債務整理 弁護士コラム
愛着のある自宅に住みながら、まとまった資金を調達することができる「リースバック」が近年注目を集めています。今回はリースバックとはどのような制度なのかをご紹介していきたいと思います。
また併せて、リースバックを活用する場合の注意点もご説明いたします。
自宅に住みながら、まとまった資金を調達することができるリースバックとはどのような制度なのでしょうか。
リースバックとはマイホームを売却した後、購入した第三者からマイホームを借り受けるシステムのことです。主な特徴は以下になります。
●まとまった資金を調達することが可能
リースバックではいったんマイホームを売却することになるので、物件売却益を受け取ることができます。また物件売却代金の使い道に制限がないため、自由に資金を使うことが可能です。
●自宅に住み続けることができる
リースバックでは買い主とリース契約を結ぶことで買い主にリース料を支払って、慣れ親しんだマイホームに売却後もそのまま済み続け、いつも通りの生活を送ることができます。
●マイホームを買い戻すことができる
リースバックでは、後々マイホームを「買い戻し」することも可能です。
●住宅ローンの残債があっても利用可能
基本的に住宅ローンの残債が残っている物件を売却することはできませんが、リースバック会社が設定した一定条件に合えばリースバックを利用することができます。
リースバック同様、自宅に住みながらまとまった資金を調達するシステムに「リバースモーゲージ」があります。リースバックとはどのような違いがあるのでしょうか?
●マイホームの所有権の違い
リースバックの場合、物件所有権は買い主に移ります。しかし、リバースモーゲージの場合、所有権が変わることがありません。そのため、リバースモーゲージを活用した場合、固定資産税の支払いや、物件の修繕義務も本人が引き続き行う必要があります。
●自宅の賃料の違い
リースバックの場合買い主に賃料を支払う義務が生じますが、リバースモーゲージは家賃を支払う必要がありません。リバースモーゲージは自宅を担保に入れて、金融機関からお金を「借りる」システムだからです。借りたお金は、本人および連帯債務者を含む、借入人全員が亡くなった後に担保不動産の売却代金などにより一括して返済することになります。
生命保険文化センターが公表した「生活保障に関する調査」では、調査を行った4056人中85.7%と大部分の層が老後の生活に不安を感じていることがわかります。リースバックは、このような高まる老後の生活不安の解決策の一つとして注目が高まっている制度です。
ここではなぜリースバックが後の生活不安の解決策になるのかをご説明していきます。
総務省家計調査報告(2017年)によると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均消費支出(月額)は、23万5千円です。これに対して、平均可処分所得(同)は18万1000円しかないことがわかります。
23万5000円-18万1000円=5万4000円(月額)
5万4000円×12ヶ月=64万8000円(年額)
つまり、老後生活していくためには年間約65万円の預貯金を切り崩す必要が生じるということです。人生100年時代だと仮定して定年退職後から100歳までの不足額は累計2500万円程度必要になることがわかります。
この不足する2500万円を補うための資金調達方法としてリースバックが脚光を浴びているのです。
60~69歳世帯の持ち家率は93.3%と高く、所有する住宅資産を活用した老後資金の方法が注目されています。リースバックの場合、いったん自宅を売却するためマイホームに住みながらもまとまった資金を調達することができます。
比較してリバースモーゲージの場合は、自宅を担保に入れた「借金」ですので、借入額が自宅売却金額以上になってしまった場合、新たな借金を抱えることになりかねないリスクが生じます。
リースバックの場合、自宅での生活は変わりませんが、いったん自宅を売却することになるため、物件の売却資金を住宅ローンの繰り上げ返済に回すこともできます。
リースバックでは物件の所有権が買い主に移ります。そのため物件所有者が支払わなければいけない、固定資産税・都市計画税のほかマンションの場合は管理費や修繕積立金の支払義務がなくなります※。
※固定資産税・都市計画税は、賦課期日(毎年1月1日)現在の所有者に対し、その年の4月1日から始まる会計年度分の税として課税する制度です。そのため、売却年の固定資産税・都市計画税は売り主に支払義務が生じます。
ただし、一般的に売却した年の固定資産税は所有期間に応じて日割り計算されるのが通例です。
最高裁判所が毎年刊行している「司法統計」によると、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件(調停や審判)は年々増加傾向にあります。平成 27 年に全国の家庭裁判所が扱った遺産分割事件は 12,615 件でした。
リースバックを活用することで、自分の死後に相続問題で身内がもめないように対策することができます。具体的にはいったん自宅を売却し、資産を分割しやすい現金にします。分割しやすい現金に資産をかえることで、容易に遺産を分割することができるため、リースバックを活用することで相続対策を行うことができます。
またリースバックを活用すれば、自宅を現金化した後も、引き続き自宅に済み続けることができるので、自分の生活を変えることなく、効果的な相続対策を行うことができます。
自宅に住み続けながら、まとまった資金を調達することができる便利なリースバックですが、当然注意すべ点も存在します。ここではリースバックを活用するときの注意点をご紹介していきたいと思います。
リースバックで売却後に結ぶ賃貸契約は、一定の契約期間後にいったん契約が終了する「定期借家契約」が一般的です。このため、契約期間終了後に「再契約」できなかった場合、自宅から退去しなければいけなくなるリスクがあります。
自宅を売却した後は買い主と賃貸契約を結びます。このため、家賃を毎月支払う義務が生じます。リースバックでの家賃設定は一般的に売却金額の6%ほど(年額)です。具体的には物件の売却金額が2000万円の場合、月額10万円の家賃が発生することになります。
リースバックでの家賃設定は売却金額に比例するため、物件を高く売却すればするほど、毎月支払う家賃が高くなることになるので注意が必要です。場合によっては、周辺相場の家賃より高くなったり、元々の月々のローン返済額より高くなる可能性もあります。
リースバックでは物件の所有権が買い主に移転します。このため「買い戻し」の約束を買い主としたとしても、必ずしも買い戻しができるわけではないことに留意しましょう。
リースバックを利用して、トラブルに巻き込まれることもあります。ここではリースバックにまつわるトラブル事例をご紹介していきます。
リースバックの契約時に、「更新の際に家賃を上げることはしない」と口約束したにもかかわらず、実際の更新タイミングに家賃の値上げを要求されたという事例があります。
リースバックを利用する層は「自宅に住み続けたい」と強く考えている方が多いため、その自宅へのこだわりを悪用して家賃を値上げする業者もいるので注意が必要です。
リースバックした物件を「勝手に売却をしない」という約束があったにもかかわらず売却され、その後の賃貸契約更新を断られた事例があります。
こうしたトラブルを回避するためにも、信頼できる買い主をしっかりと選ぶことが重要です。
リースバックの契約時に聞いていた買い戻し金額よりも、さらに高い物件価格を要求されたといった事例も存在します。
リースバックでは自宅へのこだわりを悪用して、高値を要求されることもあるので注意が必要です。
リースバックは通常の不動産売買と異なり、複雑な形態の不動産取引です。このため、トラブルが発生した場合は、個人で対応したり、あやしい業者に相談するのではなく、法律の専門家がしっかりと対応してくれる事務所に相談しましょう。
今回はリースバックとはどのような制度なのか、またリースバックを活用する場合の注意点に関してご紹介してきました。自宅に住みながら、まとまった資金を調達することができるリースバックは高齢化社会の進展によりさらに注目される制度であることがお分かりいただけたと思います。
しかし、リースバックは複雑な形態の不動産取引であるため、注意点も多く内在しています。
便利な老後資金の調達方法として、しっかりとリースバックを理解したうえで、制度を活用するように心がけましょう。
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住民税とは、都道府県や市区町村といった自治体がさまざまな行政サービスを住民に提供するための費用に充てられる税金のことです。正式名称は「市町村民税」や「都道府県民税」など地域によって異なりますが、この2つを総称して住民税と呼びます。
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債務整理を検討している方の中には、借金を滞納してしまい、連日のように債権者からの取り立てを受け、落ち着いて生活できないという方が少なくありません。
そんなときでも、受任通知の送付後、債権者に書面が届いた時点で一時的に取り立てや返済をストップすることが可能です。ただし、受任通知の送付にはいくつかのデメリットもあるため、あらかじめ注意しておくべきことがあります。
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しかし、ブラックリストによるデメリットは生活が困難になるほど深刻なものではありません。それに、事故情報は一定期間の経過後に削除されます。いたずらにブラックリストへの掲載を恐れず、正しい知識を持って債務整理するかどうかを検討することが重要です。
今回は、債務整理でブラックリストに載るとどうなるのか、その状態はいつまで続くのかについて解説します。