債務整理 弁護士コラム
借金をしている方のなかには、「期限の利益って何のこと?」「期限の利益喪失通知書が自宅に届いたけど、どうすればよい?」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。
わかりやすく言うと、期限の利益とは、「期日までにお金の返済をすればよい」という債務者と債権者(銀行や貸金業者など)の約束事を意味する言葉です。
いつまでに借金を返せばよいのか、返済日を事前に決めておくことにより、債務者は返済のめどを立てることができます。そして、「返済日に返す」ということは、「それまでは返さなくてよい」ということです。
本コラムでは、「期限の利益」の押さえておくべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所 債務整理専門チームの弁護士が解説します。
この記事で分かること
期限の利益とは、「約束した返済日までに借金を返済すればよい」という権利です。「返さなくてもよい」ということを、「利益」という言葉で表現しています。
たとえば、「100万円のお金を借りて10か月後に返す」という約束をした場合、10か月後の返済期限が到来するまでは、お金を返さなくてよいということです。
期限の利益があるからこそ、貸金業者から「やっぱりすぐに100万円を返してください」と言われることはありません。
期限の利益を喪失すると、本来の借金返済の期限がまだ来ていない状態であっても、債権者(お金を貸している側)のタイミングでいつでも返済を請求されてしまいます。分割の場合でも、まとめて一括返済を請求されるのです。
担保がある場合、ない場合に分けて、期限の利益喪失によってどのような影響が生じるのかを解説します。
住宅ローンのように担保を提供している借金の場合は、その担保が実行される危険があります。
たとえば、住宅ローンの場合であれば、債権者によってマイホームに設定された抵当権が実行されてしまうでしょう。
抵当権の実行は「競売」による売却ですから、住宅ローンを滞納して期限の利益を失えば、マイホームを強制的に売却されてしまうことになります。競売にかけられると、マイホームは競売で落札した買い受け人の所有となってしまい、立ち退きを余儀なくされることに注意が必要です。
また、借金に保証人・連帯保証人(人的担保)が設定されている場合には、あなたに代わって借金を支払うように、保証人・連帯保証人が請求を受けることになります。
多くのケースで、保証人には親族や親しい友人などになってもらっているでしょうから、人間関係が悪化してしまうデメリットを被る可能性も否定できません。
借金に担保が設定されていない場合には、貸主はあなたの財産から借金を回収するために、民事訴訟や支払督促といった手続きをとってくる可能性が高いといえます。
財産を差し押さえるためには、訴訟などの手続きを必ず経なければならないからです。
銀行からの借金を滞納したときには、期限の利益の喪失によって、銀行口座が凍結されてしまうことがあります(借金をした銀行口座に預金をしている場合)。
銀行カードローンの契約では、債務者が返済を滞納したときには、その銀行の口座に預けられている預金と相殺して借金を回収できる契約になっているからです。
銀行口座が凍結されると、預金が引き出せなくなるだけでなく、入金もできなくなる場合があります。給料の振込口座が凍結(出入金停止)されてしまえば、給料を受け取れなくなるだけでなく、振込不可となったことで、銀行トラブルになったことを勤め先に知られてしまう可能性もゼロではありません。
このように、期限の利益を喪失すると、生活していくうえで非常に大きなデメリットが生じることになるため、こうした事態は回避するようにしましょう。
期限の利益喪失とは、「期限の利益がなくなってしまう」ということです。
つまり、期限の利益を喪失すると、すぐにお金を一括返済しなければなりません。どのような場合に利益喪失となってしまうのかは、民法第137条に定められています。
引用:民法第137条
要するに、次の3つの場合において、期限の利益が喪失するということになります。
これらはすべて、債権者の債権回収が難しくなると考えられるケースです。
返済の期日まで待っていると、債権回収ができなくなるリスクが債権者に発生するため、このような3つの場合には、債務者は期限の利益を主張できなくなり、債権者は「すぐにお金を返して!」と言えるようになります。
債権者が法人である金銭消費貸借契約(お金の貸し借りの契約)では、たいてい期限の利益喪失についての規定があります。
債権者は、契約で民法が規定する以上の期限の利益喪失事由を追加しているはずです。たとえば、以下のような事由が挙げられます。
契約は、基本的には守らなければなりません。契約に記載された期限の利益喪失事由はよく確認しておいてください。
契約上、1回の返済の遅れでも期限の利益を喪失することになっているケースも多いと思いますが、実際、債権者が1回の遅れで期限の利益の喪失を主張するのはまれです。
債権者は、期限の利益を喪失させて一括請求するメリットと、そのまま催促し続け利息を受け続けるメリットをてんびんにかけるからです。また、いちいち期限の利益の喪失を主張して一括請求していては、金銭貸付サービスとして利便性に欠けます。
実務上は、何度も繰り返して遅延する場合や、債権者がその他の債務者の事情により債権回収が難しいと判断した場合は、この事由を使って一括請求することが多いでしょう。
軽微な契約違反であれば、すぐに期限の利益の喪失を主張されるということは考えづらいでしょう。実務上、債権者がこの条項で期限の利益の喪失を主張して一括請求するのは、債権回収の危機が相当程度迫る場合の契約違反に限られると考えます。
個人再生などの債務整理手続きに入った場合は、債権者は期限の利益の喪失を主張します。
自宅に期限の利益喪失通知が届いたときの対処法は3つです。
お金があることが条件ですが、期限の利益喪失通知に記載されている日付までに滞納した分を支払いましょう。
滞納した金額を支払えば、期限の利益喪失は回避することが可能です。
期限の利益を喪失すると、まだ期限未到来の債務まで全額返済しなければなりません。支払期限が来た分のみの返済で済むため、可能な限り、支払うようにしましょう。
期限内にお金を支払えない場合は、債権者に相談しましょう。お金を返せるめどがあれば、具体的にいつ返済するかを話すことで期日を延長してくれる場合もあります。
たとえば、「この日は勤務先の給料日なので、この金額であれば確実に払える」ということを見込んだうえで、真摯に交渉することが大切です。
債権者側としても、きちんと返済してくれる見込みがあるのであれば、交渉に応じてくる可能性があります。
ただし、状況によっては、返済条件の見直し(適用利率のアップや遅延損害金の負担など)、求められることも考えられますので注意が必要です。
どうしても借金を返済できないなら、債務整理をしましょう。
あなたの返済状況によって債務整理の方法は変わりますが、借金を減らせる可能性があります。
裁判所が公表する司法統計年報によると、令和6年に裁判所が新しく受理した自己破産の件数は7万6309件でした(法人・その他を除く)。債務整理を行っている人は少なくないことがわかります。
「債務整理をしてみよう」「債務整理の話を詳しく聞きたい」とお考えの方は、弁護士にご相談ください。
期限の利益とは、「約束の期限までにお金を返済すればよい」という権利です。
期限の利益があることで、貸金業者から借り入れをしても約束の期限にならない限り、金銭を返済しなくても問題ありません。また、借り入れした金額の一部だけ返済するような分割払いをすることも可能です。
しかし、約束の期限を破って借金を返済しなければ、期限の利益を喪失して、貸金業者から一括返済を求められてしまいます。もし借金の返済が難しいのなら、貸金業者へ相談するか、弁護士に依頼して債務整理することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理に関する相談は無料で何度でも受け付けております。借金を抱えており、債務整理を検討している方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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「車のローンが払えない……」そんな不安や焦りを感じていませんか?
車のローンを滞納すると、信用情報に傷がついたり、車を手放したりするリスクがあります。しかし、弁護士を介して正しい対処をすれば、ダメージを最小限に抑えられるかもしれません。
車のローンが払えないときに取るべき具体的な対処法や、弁護士に相談すべきタイミングなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
民法で決められている「法定利率」は、借金の返済が遅れた場合の遅延損害金の計算に用いられることがあります。現在の法定利率は年3%です。
ただし、銀行や消費者金融からの借り入れでは、あらかじめ契約で決めた「約定利率」に基づいて遅延損害金が計算されます。約定利率は法定利率よりも高い場合が多く、返済が遅れると高額の遅延損害金が発生するおそれがあります。借金の返済が困難になった場合は、弁護士に相談して債務整理の手続きを検討することが大切です。
本記事では法定利率の概要や、約定利率との違い、計算方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
借金を返済しないと裁判所から支払督促が届くことがあります。
支払督促とは、強制執行の前段階の手続きです。支払督促を無視・放置していると預貯金や給料の差し押さえられるリスクが高まるため、そのままにしてはいけません。
支払督促が届いたときは、2週間以内に返済または異議申し立てをすれば、差し押さえのリスクをいったんは回避できます。弁護士に相談するなどして速やかに行動することが大切です。ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。