過払い金請求権には消滅時効があり、一定の期間が経過すると請求することができなくなってしまいます。
あなたの過払い金請求権はまだ大丈夫でしょうか?
以下では、過払い金請求権の消滅時効についてご説明します。
そもそも過払い金請求とは、貸金業者に対して利息制限法を超える利息を支払っていた場合に、利息制限法を超える部分の支払いについて返還を要求することです。
平成22年の法改正までは、「利息制限法が定める上限利率を超えるため違法だが、出資法が定める利率には達していないため罰則はない利率」というものが存在しており(いわゆる「グレーゾーン金利」)、このグレーゾーン金利で取引していた間に発生した払い過ぎのお金を「過払い金」と言います。
利息制限法を超える利率で取引し、完済した場合には過払い金が発生しています。
完済していなくとも、利息制限法が定める利率を超える支払いは無効となり、その支払いは元本に充当されることとなります。取引期間が長いと、適切な利率で計算をし直す(引き直し計算)ことで、実際の借金額が少なくなることがわかり、利息どころか元本も払い過ぎている場合が発生する可能性があります。
返済中であっても過払い金が発生する取引期間の目安は、利息制限法が定める利息を超えて取引した期間がおおよそ5〜7年以上ある場合です。
10年以上利息制限法を超える利率で取引していたような場合には、過払い金が発生している可能性は高いでしょう。
消費者金融などの貸金業者との取引履歴をもとに、引き直し計算を行うことで、実際に過払い金が発生しているかどうかを調べます。
貸金業者には取引履歴を開示する義務があるので(最高裁平成17年7月19日判決)、ご自身で詳細な記憶やメモなどがなくても問題ございません。
過払い金の調査や請求は個人で行うことも、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して行うことも可能です。
弁護士などの専門家に依頼すると費用がかかりますが、ご自身での請求にはデメリットもありますので、できれば弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベストでは、過払い金返還請求・債務整理問題に関する無料相談をお受けしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
過払い金は、時効期間を過ぎてしまうと返還請求をすることができなくなってしまいます。
過払い金返還請求権は、法律用語でいうと、「不当利得返還請求権」といいます(民法703条、704条)。
そもそも時効とは、一定の事実状態が存続する場合に、それが真実の権利関係と一致するか否かを問わず、そのまま権利関係として認めようとする制度です。 時効には民法上、消滅時効と取得時効の2種類があります。過払い金返還請求権は消滅時効の問題となります。
消滅時効とは、権利を使わない状態が長く続いたという事実を尊重するべきであり、一方で一定期間権利を使わなかった怠け者を保護する必要はないという考え方に基づく制度です。
前述のとおり、過払い金返還請求権は不当利得返還請求権ですが、その消滅時効期間は10年です(最高裁昭和55年1月24日判決)。
ちなみに、もし3日後に時効が完成してしまうという差し迫った場合でも、いますぐ適切な対策をとることにより過払い金の消滅を免れることができます。
過払い金返還請求権の消滅時効は10年間ですが、この10年という期間は、いつから開始するのでしょうか。
この消滅時効開始時点については、かつては争いがありました。
そもそも、消滅時効が開始する時点のことを法律上の用語で「起算点」といいます。
起算点について以前は、以下の2つの説が対立していました。
もっとも、この争いは最高裁判例によって解決しております。
平成21年に、過払い金返還請求権の消滅時効は、取引の終了時点を起算点とする判断が相次いで出たのです(最高裁平成21年1月22日判決、同年3月3日判決、同年3月6日判決)。
よって、以前消費者金融と利息制限法を超える利率で取引しており、完済してしまった場合でも、取引終了時点から10年以内であれば、まだ過払い金請求権は時効消滅していません。
たとえば、平成20年に完済した場合、平成30年まで過払い金の返還請求が可能です。
これに対して、平成14年に取引が終了していた場合、平成24年以降の過払い金の返還請求は難しいかもしれません。
もっとも、場合によっては請求し得ることもあるので、詳しくは弁護士に相談してみましょう。
前述のように取引期間が一度の場合、過払い金返還請求権の時効の起算点は、算出がしやすいです。
しかし、一度完済した後にまた取引を開始したような場合、つまり、「取引の分断」があった場合の消滅時効の考え方は、どうなるのでしょうか。
取引の分断とは、たとえば以下のような場合のことをいいます。
この場合、平成16年〜平成30年までの取引(取引②)については、過払い金が発生していれば問題なく請求をすることが可能です。
これに加えて、平成4年〜平成14年までの取引(取引①)で過払い金が発生していた場合についても、時効消滅していないとして請求することができるでしょうか。
もし、取引①と②が合わせて一連の取引だとすると、まだ取引継続中であれば、取引①で発生した過払い金は時効消滅しておらず、通じて過払い金請求が可能でしょう。
これに対して、取引①と②が2つの別個の取引だとすると、取引①で発生した過払い金については時効消滅してしまっている可能性があります。
では、前後する2つの取引が一連の取引なのか、それとも2つの別個の取引なのかはどう決まるのでしょうか?
この点について裁判所は、
等を考慮して、事案ごとに判断しているようです。
基本契約が1個であったり、基本契約が2個であっても両契約の内容や条件が同一だったり、両取引の間隔が短ければ、一連の取引と判断される可能性は高まるでしょう。
過払い金の消滅時効の起算点は、過払い金発生後のそれぞれの返済時か(個別進行説)、取引終了時か(取引終了時説)で、いずれの説が採用されるかが争われました。
判例は、
「基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引(いわゆるリボルビング契約等)が一定の要件を満たす場合には、過払金返還請求権の消滅時効は、上記取引の終了したときから進行する」
としました。
つまり、個別進行説ではなく、取引終了時説を採用しました。
最高裁判所平成21年1月22日判決は、過払い金返還請求権の消滅時効の開始時点について、金銭消費貸借契約については、仮に過払い金が発生した場合には、過払い金はその後に発生する借金の弁済に充当されるという「過払金充当合意」があるとした上で、以下のとおり述べました。
このような過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という)を行使することは通常想定されていないものというべきである。したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。
つまり、「過払金充当合意」が法律の障害(過払い金返還請求権の行使を阻む法律上の理由)となるので、貸主も借主も、過払いが発生したらそれを後からの貸し付けに充当するという合意がある金銭消費貸借契約においては、取引が継続している限り、消滅時効は進行しないとしています。
その理由としては、以下の通り述べています。
借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない。
つまり、借主側は金銭消費貸借を一方的に終了させて過払い金返還請求をすることができるが、だからといって、「過払金充当合意」が法律の障害とならないわけではない、としています。
以上のように、過払い金返還請求権の消滅時効は、取引終了時から10年間です。
そうすると、「10年はまだまだ先だから安心だ」と思われる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。しかし注意が必要です。
というのは、2010年度の武富士の経営破綻でもわかるように、消費者金融は経済的に余裕があるわけではなく、(特にグループ企業にメガバンクがない消費者金融は)いつ経営が破綻してもおかしくないと言っていいでしょう。
経営破綻は事実上の倒産を意味するので、仮に経営破綻してしまった場合、過払い金の回収が著しく困難(あるいは不可能)となります。
そのため、まだ消滅時効の期間まで余裕があるとしても、過払い金の返還請求は1日でも早く行うことを強くおすすめします。