規制の趣旨に反しないと考えられることから、「例外」的に年収の3分の1を超える借入れも認められています(貸金業法施行規則第10条の23第1項各号)。
総量規制については、他にもさまざまな疑問があることでしょう。以下で、まとめて解説します。
複数の貸金業者から借入れをする場合は、その合計額に総量規制が適用されます。たとえば、年収450万円の人なら、全社からの借入れの合計額が年収の3分の1に相当する150万円以内でなければなりません。既にA社から50万円、B社から40万円、C社から30万円を借りているとすれば、新たにD社から借入れができるのは30万円までです。
いくら借りられるかは貸金業者の審査によるため、年収の3分の1まで必ず借りられるわけではありません。審査の際には、収入の他にも勤務先、勤続年数、家族構成など、さまざまな要素が考慮されます。返済能力が十分でないと判断されると、年収の3分の1に満たない金額でも借入れを断られることがあります。
銀行からの借入れでも審査があるため、無制限に借りられるわけではありません。
総量規制の導入後、銀行カードローンの利用者や利用額の急増が社会問題化しました。そこで、近年では銀行カードローンにおいても、総量規制に準じた基準で自主規制を行う銀行が増えています。なお、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協からの借入れでは、貸金業者からの借入れよりも審査が厳しいのが実情です。
基本的に、借入れ先を問わず、生活費や借金返済のための借入れは、年収の3分の1までと考えておいた方がよいでしょう。
事業資金の借入れでも、個人事業者の場合は原則として年収の3分の1までです。ただし、「例外貸付け」として年収の3分の1を超えて借入れができる可能性もあります。例外貸付けを申し込むと、確定申告書の他にも事業計画書、収支計画書、資金計画書などの提出を求められ、審査が行われます。借入れ可能額は各貸金業者の判断次第ですが、あくまでも個人顧客の返済能力の範囲内に限られることに注意が必要です。
総量規制の抜け道として、クレジットカードの現金化や、目的別ローンを目的外で使用することを考える人がいます。しかし、これらの行為はカード会社や貸金業者の規約に違反するものであり、発覚すると残高の一括返済を請求される恐れがあります。決して行わないようにしましょう。
総量規制の上限を超えて借入れをする必要があるときは、除外貸付けや例外貸付け、あるいは生活福祉資金貸付け制度など公的な制度の利用を検討すべきです。
総量規制の影響でどこからも借入れができなくなったときには、債務整理が有効です。法律で認められた手続きによって借金を減免することで、生活の立て直しを図ることができます。
債務整理には、主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがあります。それぞれ、借金の減免効果やデメリットが異なるので、状況に適した手続きを選ぶことが重要です。最適な手続きを選ぶためには専門的な知識も要求されるので、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士に債務整理を依頼すれば、最初に受任通知が送付され、債権者に届くと督促や返済がいったん止まります。債務整理の具体的な手続きは、弁護士に一任できます。債務整理で弁護士に相談・依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
総量規制は、消費者が返済能力を超える借金を負わないようにするための、保護的な制度です。しかし、それでも銀行カードローンやクレジットカードのショッピング利用、あるいは減収などの事情により、返済に支障をきたす人は少なくありません。返済が厳しくなったときは、総量規制の抜け道を探すよりも、債務整理を視野に入れて生活の立て直しを図るべきです。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理の経験が豊富な弁護士が、状況に応じて最善のアドバイスをいたします。債務整理に関するご相談は何度でも無料でご利用いただけます。総量規制の問題に限らず、借金問題でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
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「自分は買い物依存症かもしれない」と感じている人は少なくはありません。買い物が大好きな人や、買い物に出かけるとつい買いすぎてしまう方は買い物依存症の不安を抱えていることでしょう。
ですが、ショッピング好きと買い物依存症は違います。買い物依存症の場合には中毒症状があるため、治療が必要な状態。対して買い物好きの人は買い物が趣味なだけで買い物に依存しているわけではありません。
買い物依存症の患者数は正式には発表されていませんが、昨今の後払いシステムやクレジットカード払いの増加によって患者数も増加していると推定されています。買い物依存気味の方は早めに自覚し、適正な対処をしていきましょう。
ソーシャルゲーム(ソシャゲ)などのスマホゲームで、多額の課金をしてしまう方は少なくありません。
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スマホゲームの課金は、一種の中毒症状をもたらします。「やめよう」と思っても、自分の意思では上手にコントロールできないものです。
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「必死に働いても生活が苦しい」「働きたいのに働けない」「借金返済でどうすればよいのか分からない」などの悩みを抱える人は少なくありません。
このような生活苦には、働けない・給料が低い・借金を抱えていることが大きな原因となっているケースも多くあります。
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